― *R-18*


触れると赤く染まる肌が愛しくて、
声を抑える為に口を覆っている手の甲に唇を寄せる。
生命がある間は身体だけでなく、全てが繋がっていられますように。
祈るのはそれだけ。
濡れた吐息の後で返してくれたくちづけは、いつもより深くて甘く。
追い詰めるより共に堕ちて、一緒に散れなくても 見届けて欲しい。
願うのもそれだけ。
終わってもなかなか熱を失わない余韻の中で
譫言のように呼び続けられる俺の名を、唇と囁きで黙らせて。
離れる瞬間の切ない吐息で、また、身体が熱くなる。
 
「ちょっ?!待っ。。。!」
 
動けないかと心配するくらい脱力していたのに瞬時に身を翻し、
鋭敏になった局部に柔らかく舌を絡めてきた。
口に含まれると温かく湿った粘膜と小さく吸われ玩ばれる感覚とで、
すぐに達しそうになる。
 
「イ。。。く」
 
舌先で転がされれば抗う余裕も無く、
口の中で放ったしまったものを嚥下するノドが鳴る音を、陶然と聴く。
 
「良かった?」
「良過ぎて一瞬天国が見えた」
 
清寿が声を立てて笑う。
 
「僕達は天国へなんて絶対に行けなさそうなのにね」
 
傷痕だらけの身体を抱き締めて、傷口が開いたままの心を持て余し。
俺も清寿もある時点から成長していない。
だから一緒に居られるのだろう。
 
「お前にも天国を見せてやる」

壁に手を突かせて後ろを向かせ、
こちらの表情(かお)が見られないようにして。

「え?や、さっき見たからもうい。。あっ!」
 
未来へ繋がらない行為は無意味でも、
互いの孤独を埋めるには必要で。
 
「力抜いて」
「笑太君が入って。。。きて。。。る」
「まだ濡れてるから、ツラくないだろ」
 
堪えきれず清寿より先に熱い吐息を漏らし、
それを誤魔化すように唇を重ねてからすぐ離れ、
縋るように追い掛けては舌を甘く噛んで吸う。
 
「全部入った」
「ぅ、んっ」
「分かる?」
「ん。。。っ」

夢中でくちづけ合っている間にも指先で乳首を弾くと
締め付けがキツくなる。
 
「あ。。。あぁっあ。。。っ」
「清寿、声」
「だめっ、抑えられない」

指先で探り当てたシャワーのつまみを全開にして
肌と肌がぶつかって音が出る程激しい抽送を繰り返すと、
清寿は何度も絶頂を迎え、最後には声も嗄れて吐息だけになる。
 
「ひとりで先に逝くなよ」
 
甘い囁きに本音を紛れ込ませる。
とろけた顔で何度も頷いている清寿に伝わっていると信じたい。
多分、あと少ししか一緒に居られないのだから。。。
 
「笑太君も。ね、約束」
 
目の前に差し出された小指に、自分の小指を絡める。
 
「もし俺に何かあっても、絶対に後を追おうとなんかするな」
 
微笑む視線が俺の顔から逸れて、きゅっと結ばれた唇からは
最悪の場合を覚悟していることが読み取れた。
 
「そんなの分からない。。。約束なんか、出来ない」
 
中で角度を変えると大きく喘いだノドを唇で甘く噛んで、
顎を舐め、追い掛けてきた唇を掬い上げる。
挿し入れたら絡めてきた舌に軽く歯を立てると
鉄臭い味が口の中に広がった。
 
「死ぬのはひとりで充分だ」
 
その先は、何も云わせないように追い上げて。
大きく反らされた背中や壁に爪を立てしがみつく手のひらや腕に
流れ落ちる水滴の音だけが耳の中で反響する。
処刑で高揚した感情を抑えられずに他人(ひと)の目を盗むようにして
今まで幾度もこの特刑本部内のシャワー室で愛し合った。
自宅ですら監視されている俺達の、唯一の反抗。
そして、見失いそうになる自分を取り戻す為の犯行。
清寿は良きパートナーで、愛すべき共犯者だった。

「。。。分かってるよ。。。」

雫の垂れる髪の隙間から覗く紅い唇が小さく呟く。

「これが最後だってことくらい、僕にだって。。。」

お互い泣き顔は見せたくないし、見られたくない。
話すと泣いているのがバレるので、声も掛けてやれない。

「僕のこと嫌いになったって。。。」

そんな優しい嘘がつけるくらいなら、
こんな風に未練がましく抱いたりはしない。

「本当はずっと嫌いだった、って、ウソでもいいから。。。云って。。。」

後ろから首筋に、そっ、と、くちづけて。

「好きだよ、今でも。そしてこれからも、ずっと」

清寿の唇を手のひらで塞いだのは、
号泣する声を俺以外の誰にも聞かせない為。
顔をこちらへ向かせようとしても拒むので、
シャワーの湯と涙でびしょ濡れの頬にやっとの思いでキスをする。

「お前はi生きて、特刑の呪縛から解放されて、自由になってくれ」

息を詰めるように清寿が達し、それを追うように俺も達して。
肩で呼吸(いき)をする合間に漏れる嗚咽を、背中を抱き締めたまま聴く。
繋がりを解いて改めてシャワーで身体を流してやって、
タオルで拭いてやるまで清寿は一度も顔を上げなかった。

「笑太君はもう決めちゃったんだね」
「ああ。抗うだけ状況が悪くなるのなら、従うしかない」
「。。。それでいいの?」

首に回されてきた腕に抱き取られて、
俺もその腰を抱く。

「選択肢がそれしかないからな」

諦めたような、呆れたような、言葉を飲み込んだような軽い溜め息。
詰られても、罵られても、逃げるのかと非難されても、
答えが一つしかないのなら仕方ないだろう?と云うつもりだった。
だが、

「ありがとう」

聞き間違いかと思って顔を覗き込むと、清寿は微笑んでいた。

「僕をひとりの夜の闇の中から連れ出してくれて、ありがと。。。」

泣き腫らして赤く染まった瞼が、愛しくて。
俺の顔を覚え込もうとするように触れてきた手のひらに、
口や鼻、瞼、眉をなぞる指先に、身を任せる。

「みんなが笑太君のことを疑っても僕は信じているから、
自分の信じる正義を全うして」

唇と唇を触れ合わせただけのくちづけは精一杯の虚勢だろうから、
それ以上は追わず、ただ、強く抱き締める。

「清寿、お前は笑ってろ」
「笑うな!って云ったクセに」
「あんな昔のことまだ根に持ってんのか?」
「笑太君に云われたことは全部覚えてるもん」
「そんなの忘れていいよ」
「忘れない。。。忘れられない、全部、ずっと。。。でもね、」


もし笑太君に何があっても泣かないって、決めたから。


清寿の最後の嘘は吐息のように、俺の耳元で溶けた。


―The end―






P.S.
本来は御子式推しサイトで
あったことなど思い出しまして、
笑太と清寿の最後の情事などを
コミック11巻で笑太が戻ってきた
あの辺りの裏エピソード的な…
本編の展開的には
「そんな時間無いよね?」ですが
場所が場所だけにこっそりと
ってことでお願いします(汗

ちゃんとお別れさせてあげたかった、
ただそれだけで書きました。
この2人が居なければこのサイトも
存在しなかったので、
感謝の意を込めて甘く、
そして終焉の予感で切なく。
12/12/15(Sat)


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