As a Pledge of Affection ―


「どうした、今夜は?」

好奇心は大概の場合悪意に満ちていて。
私生活ですら常に他人の視線に晒されている僕達は、逆にそのことに鈍くなってゆく。

「欲しがり過ぎだろ。何回目だよ」

からかいと優しさとで曖昧に笑う唇に押し付けるように口づけを返して、自分から腰を
揺らし浅ましいくらい君を求め続ける。

いつもなら,
挑発的な言葉を聞き流して、煽るような笑みにも気付かないフリをして、声を、押し殺して。
天井近くで息を潜めるように僕達を監視し続けているカメラの小さな小さな赤い光に
向かって無理矢理求められているみたいに偽ってみせたりもする。。

けれど、今夜は。


「もう疲れちゃったの?なら僕が上になる」
「待て、清寿やめ。。っ!」

君の手が僕の背中から腰へ撫で下ろされるまでの間に繋がったまま転がるように体位
を変えて、すっ、と、背筋を伸ばした途端、

「んっ!」
「う。。っん!!」

低い唸り声をあげたのはほぼ同時で。
君の熱いものが僕の中に溢れ、僕のは君の腹の上で弾けた。

「あは。。イッちゃった」
「だから待てって!」

見つめ合い微笑み合うと、左の手のひらが頬に添えられた。

「ゆっくり動いてみろ」

濡れそぼって尚硬さを残す僕の茎を掴んだ君の右手が根元から先端まで緩やかに
愛撫するリズムに合わせて、云われるがままに腰を浮かして、落とす。

「あ。。はぁっ。。」
「あんまり激しく動くな。目の部屋から丸見えになるから」
「ふぅん。笑太君でもそんなこと気にするんだ?」
「一応な、一応」

苦笑した口元のホクロに口を寄せると後ろから頭を持ち上げられ唇が重なるより先に
舌を絡め取られて深く、深く。。もっと深く。
溶け合ってひとつになっていると錯覚するくらいに。

「だ、め。。っ」

中が、君の昂りを捉えて、震えて。

「先になんかイカせねぇ」

先端を指の腹で押さえつけられ、せき止められた切なさに悶える。

「やだっ」
「や、じゃないだろ?」

笑うな!って今でも時々怒るクセに、そんな風に。。弄ぶみたいに笑うの、ズルい。

「動いて」

耳朶を噛むようにして甘い命令を吹き込まれると僕は逆らえない。

「む、無理。。も。。死んじゃう」

足に力が入らない。膝がガクガク震えて、笑太君の上に跨がっているこの姿勢を
保っているのがやっと、なのに。

「バカ清寿。俺を殺すまでお前に死んでもらっちゃ困るんだよ」

何それ。。どういう意味?

ポカンと見返した僕の言葉を封じるように下から強く何度も突き上げられて、顎を
上げて喘ぐ。

「好き、って云え」

好き、笑太君が好き。
大好き。大好き。

「声出てない。ちゃんと云って」
「そんなのいつも言ってる。。。」
「いつもはいつも、今日は今日。俺のことが好きだって、聞かせてくれよ」

そんな悲しそうな目をして、乞うような上擦った声で云われたら。
胸の前で、両腕で君の頭を抱き締めて、僕はのどの奥から声を絞り出した。

「好き、大好き!笑太君、愛してるっ」

言い終えた瞬間また、同時に果てて。
胸に倒れこんだ後の事は覚えていない。ただ、朝の光で目覚めたら愛し合ったという
痕跡だけを残して君は、僕の横には居なかった。



「今俺を留められるのはお前しか居ないけれど、もうここには戻ってこれないかもしれない。
ごめん、清寿」



後日、柏原班長に無理を云って見せてもらった監視カメラの映像で、笑太君が僕の
元から去る間際、長期休暇に入る前に最後に残した言葉を知った。

「これ、保存してあるの?」

振り返って訊くと諜報課第一班の面々は焦った様子で僕の顔から視線を逸らしたが、
それまでずっと黙ってその場の様子を少し離れた所から見守っていた五十嵐課長が
代わりに口を開いた。

「ああ、念の為に。記録として残してある」

君との大切な時間も監視カメラの映像として残されれば、誰かの好奇心に晒され
続けるただの記録となる。
所詮僕達のプライベートなんてこの程度の扱い。

「予感はあったんだ。。元々自分の事をほとんど話してくれなかったけれど、長い間2人
で居れば段々解って。。きて。。」

頭も視界も妙にクリアで。
泣きそう、と思ったけれど、涙は一滴も出てこなかった。
ただ心臓の鼓動だけが、どくん、どくん、どくん、と、耳の奥で響いていて。
息と一緒に、笑太君が居なくなってからずっと思っていた言葉も吐き出した。

「これが最後の夜だって、なんか、知ってた」

静寂が、肌に痛い。
誰もが云い出しかねている気配を察して、自分から尋ねる。

「笑太君の所在はまだ掴めない?」

定時の所在確認に応答が無くなって数時間が経過している。

「。。どこ行っちゃったんだろうね。。でも笑太君なら絶対に大丈夫。帰ってくる」

あの晩眠りに落ちるまで。。もしかしたら僕が眠ってしまってからも髪を撫でてくれて
いた、大きな手の感触は覚えているよ。
そんなに穏やかな表情(かお)をしていたんだね。。
モニターの静止画像から目を逸らして、背を向けた。

「さて。今日の任務を聞きに行こう。ね、羽沙希君」
「式部。。」

羽沙希君はぽかんと僕を見つめ返しているばかりで返事は無く。
五十嵐課長が小さく僕の名前を呟いた。

「笑太君が居ない間第一を任されているんだもん。頑張らなきゃ」


笑太君は僕に覚悟をくれて去り、僕は笑太君の思い出を抱き締めながら生きてゆく。


深く息を吐いて、五十嵐課長が肩に腕を掛けてきた。

「もう泣けないのか?」

頷いて、微笑む。
ここ数日仕事から帰ると泣いてばかりいて殆ど眠れていないのも監視(み)られていた
だろうから、否定する気もない。

「ここに戻ってきてくれなくても、生きていてくれればいいんです。僕達はこの仕事に就く
と決めた時から長く生きることなんて考えていませんから」

行動は監視カメラで見ることが出来ても、心は見れない。
それが僕達の最後の砦。

体で繋がっていなくても心で繋がっていれば、僕もきっと、大丈夫。


―The end―






P.S.
連載本編が佳境を迎えつつあり
そろそろ終焉が見えてきた気配もある
DOLLSですが。。
珠緒との別離があって引っ越しもあって?
笑太が長期休暇に入る直前の夜の事と、
その数日後のエピソードを捏造(笑)

本編では絵柄が変わっただけではなく
設定全般が崩壊してきているようで
最近はついてゆけなくなっています。
そんなこんなでスランプというより
萌え不足で書けずにいました。

でも。
原作は原作、二次は二次←

割り切って書いてみた第一弾がこれ、
久しぶりなのにこってりR18(笑)
まだ御子式が好きな方がいらしたら
こんな感じで申し訳ありませんが、
もう少しお付き合いよろしくお願いします。
12/04/11(Wed)


Back