―Play Pranks―


「今夜泊めて。帰るのが面倒になった」

名乗りもせずに本題を切り出す。
こんな遅い時間の着信に相手を確かめずに出る清寿じゃない。

『笑太君、酔ってるの?』

予想通りそう訊いてきた。

「まだ眠れてなんかいなかったよな?」

質問に答えもしない俺に清寿がついた小さな吐息。
それは苦笑したよう様にも、言葉を失った様にも聞こえた。
携帯電話の向こうでどんな表情(かお)をしたか見えるようだ。

「なぁ。。迷惑?」

いかにも憐れっぽく云ってみる。
ぷっ、と短く笑った後に、いいよ今どこに居るの?という返事が
返ってきた時には正直ホッとした。

「良かった、合鍵忘れてきちゃってさ。開けてよ、このドア」

ええっ?!と驚く声と、何かが床に落ちた音。
ガチャガチャとチェーンの外される音がして、ドアが開いた。

「ご褒美くれなきゃ悪戯するぞ。。。でいいんだっけ?」

笑ってみせた俺の顔を穴が開く程見詰める清寿の腕を掴んで
部屋に上がり込むと笑い出す寸前の唇を奪って舌を絡め、
溜め息に変える。

「呑んできたのかと思ったら。素面でこんな事しちゃうんだ?」

ベッドに並んで腰を掛けさせて、前髪を掻き上げて剥き出しに
したおでこと紅潮した頬と耳朶に唇を遊ばせていたら、清寿が
少し嫌味っぽく云って笑った。

「さっきまで本部に居て三上さんと話してたら会いたくなって」
「僕を思い出す話って、どんな話してたの?」
「や、別に。大した話じゃない」

続けて何か云おうとした唇を唇で塞いで、離す。

「僕が薬飲んで寝ちゃってたらどうする気だったの?」

目の部屋で確認してから来たことは内緒にしておこう。

「開けて貰えなかったらドアの外で寝るしかないかと思ってた」
「うわぁ、マジで?!ああでも笑太君ならホントにやりそう!」

真面目な顔で答えた俺を見て本気で慌てた清寿に破顔する。

「お前がドアを開けてくれないワケないって。な、そうだろ?」

もう一度視線を捉えて、薄く開いた唇を指先でなぞる。

「とんだ悪戯っ子だね」
「確信犯って云ってくれ」

呆れて笑ってくれるかと思ったのに、清寿は儚く微笑んで云った。

「今まで何の連絡もくれないで、いきなりこんな。。。」

腕を伸ばして肩を優しく抱いて、引き寄せる。

「ねぇ、お休み満喫してる?忙しいの?」

俺の顔を覗き込むようにして清寿が喋り続ける。
会っていなかった時間を埋めてゆくように。
期限を決めない長期休暇に入ってから一度も連絡をしていな
ければ責められても仕方ないのにそうしないのが清寿らしくて、
胸が詰まって曖昧な笑顔しか作れない。
だから、答えの代わりに沢山のくちづけを降らせる。

「たまには。。。本当にたま〜にでいいから、声を聞かせて」

甘みを帯びた吐息で語尾が揺れる。

「ううん、声じゃなくてもいい。メールでもいいから。。。あ、
うん。ごめん。笑太君にも都合があるよね」

咽喉が引き攣ったような音を立てて、唇が固く閉ざされた。

「でも笑太君は誰にも話さないで色んな事を抱え込むから」

抱き締めて、抱き締め返される。

「。。。元気で、安心した」

俺も。

そう答えようとした時突然アラームが鳴りだして、いきなり清寿が
腕を突っ張った。

「そうそう!笑太君、パンプキンパイ食べる?」
「パンプキンパイ?」

呆気にとられて口を開けたまま、眼前で満面の笑みを浮かべて
いる清寿を見詰める。

「明日持って行こうと思って作ってて。今焼きあがったとこなんだ」

力が抜けた腕の間から擦り抜けてキッチンに後ろ姿が消えて、
オーブンを開ける音がしたら美味そうな香りが部屋に満ちた。

食べる、と言葉で答えるより先に腹が大きな音を立てていた。

「もしかして夕ごはん食べてないの?なら何か作ってあげるね」

パイをテーブルの上に置くと、こちらの返事を待たずにキッチンへと
戻って料理をし始めた。

「あ〜あ。。。いい雰囲気だったのになぁ」

目の上を手で覆って、背中からベッドに倒れ込む。
次はいつ来られるか分からないから、たった一晩という限られた
時間を大切に使いたかったのに思惑が外れた。
本当はお前が早く食いたいんだよ、なんてがっついてみせても
清寿のことだから「ごはん食べてからね」と云われるのがオチだ。

「久しぶりに清寿の手料理が食べられるからいいか。。。」

カボチャを模ったパイを遠目に見ながら、悔し紛れに呟いてみる。
そしたら無性に可笑しくなって、声を上げて笑い出したら清寿が
駆け寄って来て手のひらをぺたっと俺の額に当てた。

「飯まだ?腹減ってオカシクなりそーなんだけど」

その手を握って持ち上げると、戯れるように指を絡めた。

「ごはん食べに来たの?僕に会いに来たの?」

優しく微笑みなからそう訊く清寿の顔は、俺の企みなんか完全
に見抜いている表情(かお)だ。

「ハロウィンの悪戯をしに来たんだよ」

笑顔を返して冷たい指先に、ちゅっ、と、音を立ててくちづけた。


―The end―






P.S.
Halloweenの話。
笑太が長期休暇中の話という設定で、
時期的には休みに入って間もなく位。

本編に長い間第一が出て来ないので
笑太と清寿ってこんなだったかな?とか
コミックスを読み返して書きました。
初めの頃の笑太は格好良かった!
今のグダグダな感じだったらきっと
清寿も惚れなかったでしょう←

最近萌えが涸れてきてまして。。
更新が遅くなってすみません。
10/11/14Sun.


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