―cherish―


「清寿っ」

この声だけが僕を正気に戻す。
肩を掴まれ身体を前後に揺すられながら、ゆっくりと瞼を伏せた。

「。。ごめん、もう大丈夫。ごめん」

上擦った声で繰り返し呟く。

「待って」

諜報課と連絡を取る為に携帯を取り出しそうとした手を手で
上から押さえて、笑太君の胸元に深く顔を埋めた。

「少しだけ。待って。。」

この許されない高揚感が治まるまで。
耳に残る軋んだような最期の叫び声が消えるまで。

頭の上から降ってきた吐息。
指に力を込めて重ねた手を握って、僕も小さく息を吐く。

「。。少しだけ、な」

幾度深呼吸をしても落ち着かない鼓動をどうしたらいい?
片方の手で頭を撫でてくれている優しさに甘えて、握り返して
くれた手をそっと胸に当てた。

「血の臭いがする」

笑太君の手から手袋を取り去って、赤黒く変色し始めた血が
点状に飛んだ自分の手袋を脱ぎ捨てた。
それでも消えない臭気は足元に転がっているボロボロになった
処刑後の屍骸からのものでは無い気がして、離した手を掴み
直してもう一度握り締める。

「いい加減慣れろ。。って、それは無理か」

苦笑混じりの笑太君の言葉に、俯いたまま首を横に振る。
いつもだったらもっと冷静でいられる。
もう何百件も任務をこなしてきたのだから、血のニオイにも死臭
にも、慣れたフリくらい出来るようになった。。と思う。

でも今日はまだ胸の奥のざわつきが治まらない。

「なぁ、清寿」

息を詰めて顔を上げ、次の言葉を待つ。
視線が合うと笑太君は淡い笑みを浮かべて、僕の顔に触れた。

「お前の正義は間違っていない」

指先で頬を撫でられて、ゆっくりと息を吐く。
見詰め合っていた瞳が近付いてきて、唇と唇を軽く触れ合わせて
離れると、笑太君は曖昧に微笑った。

「けど俺達は、ちょっと壊れてるくらいが丁度いいんだ」

瞼を閉じて、唇を重ね直して、お互いを求め合う。

「処理班呼ぶぞ」

頭を抱き寄せてくれるこの存在だけが、自分をコントロール出来
なくなる程の怒りの余韻から僕を救ってくれる。

「うん。もう本当に大丈夫」

身体を離してそう答えると笑太君が、ふっ、と、鼻で笑った。

「お前がしっかりしててくれねぇと俺が困るんだからな」

返す言葉が無くて微笑んだら照れたような笑みが戻ってきて、
頭をぐりぐり撫で回された。


―The end―






P.S.
久しぶりの更新は
共依存的な関係の2人の話。

1ヶ月程まともに作品を書かなかったら
ちょっと書き方忘れてますね(汗

タイトルの意味は『大事にする』。
NEWSの同タイトル曲のイメージで。
10/06/07mon.


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