―好きなんですあなたのことが。だから、いいですよね?―


目立つのは好きではない。
普通にしていても人目を惹くこの容姿を、煩わしいとさえ思う。
羨ましいくらい綺麗な顔ねと初対面で藍川隊長に云われた時
も僕はイヤミと受け取ったのに、貴方は事も無げに笑い飛ばした。

御子柴総隊長。
彼をそれまでよりも意識しだしたのはこの時から。

養成所では知らぬ者は居ない存在。
入隊する前からウワサは聞いていた。
だからもっと近寄り難い人だと、勝手に思っていた。

「上條っ!」

法務省の建物を一歩出たところで声を掛けられて振り向くと、
こちらに歩み寄ってくる大きな影が見えた。

「遅かったな。もう帰ったのかと思った」

3月中旬と云っても、今夜みたいに冷える日もある。
笑みを浮かべながら云う口元に白い息がふわふわと広がった。

「お疲れ様です」

目礼をしたフリをして俯いた。

「一緒に帰ろうと思って待ってたんだ」

眩しくてクラクラするような笑顔を上目遣いでちらりと見てまた
視線を落とす。

「飯でも、どう?」

腰を屈めて下から覗き込むようにされれば、否が応でも視線を
合わせない訳にはゆかない。

「何か用事入ってるんならいいけど。何も無いなら。奢るから」

貴方と一緒に居ると目立つから嫌だ。

そんな理由では納得してくれないだろうな。。
普段の行動を見る限り、自分が目立つという事を全く意識して
いなさそうだし。

「もし僕が。。」

顔を上げた僕の目の前には屈託の無い笑顔があった。

「ん?」

語尾を上げて先を促す、柔らかな声。

「先に帰っていたとしたらどうしました?」

我ながら愚問。
どうでも良くて、でもどうしても確かめたい。
愚かしいほどぐちゃぐちゃな感情を押し殺して、無表情を保つ。

「ん〜そうだなぁ〜。もう少し待って出て来なかったら電話してた」

「電話番号。。」

「知ってる。総隊長特権で調べさせて貰った」

呆れた人だ。。

「でさ、これから空いてる?」

返事をしない僕の手を取った指先が冷え切っていて思わず握り返す。

「いつから待ってたんですか?!」

総隊長は悪戯がバレた子供みたいな笑顔を見せた。

「ちょっと前から」

こんなに手が冷え切る程のちょっと前とは、どのくらい前なのか。

「今日ホワイトデーだろ?チョコ貰ったお礼がしたくて」

それだけの為にどれ程の時間、外で僕を待っていたのだろう?

訝しげな表情(かお)をしてしまったら、照れたように頭を掻いた。

「俺、上條に嫌われてるとばかり思ってたからあん時は驚いてさ。
ちゃんとした礼も言えなくって。だから。。」

貴方は目立つ。
実力はあるのにどこかいい加減で、それが余裕みたいに見えて。
無意識にいつも目で追ってしまっていた。

嫌いなのではなく、意識しすぎていると。

自分の本当の気持ちに気付いたのはつい最近だ。

「好きなんですあなたのことが。だから、いいですよね?」

自然に笑みと告白が零れて、絶句している唇の上に伸び上がる
ようにして唇を重ねた。


―End―






P.S.
彩音様主催のホワイトデー企画へ
提出した話のもうひとつ。
お題がそのままタイトルになってます。

笑太×璃宮です。
もうひとつの『そんなに泣かないで〜』より
りっくんが原作寄りでこっちの方が好き。
そしてツンデレは難しいと学びました。。

彩音様ありがとうございました!!
また機会があったら企画に参加
させて下さいね。
10/04/15Thu.


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