―SWEET SILENCE―


短く途切れる呼吸(いき)の中に紛れ込ませた切ない吐息に、
貴方は気付きもしないだろう。


任務が終わって部長室前で会った一瞬。
先に出てきた僕に微かな笑みと目で合図をして、そ知らぬ顔で
すれ違った。
時間外に地下へ行くからと瑞城と元親を先に帰し、多分同じ
理由で副隊長と藤堂を帰した貴方と射撃訓練場で落ち合った。
―― よく分かったな。
そう云って笑った貴方に、素直になれない自分。
―― 分かりますよ、行動パターンを見ていれば。
返ってきた満面の笑みに赤面した。
―― そんだけ見てんの俺の事?なら相思相愛だな。
無言で手首を掴み更衣室まで連れてきてチョコの箱を押し付ける
とその場でバリバリとラッピングを外して1コ頬張った。
それをぼんやりと見ている間に不意を突かれて抱き取られていた。


「もう。イッていい?」

唇が耳朶に触れて、低い声が甘く囁く。

返事を返さなくても身体が答えている。
羞恥に赤く染まった頬を、からかうように舌先が舐る。

「上條?」

背中に感じる鼓動は自分のものか貴方のものか。
激しくなる律動に呼吸まで同調して、繋がっている部分以外
の感覚が遠退き声まで遠く聞こえる。

「誰。。。か。。。来る前に。。。っ」

口を開けば零れてしまいそうな嬌声を噛み殺して、歯を食い
しばって懇願する。

「誰か?。。。誰が?」

わざとらしく問い質す声はあくまで優しく。
僅かに残る自尊心をも砕こうとする。

「。。。っ!」
「待て上條!唇噛むな。また血が出る。。。」

顎を下から持たれて、無理に後ろを向かされる。

「声、出せよ」

唇を舐め取った舌が歯列をこじあけて入ってくる。
深くくちづけられて漂うのは濃厚なチョコの香り。

「やだ。。。っ」

向かい合って見詰められ触れられただけで、貴方の中にある
負の記憶が見える。
キスなんてされたら他人には見せたくない過去や、忘れようと
している深い闇まで全てが見えてしまう。
明るくて自信家の総隊長―御子柴笑太。。。
大嫌い、が、気になる、に変わったのはその闇を見てしまった
あの時から。

固く瞑った右の瞼から、血の色の涙が頬へ流れる。

キスもさせない。
後ろから抱くことしか許さない。
もう貴方の闇を知りたくないから。


でも好きなんだ。。。!


心の中でだけ叫んで、声になって溢れ出さないように、血が出る
まで唇を噛んで耐え続けている。
最初に想いが通じた日から、今までずっと。

「早くっ。。。誰。。。か来たら。。。困る。。。からっ」
「どうせ俺等は監視(み)られてないことのが少ないんだから。
今だってアイツが見てるしさ」

天井に設置された監視カメラを見上げて苦笑する。

「そんっ。。。じゃなくて。。。っ」
「誰が来たって関係ない」

身体を支える手の上に重ねられた大きな手のひらが悔しくもあり、
愛しくもある。

「俺にチョコをくれたのって、そういう意味なんだろ?」

立ったまま背後から突き上げられて声が漏れる。

「んんっ。。。っ」

限界まで屹立した前を根元から先まで撫で上げられて、当てがわ
れたタオルの中へ精を吐き出す。

「くっ!」

その直後、最奥で貴方が弾けて熱いものが注がれた。

「や。。。アツ。。。い」

足元に脱ぎ捨てられた白の隊服の上に、ぱたぱたと白い雫が垂れて
落ちる。
その上に、崩れるように座り込む。

「ごめん。ツラかったな」

倒れないように上半身を支えてくれた貴方の体温を感じながら、
陶然と首を横に振る。

「なぁ上條。そろそろ好きだってちゃんと云ってくれてもよくない?」

その一言で正気に戻った。

「誰がそん。。。っ」
「俺は好きだよ。上條璃宮が」

絶頂に達したその瞬間、目を閉じていても見えたのは、貴方の中に
ある僕との記憶。そして想い。
出会った頃から僕の事を気にしてくれていた。。。


それは、どんな言葉よりも隠しようの無い真実。


「。。。まだ名前で呼べてないのに。。。順番が違う」

僕の首筋を遊んでいた貴方の唇が、笑った。

「じゃあやり直そう。きちんと。初めから」

嬉しくて悪態をついてしまいそうなので、口を噤む。
上がった息が治まるまで、抱き締められたままで居てあげよう。


―The end―






P.S.
タイトル以外全く甘くありませんが
一応バレンタイン当日という設定。
笑太×璃宮。。
笑太→璃宮的な。
りっくんファンに怒られそうな話で
ホント申し訳ありません(汗
10/02/11Thu.


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