―3rd Anniversary―


猫みたいな目。
他では見たことの無い色で強く印象に残った。
笑っているようで笑っていない。
整った顔に嵌め込まれた、硝子で出来たような瞳。

あの出会いから何年経ったか、その時ふと考えていた。

「もうすぐ3年目」
一歩遅れて横を歩く清寿を横目で見る。
「笑太君と組んでから」
こちらに微笑みかけてから、確認するように云う。
まるで俺の考えていることはお見通しだよ、という様
な絶妙のタイミングに失笑する。
「組まされてから、だろ?」
俺の言葉に眉を顰めて、困ったように笑う。
「。。。笑太君にとってはそうだよね」
「お前にとってもそうだろ?」
乾いた笑い声が力無く途切れる。
「違うよ」
呟いて俺を見詰める大きな瞳。
「違う」
もう一度短く云って、逸らされた視線。
その後の沈黙が気まずくて何度も横を盗み見る。
表情の無い顔は何を考えているのか分からない。
いつもの廊下にやたらと大きく響く靴音。
手袋をはめた指先が強張ったように、胸の前で
持った帽子のつばを握り締めている。

「去年もその前の年も」

嵌め殺しのガラス窓越しに中庭に目を遣ったまま、
不意に清寿が口を開いた。
「1年なんてあっと云う間だな、って思った」
磨かれた窓の表面に映る瞳が穏やかに揺れた。
「あのな、清寿。云っとくけど」
つい強くなってしまった語調に驚いた様に振り返った、
その目はもう笑っていない。
「俺はお前以外と組む気は無いからな」
ははっ、と目を細めたその笑い方はニセモノの笑顔。
「気を遣うなんて、らしくないね。でも、ありがと」
前を向いてしまった清寿に、衝動的に手を伸ばす。

スローモーションの様に、自分の動きがコマ送りで
見えた。

「違うっ!」
突然腕を掴まれた清寿は目を見開いて俺を見た。
「お前の目的が何であろうと第一部隊にいる限り、
俺達は運命共同体なんだ」
怯えたように、紫色の瞳の中で瞳孔が縮んだ。
「その目的が何かは訊かない」
出会った頃の清寿には憎しみと絶望しかなくて、
第一でいなければならない別の理由を持っている
ように見えた。
「ただ。俺が居るって事だけは忘れんな」

ふわっ、と、清寿の口元が緩んだ。

「もうひとりじゃないんだって何回も云われてるのに。
すぐ忘れちゃう」
軽く下を向いた目の表面が、濡れたように光った。
「だから何度も云ってやってんだろ?」

猫みたいな目なのは変わらない。
でも最近はちゃんと笑うようになった。

「ありがとう」
ゆっくりと言葉の意味を確かめるようにそう云って
にっこりと微笑んだ清寿の頭の天辺に手を置いて、
ぐしゃぐしゃと撫で回す。
「今年でハタチになるのか?」
「うん。9月で」
手を離すと少し困ったように笑って、乱れた髪を手で
直した。
「じゃあもう大人だな」
「1歳しか違わないのに、もう自分は大人、みたいな
云い方してる〜」

「ありがとう」

聴こえないくらいの小さな声で云ったのは、ただ照れ
臭かったから。
もう2度と誰とも組まないと思っていた俺を、清寿が
変えてゆく。
誰も信じない目をしていた清寿も、俺と居て少しは
変わっていっているように思うのは自己満足か。。。

「3年目もよろしくお願いします」

振り返って微笑んだ清寿へ、しっかりと頷いて笑みを
返した。


―The end―






P.S.
清寿が入隊して3年目に入る頃。。
お互いの過去は話していない
まだ少し距離がある、
でも相手を意識はしている、
そんな時期という設定で。

まもなくサイトも3周年を迎えます。
応援ありがとうございます!
文章はなかなか上達してませんが(汗
これからも精進します!
どうぞよろしくお願いします。
10/02/26Fri.

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