[02-2] Tuesday 今日は冷えるね


耳に当てた携帯から聴こえるのは繰り返すコール音。
視界に入る暗い空からは雨が降り出した。
居るのに出ないとしたら何故?
居ないとしたら何処へ?
こんな夜中に何してる?
このくらいでイラつくなんてと自分に呆れる。

『もしもし?』

諦めて切ろうかと思った時に聞こえた声に安堵する。

「何してた?」

名乗るのも忘れて喋り出す。
束縛したい訳じゃない、でも、余裕が無い。
携帯の向こうの微かに笑った気配にすら心が乱れる。

『お風呂入ってた』

こちらの気も知らずにのんびりとした声。

『携帯鳴ってるのに気付くの遅くなっちゃってごめん』

荒んだ気持ちにすっと入り込む。

「風呂か。。。」

ガサガサ云う音は濡れた髪をタオルで拭いている音。

『うん。ゆ〜っくり浸かってたらさ。。。』

云うか云うまいか悩んでいる様な息遣い。
先走ってその理由を問い詰めそうになるのを自制する。

『居眠りしちゃってたみたい。この電話がなかったら朝まで
そのまんまで寝てたかも。起こしてくれてありがと』

笑った息が寂しそうに感じたのは俺の願望?

『笑太君は?お風呂入った?今日は。。。』

ピンポーン。

『。。。こんな時間に誰か来た。。。?ちょっと待ってて』

数秒の無言。
開かれたドアの向こうで、見開かれた目が細められる。

『今日は冷えるね』

目の前に立つ俺に携帯越しに話し掛けてきて、同時に
通話を切って笑い合う。

「ただいま」

玄関に一歩入って、後ろ手にドアを閉める。

「おかえりなさい」

そう云ってふわっと微笑んだ後、部屋に招き入れる様に
背を向ける。

「こんな時間まで会議してたの?夕飯は?もうとっくに
家に帰ってのんびりしてると思って。。。た。。。?」

振り返って、それ以上前に進もうとしない俺を見て、
笑った顔のまま首を傾げる。
近くにあった手首を捉えて、引き寄せる。

「すっかり冷えてんじゃん。このままじゃ風邪ひくだろ」

胸元にすっぽり納まった清寿を抱き締める。

「一緒にお風呂入る?も一回入ってもいいよ」

上目遣いに俺を見た途端に、くしゅんとひとつくしゃみを
して肩を竦めた。

「寒くなってきたな」
「うん。さっきまで寒くて寒くて。。。寂しかった」

重ねた唇はどちらも冷たくて、温め合うには温もりが足り
なかった。


―End―



1週目を書いていたのは
まだまだ暑い頃で。。
このお題が有る為に少し間を
空けてしまいました。
暑いのに「冷えてきたね」とか
書くのはやっぱりキビシイ(汗
やっとお題に季節が
追い付きました。。
09/10/16Fri.


Back