[05] Friday 散歩の途中


「?」
「なんでもねぇよ」

その表情の、意味がちっとも分からない。
固く閉ざされてしまった口元は、欲しい答えをくれそうにない。
前へ向き直って歩き出した笑太君の背中を見詰めながら、
後ろに差し出されていた手に、そっと手のひらを重ねた。

「笑太君」
「んー?」

声の感じからすると、機嫌は悪くないと思う。
手を繋いだ時に絡ませた指も、拒まれなかった。。。それに、
振り返ってはくれないみたいだけど歩調がゆっくりになったから、
殻の中に閉じ籠ってしまったワケでも無さそう。
言葉が足りないのは治らない。。。治す気も無い悪い癖。
自分の中に色々抱え込んで、誰にも見せようとしない。
僕に話してくれていないことだって、きっといっぱい有る。

「何だよ?呼んどいて睨むな」

以心伝心じゃないけど、こうやって手を繋いだだけで何かが
伝わればもっと、分かってあげられるのに。
幾度身体を繋いでも、伝わらないことだらけだ。

「。。。清寿?」

ぎゅっ、と、手が握り直された。
条件反射で、握り返す。

「ゴメン。俺。。。」

半分振り返った横顔の、下半分を手で覆って、笑太君が
云い淀む。
熱が伝わってきそうな程に紅潮した頬を、隠すようにして。

「なんかまだこういうの照れ臭くって。。。」

口の中でもごもごと、云い訳めいた事を言う。
重なっていた手のひらが少し、汗ばんできて。。。そして、
笑太君が何を感じて何を云おうとしているのか分からなくて
戸惑っている僕の手をもう一度握り直した。

「笑太君。。。?」

通勤路を逸れて、公園を通り抜ける道へ入る。
同じ所に帰るのだとしても、今夜みたいに優しい風が吹く
穏やかな夜は、遠回りしたくなる。
夜なら、手を繋いだり腕を組んだりして外を歩けるから、
“散歩しながら帰ろう”は、最上級のおねだりなんだよ。

「散歩って。。。」
「もしかして、嫌だった?」

笑太君は家でゆっくりしたい派だから、早く帰ってのんびり
したかったのかもしれない。
昨日も資料探しのついでに掃除をしたら帰りが遅くなって、
今日も任務が2件あって遅くなった。

「や、散歩する習慣なんてお前と付き合う前は無かったから、
散歩して帰ろうって云われると、なんて云うか。。。その」
「。。。?」
「なっ、清寿、あんまじっと見んなっ」

指に力を入れて手を引っ張って、振り向かせる。

「きゅん、ってする?」

手を引っ張り返されて重ねられた唇が答え、だよね。
ちゃんと、伝わってた。


―End―



ツンデレてる笑太君も
可愛いかな、と(笑
09/07/28Tue.


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