―The Rules of Etiquette for Lust―


突然降り出した激しい雨の音に紛れて息遣いさえ聞こえないのに、
聞こえる筈の無い鼓動の高鳴りが伝わってくる様で、緊張している
清寿の様子を見て弛みそうになる口元を引き締める。
「脱いで」
俺の言葉に、軽く眉を顰めて目を伏せた。
「自分で?」
「そう」
云い掛けた言葉を飲み込んで、ベッドの傍に歩み寄ってから素肌に
一枚だけまとっていたバスローブをゆっくりと脱ぎ捨てる。
「ん。良し」
「何の確認??」
無駄な筋肉がついていない身体を鑑賞してから、腕を掴んで引き
寄せる。
「たまにはきちんと見とかないと」
ギシ、と、ベッドが清寿の体重の分だけ軋む。
「意味分かんない」
表情が緩んだ清寿を膝で立たせて俺の上に跨らせると、腰に左手
を回した。
「傷って、消えねぇもんだな、と、思ってさ」
腰から背中へ手を滑らせて、上半身を前に傾けさせて、
「もう何年も経ってんのに」
左の腹に残る傷痕に唇で触れて、引き攣って硬くなった皮膚の形
をなぞるように舌を這わせる。
「っ、んっ。。。!」
「感じるんだよな、ここ」
声を殺して喘いでいる顔を上目遣いで盗み見ながら、執拗に責め
続ける。
「笑太君がそうなるようにしたんだよ。。。っ」
傷の中心を音が立つ程強く吸うと、勃ち上がり出したものから透き
通った雫が溢れ出した。
「ここは笑太君にしか触らせてないんだから」
腰を抱くように支えているのと反対の手で、先走りで濡れる性器を
掴む。
「。。。っ!。。。触っちゃ。。。や。。。っ」
「嫌がってないじゃん」
浮かないように身体を押さえつけて、指で弄り、唇で玩ぶ。
「はぁっ。。。あっ。。。だめ。。。イッ、ちゃう。。。っ」
まだ挿れてもいないのに、目の縁に涙が滲んできた。
「我慢してないで。一回イケばいい」
膝と太腿の細かい震えが、素肌を介して伝わってきた。
「や、だ。。。ぁっ」
屹立する茎を根本から舐め上げるようにして咥えた口を退けようと、
清寿の指が俺の髪の中でもがく。
「離して、出ちゃうっ。笑太君の口っ。。。汚しちゃ。。。うっ」
傷痕に軽く爪を立てて、舌先を先端に割り入れた。

「ああっ。。。!」

「。。。う。苦っ」
「ははっ!自分のだろ」
絡めた舌を解いて唇を離すと、白濁混じりの唾液が糸を引いた。
「自分のとか云うの、止めて」
紅潮した顔を包むように持って、親指だけで頬を撫でて、
「清寿の」
汗で張り付いた髪を、取ってやる。
「云い換えろって云ったんじゃないから」
「解ってるよ」
そんなどうでもいい事で怒ってみせるのは恥ずかしさの裏返しだと
勝手に解釈して、強引に唇を重ねた。
応えるように膝を割って入ってきた足に、足を絡める。
敏感な部分が互いの身体の間で擦れ合う、その快楽を味わい
ながら。
「今度は僕がしてあげる」
「。。。!」
先端にくちづけされそうになって、手を突っ張って身体を遠去ける。
「なんで?気持ち良くしてあげるよ?」
「や。駄目、駄目」
清寿の指が性器に触れそうになっただけで、背中が跳ねる。
しつこく伸ばしてくる手を遮って、両方の手首を捕まえた。
「笑太君、ズルい」
往生際悪く手足をじたばたさせながら清寿が云う。
「何がズルいんだよ?」
不満そうに尖った唇を舐めて、開かせた。
「僕にだって笑太君を気持ち良くさせることくらい出来るよ」
大真面目に、これ、だから。
笑い出しそうなのをなんとか堪えた。
「清寿はいつも俺の事気持ち良くさせてくれてるよ」
「でも!いつも僕ばっかり悦くて。。。」
視線を逸らして目を伏せたその恥じらいの表情が、いい。
「それなら俺は満足なんだけどな」
「僕は満足じゃない」
そろそろ焦らすのも、焦らされるのも限界だ。
「イクなら清寿の中でイキたい」
耳元で吐息の様に囁く。
「清寿は、したい?されたい?」
息を詰めて数秒考えてから、清寿は大きく息を吐いた。
「本当はどうして欲しいか、云って?」
一度軽く睨まれて、視線が下に外される。
「本当は。。。して欲しい」
抱き合ったまま体勢を変えて、自分が上になる。
「挿れて、いい?」
返事を待たずに後孔に差し入れた指に、粘膜が締まって絡み付く。
「う。。。んっ」
清寿が頷くと、白いシーツの上に長く伸ばした髪が広がった。
「笑太君が欲しい。。。っ」
喘ぐ顔の横で乱れている髪にくちづけながら、ひとつになる。
耳朶に当たる息がツラそうに途切れて、背中で手が握り締められた。
「苦しい?」
首が横に振られて、肌と肌が擦れる。
「最初だけ。。。でも、嬉しい」

確信犯的に、身体に快楽を覚え込ませる。
無意識下でも俺を求めるようになるように。

潤んだ瞳で微笑みを浮かべ、清寿は俺の左肩にくちづけた。
清寿の腹の傷痕がそうなっているのと同じくらいに、俺の古傷も血の
色を帯びているのだろう。
「ここは笑太君の感情が昂ってくると浮かび上がってくる」
唇を触れさせたまま喋るから、息遣いさえ愛撫になる。
「身体に遺せるのは痛みの痕だけって、悲しいね」
「んっ。。。!」
俺の形に馴染んで、襞が食い締めてきた。
「この感情も残せればいいのに」
手で挟んで顔を引き寄せられて、唇を重ねる。
「笑太君、もう大丈夫。動いて」

荒れ狂う雨と風の音の中で清寿を求め続ける。
嵐の様な激しさで、愛し合う。
繋ぎ留めるつもりで、溺れさせられているのは俺の方だ。
身体にお前が刻み込まれて、無意識に求めてしまっている。

甘い声で、もっと俺の名前を呼んで。
愛してるって、何度でも云ってやるから。


―The end―






P.S.
御子式的『欲情の作法』。
本家は読んでいませんが(笑

梅雨の話のつもりだったのに
ゲリラ豪雨の話っぽくなって、
結局ただのエロ話に。。
惚れた方が負けって
そういう話?(汗


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