07. 「ご名答。頭のいいヤツは好きだよ」


「恋してるような瞳(め)だよね」

笑っていない時の、この男(ひと)の瞳は苦手だ。
他人(ひと)の本性まで見透かすような、射抜くような
大きな瞳(め)。
人形と陰口を叩かれる処刑部隊内で、最も人形的
と評される美貌の副隊長。
いつも穏やかで面倒見がいいと誰もに好かれていても、
この仕事を選び、優秀な隊員の中でもナンバー2で
いる為には、どこか歪な部分があるに違いない。
「意味分からないです」
大袈裟に、嫌そうに眉を顰めながら答える。
ふふっ、と笑った表情(かお)はいつもの副隊長の顔。
「素直じゃないんだ」
「は、はぁっ?!」
動揺してしまった僕の顔を確かめるように見てにっこりと
微笑むと、離れた所に向かって声を掛けた。
「笑太君っ!僕、先に戻ってるからっ」
愛用のデザートイーグルに詰めた全弾を打ち終わって
手を下ろし、イヤーガードを外しながら総隊長が返す。
「おう!先に帰っててもいいぞ」
「うん、そうする」
そちらに向かって頷くと僕を見てもう一度微笑んでから、
くるっと背を向けて去って行った。

恋してるような。。。って。。。

任務が早く終わったので射撃訓練をしに地下へ来たら、
総隊長と副隊長と鉢合わせになった。
「2人揃ってだなんて、珍しいですね」
自分から声を掛けた。
「あ、上條隊長!お久しぶりー」
「ホント、顔見んの久しぶりだな」
2人が返してきた無邪気な微笑みが、コンプレックス
だらけの僕の癇に障る。
「怪我したんだろ?もういいのか?」
邪魔にならないように髪を縛っている副隊長の横で、
総隊長が。。。御子柴が、云った。
「。。。耳が早いですね」
返事に潜ませた棘に気付いたのは副隊長の方で、
返された本人は全く気付いていないようだ。
「一応そういう報告は直ぐに僕達にも来るから」
「ああ。管理職ですからね」
先日撃たれた左腕の傷口の上に、無意識に触れて
いた。
「まだ痛むんだったら無理すんなよ」
御子柴に云われると、素直に取れない。
「無理なんてしていません」
ちょっとムキになって、でもかなり自分を抑えて答える。
「なら、いいんだ」
確かにそのやりとりをしてから、ずっと睨んでいた。
的に向かっている姿も、他の誰かと喋っている姿も。
それが恋してるような目に見えるだなんて、冗談じゃ
ない。

「おい、上條」
「。。。っ!」

気が付くと、真横に御子柴が立っていた。
「ぼーっとして、どうした?」
にやにやしながら覗き込まれて、顔ごと視線を横へ
逸らす。
「失礼なっ。ぼーっとなんかしてないですよ」
頬が紅潮したのが、自分でも分かった。
「してただろ?俺がこんなに近付くまで気付かない
なんてさ」
楽しそうな口調に、憎まれ口を叩き返す。
「別に。貴方ばかり気にしてるワケじゃないし。。。」

何で動悸が。。。するんだ?

「帰るっ」
見下ろしてくる視線から逃れて、半ば駆け出す様に
廊下に出た。
「なんで付いて来るんですか!?」
後ろから来る気配に振り返って、抗議する。
「俺も丁度帰ろうと思ってたところだったから。だから
お前に声掛けたんだよ」
御子柴が悠々と笑いながら云う。
「帰るとか。。。僕には関係ないでしょう?」
動揺が隠せなくて、声が裏返る。
「関係ない?俺のことずっと見てたのに?」

笑ってる唇から、目が離せない。

「気付かれてないとでも思ってた?なワケねぇよな?
あんだけじっと見といて。俺が気になるんだろ?」
精一杯の虚勢を張って睨み返したのに、却って面白
そうに笑われた。
「なんてな!そんな表情(かお)するとは思わなかった!」
「。。。もしかしてさっきからからかってるんですか!?」
「ご名答。頭のいいヤツは好きだよ」
「――っ!!」

ヒドい男だと分かっていてもこんな風に意識してしまう
のは、恋してるようなとか、変なことを云われたせいだ。


―End―



御子上です。
りっくんは乾的には
愛玩系(笑
この先の話を書くかは
神のみぞ知る。。
09/03/20Fri.


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