06. 君の吐息は僕の媚薬


「。。。?どうした?清寿」
「え。。。?なんともないよ」

こんな時だけ鋭い。
あと任務に関わることの時も、か。

「。。。体調悪いだろ?」
「そう見える?」
「いや。。。なんとなく」
「“なんとなく”?」

口真似をしてからかうように訊き返した僕を見て、
何かを云い淀んだように結ばれた唇。

「や。そうじゃなくて」
「そうじゃなくて??」
「ん。。。」

他人の事なんてどうでもいいといつもは思ってる。
僕は僕だからいいって。

「笑太君?」
「。。。」

けど、そんな思い詰めた顔をされると気になる。

「笑太君、ってば」

マイペースに見えたって、
他の誰に嫌われたっていいって思っていたって。

「。。。」

笑太君に嫌われるのは怖い。
またひとりになるのは、怖い。。。

僕は成長した訳でも乗り越えた訳でも無く、
まだ明けない暗い夜の中に居る。
ひとりの夜は悪夢を恐れて眠ることが出来ない。
自分で自分を抱いたって温かくならない。
君の吐息は僕の媚薬。
それだけが唯一、僕を人間(ひと)にする。

「3日間」

唐突に笑太君が呟いた。

「え?」

前髪に隠れて、顔が半分見えない。

「お前のとこに行けなかった」
「。。。う、うん」

そこまで云うと後ろを振り返り、羽沙希君に向かって
先に武器庫に行って点検に出した銃を受け取って、
それから部長室に来るように告げた。
羽沙希君は大きく頷くと、早足に去って行った。
その後ろ姿が見えなくなったのを確認して、
笑太君は軽く屈み込んで僕の顔を覗き込んだ。

「その3日の間、ほとんど眠れてないだろ?」

本当に鋭い。
こんなどうでもいい事に関しても。

「分かるんだ。。。?」

呆れたような君の吐息でも、僕にとっては媚薬。
嬉しくて、心が濡れる。

「今夜はゆっくり寝ろ、と、云いたいところだけど」

沈黙の隙間に、廊下を並んで歩く足音だけが響く。

「寝かせてやれる自信が無い」

ぷっ、と、吹き出してしまった。

「ひでぇなぁ、笑うなよ。人が真面目に。。。」
「マジメだから笑っちゃうんだよ」

怖がらないで。僕はとっくに君に堕ちている。
もう怖がらないよ。君はしっかり僕を見ていてくれる。

「一緒に居てくれるだけでいい」

甘い言葉なんて、要らない。


―End―



朝出勤して着替えて、
部長室に任務の説明を
聞きに行く間の会話、
と、いう設定。
僕の吐息は君の媚薬
でもある。。
09/03/01Sun.


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