06.                     *R-18*

「この体勢の意味、分かって言ってる?」

意地悪く口角が上がる。
一緒に口元のほくろも動く。
分かってるよ、そんなの。
テーブルとソファの間の床の上で笑太君の上に跨って、
僕から押し倒したように見える体勢。
癪に触ったから、床に付いていた爪先と膝に力を籠めて、
勢いをつけて立ち上がろうとした。
「。。。っ!!」
身体の重心を動かした瞬間に腰骨を両手で押さえつけ
られて、笑太君の胸の上に崩れるように落ちる。
「あははっ。逃げられると思った?」
運動神経には自信がある。
おかげで何度も危険な目に遭いながら生き延びてこれた。
でもそれは笑太君も同じことで。。。
反射神経なら勝ってるって思ったのにな。
笑いながら僕を抱き留めた腕の中で、悔しいけれど諦め
の溜め息をつく。
「なぁ、清寿」
頬を挟んで持たれて顔を上げさせられる。
膨れっ面で黙っていたら、鼻の頭を鼻先で突付かれて、
唇を重ねて舌先で触れてきて、甘い息で肌を撫でられて。
根負けして応えたくちづけが、どんどん深くなる。
「妖しく誘って、なんて、どうしたらいいか分かんねぇよ」
いつの間に脱がされたかも分からないうちに、裸にされて
いた。
「お前が欲しい、だけじゃダメか?」
視線を逸らせないように頭を固定されて、真剣に見詰め
られて云われたら、許すしかないじゃないか。
「なんで泣くんだよ?」
困った顔で髪にくちづけを落とす、その優しさに、迷う。
「笑太君はさ」
鼓動が激しくなって、心臓が弾け飛びそうだ。
「うん?」
僕の言葉を聞こうとして、長い睫毛が伏せられる。
「嫌なことがあったりありそうだったりすると、乱暴にするん
だもん。。。」
ハッと見開かれた瞳が、細められる。
「。。。すまない」
笑太君が視線を遣ったテーブルの上のノートPCに手を
伸ばし、血腥い現場写真が映るモニターを、パチン、と
閉じた。
「ちゃんと僕のこと、見て」
僕から唇をねだって、笑太君の服を脱がせる。
抵抗してくることも無く為されるがままになってくれている、
それは愛なのか憐れみなのか不安になる。


君を失ったら、僕は自分を見失ってしまう。
僕が人間である為に、君は大切な人なのに。
君にとっての僕は、ただ感情のままに抱くだけの人形に
過ぎないの?


「。。。っ」
言葉にしたらこの関係が壊れてしまいそうで。。。
僕が壊れてしまいそうで。。。
「ごめん。。。ごめんって」
笑太君は何度も謝りながら、甘やかすようなくちづけを
沢山くれた。
「人形でもいいから、傍に居させて」
泣きじゃくりながら、求める。
「バカ。お前は人形なんかじゃない」
一度点された熱が身体の内で燻っていて、触れられる
ところが全て燃えるように熱くなる。
笑太君も同じようで、硬く脈打っている欲望に触れると
切ない吐息を漏らした。

「改めて。。。清寿、お前が欲しい」

頷く前に、自分から笑太君を受け入れていた。


―End―



微エロなお題:05のつづき。。
結局はらぶらぶなんですけどね。
09/02/22Sun,


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