05. 「俺から離れるな…何度も言わせんなよ」


パタ。パタ。

断続的に続く、不思議な音で目を覚ます。
昏い部屋は冷え切って、寒々としていた。
パタ。パタ。パタ。。。
何の音、だろう?
水が漏れている音とも、時計の針が動く音とも違う。
リズムもバラバラで、もっと軽い音。
聴いているうちに瞼がゆっくり降りてくる。

視界が、真っ暗に、なった。

「せい。。。じゅ。。。?」

どこに行った?
お前は自分自身で思っている以上に不安定だから、
危なっかしくて放っておけない。
だから一緒に居てやると、云っただろう。

腕を伸ばして、身体の近くを探ってみる。


あ。ここに居た。


パタパタいっていた、音が、止む。

「清寿」
「なぁに?笑太君」

首と身体に手を掛けて、引き寄せる。
「俺から離れるな…何度も言わせんなよ」
額の真ん中に、温かくて柔らかいものが触れた。
「。。。うんっ。ずっと傍に居るよ」
規則正しくノド元にかかる息が、温かい。
「せいじゅ。。。」
「ふふっ」
「。。。?何笑ってる?」
「笑太君ってば、寝呆けてる」
「ん。。。」

密着させた胸郭から伝わってくる鼓動が、熱い。

パタ。パタ。パタ。パタ。。。
あの音が、再び聞こえ出す。

「おやすみなさい」
唇の上に、優しいくちづけ。
「夢なんか見ませんように」
啄ばむように、もう一度。
瞼の上に、落ちる。
「もううなされたりしませんように。。」

パタッ。

音が止んだ。

掛け布団の上に清寿の腕の重みが落ちてきて、
すーっ。。。と、浅い寝息が聞こえてきた。
落ち着ける位置の決めるように、肩に頭が擦り寄せ
られる。

ああ、あの音は。。。

清寿が俺の背中をゆっくりと叩いてくれていた音。
母親が子供をあやすように。慈しむように。


うなされて。。。いたのか。


冷え切っている腕を布団の中に入れてやって、
髪を撫でながら、呟く。
「俺から離れるな。。。じゃない」
微笑みの形の唇に、くちづけを返す。
「俺から離れないでくれ」
起こさない程度に軽く。
でも、体温を感じる程には確かに。


いずれ終わりの刻(とき)が来るのなら、
いっそこのまま死ねたらいい。


―End―



共に依存し合う恋愛。
衝動的で、刹那的な。

静かな夜には
悪夢を見易い。
09/02/03Tue.


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