03. 「二度と言わねぇから良く聞けよ」


笑太君はいつもそう。
説明が足りないから。。。不安になる。
羽沙希君の前だと不安そうな顔は出来ないから、
努めて冷静に振舞ってみせる。
それがスゴいストレスだって、分かってない。
「何むくれてんだ?」
むくれてなんかない。機嫌が悪いんだよ。
「羽沙希は?」
笑太君は振り返り、遅れて歩く僕に向かって手を
差し出す。
ごく自然なその動作が、今日は癪に障る。
特刑部内の廊下のど真ん中で、しかも制服姿で
手なんか繋げるワケない。
「もうとっくに帰ったよ」
「ふぅん。。。」
その手を無視して横に並んだ僕を見て、困った様
に眉を寄せた。
「清寿」
「何?」
笑顔で答える。
「目が笑ってねーよ」
だって、心の中は笑ってない。
「そんなこと無いよ」
怒ってるんだって。
「。。。なぁ」
「何?」
上目遣いに見詰めると、笑太君は、ぐっ、と、言葉
を詰まらせた。
「怒ってる理由を教えてくれ」

あ。分かってたんだ?

「地下までわざわざ迎えに来て。何だよ?」
青い目が水面みたいに僕を映す。
みっともなく、拗ねた顔。
僕のことを好きになってくれた物好きな笑太君でも
きっと嫌いになっちゃうだろうな。。。
「ちょっ待、待て!ここで泣くな」
泣かないよ。
はっきりと云いたいこと云わないと。
「笑太君」
平然とした顔、って、どんな顔だったっけ。
「はい」
三上部長に対してもしないような改まった返事。
「無事で良かった。。。」
笑太君が潜入捜査に入ったのは2週間前。
前の晩一緒に過ごしたのに、当日一緒に出勤した
のに、僕は何も知らなかった。
全部説明しろとは云わないけど、せめてちょっとだけ
離れることになるよとか、云っておいて欲しかった。
「ずっと心配してたんだから。。。!」
会えない間に積もり積もった不安を全部並べたてて
責めたかったのに。。。溢れ出すのは違う言葉。
鼻と口を両手で覆い、目に力を入れる。
一歩後退ったら、壁にこつんと背中が当たった。
こんな所で僕が泣いたら笑太君の立場が無い。
息を停めて、目線を外す。
すっ、と伸びてきた手に後頭部を掴むように持たれて、
胸元に抱き寄せられた。

「二度と言わねぇから良く聞けよ」

それ、笑太君の口癖だもん。
僕にだってそんなの、解ってる。

「何があろうと最期にはお前んとこに帰ってくるって
約束する」

「〜〜っ」
嗚咽を飲み込む。
「泣くな。ここじゃ何もしてやれねぇだろ」
笑太君は溜め息をつき、頬を指で優しく撫でてくれ
ながら、こっそり小さなくちづけをくれた。


―End―



拗ねてる清寿が
書きたかっただけという(汗
08/11/28Fri.


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