02. 濡れた瞳は君のサイン*R-18*


重なって果てた後、清寿が上に向かって手を差し
伸べてきた。
こちらから顔を近付けて啄ばむ様に唇を吸うと、
耳の上から挟み込むように俺の頭を掴んだ指が髪
に絡みついた。
「清寿。。。」
名を呼んでやると潤んだ瞳で微笑んだ。
「。。。笑太君、僕ね。。。」
耳朶から首筋に頬を摺り寄せて、唇を遊ばせる。
「笑太君が好きになってから弱くなっちゃったような
気がする」
驚いて顔を上げようとしたら頭を強く引き寄せられて、
深いくちづけを貰う。
いつもは嬉しい清寿からのキスも、今日は素直に
喜べない。
すっ、と、唇から力が抜けて、背中に回していた腕
に身体の重みが全部かかってきた。
「清寿?」
微かな寝息が立つ。
静かに頭を持ち上げて枕の上に下ろして、下敷き
になってしまった腕を抜く。
「云いっ放しで寝るなよ。。。気になるだろうが」
君のことを好きになって僕は弱くなった、って?
「それって、さ。。。」
閉じた瞼の間から溢れて光っている涙を指で拭き
取ってやりながら、複雑な気持ちで寝顔を眺めて
いた。

翌朝普通にキスで起こされて、朝食を食べて、
一緒に出勤した。

いつもより集中力が無くて、いつもと変わらない
しっかり者の副隊長に何度か溜め息をつかれた。
「笑太君、どうしたの?」
本日の任務も完遂しての帰り道、並んで歩いて
いた清寿に肘で突付かれた。
「ん。どうもしてない」
云ったの忘れてそうだし。。。
お前のせいだ、なんて答えて墓穴を掘りたくない。
「なんかあった顔してる」
覗き込んできた視線を振り払うように顔を逸らす。
「なんもねぇよ」
清寿は納得いかなさそうな表情(かお)をして目を
伏せた。
「。。。僕、なにかした?」
驚いて横を向くと、清寿と目が合った。
「。。。」
「今、お前のせいだって表情(かお)した」
みるみる瞳が潤み出す。
「そんな風に見られると怖い」
俯いて、ぐすっ、と鼻を鳴らした。
「なんで僕、こんなに弱くなっちゃったんだろう」
掻き抱くように自分の身体に両腕を回して呟き、
背中を丸めた。
「笑太君を好きになる前はもっと強かったのに」
動きに合わせてふわりと髪が広がる。
それが俺を拒んでいるように見えて、咄嗟に手を
伸ばして肩を引き寄せた。
「笑太君に嫌われたくないよ。。。!」
耳元で云われて、気が抜ける。
「嫌いになんかならねぇって」
頭を撫でて、髪にくちづける。
人目があるからと恥ずかしがって外では肘を掴む
くらいが限度でそれ以上は触れてこようとしない
清寿が、抱き締められて体重を預けてきてる。
「俺の方が飽きられたのかと思った」
「えっ?!なんで?」
俺の肩を押して体勢を直し、向かい合って立って
清寿が目を丸くした。
「君を好きになって僕は弱くなった、っての。。。
それってさ、普通別れる時に云う言葉じゃね?」
瞳が落ちそうになるくらい、目が大きく見開かれた。
「。。。え?ええ〜っ!?そんな。。。全然そんな
こと。。。っ!」
やっぱ自覚無かったか。
疎いのか、鈍いのか。
清寿らしいそういうところが好きなんだから仕方無い。
もう一度俯いてしまった顔を、耳のところを挟んで
持って仰向かせる。
「清寿。お前は弱くなってなんかない」
むしろ俺の方が臆病になってんだなって判ったよ。。。

濡れた瞳に誘われるように、唇を重ねた。


―End―



強いから出会えて、
強いから共に居られる。
失いたくないのなら
強くないといけない。
それって大変なこと。。
08/11/26Wed.


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