01. 「だったら妬かせんじゃねぇよ」*R-18*


「おかえり」
「た。。。ただいま」
服を着たままベッドの上に寝転んで、書類か何かを
見ていた笑太君が、ちらっ、とだけこっちに視線を遣
って、元に戻した。
「今日も来れたんだ?」
電気が点いているのが外から見えたから、居るのは
知ってた。
「飯は?」
語尾を強めて、上げる喋り方。
「食べてきちゃった」
上着を脱いで、ベッドの足元にあるクローゼットの中
に掛ける。
「ふぅん」
怒ってる。。。
背中に感じる視線が、痛いよ。
「笑太君食べてないの?何か作ろうか?」
「腹減ってないから、いい」
「そ、そう」
気まずい。
この次に何を訊かれるか分かるから他の話題を振り
たいけど、何も思い付かない。
―― 誰と、食ってきたんだ?
ランチにはひとりで行っても、夕食はひとりじゃいかない
って分かってるから。。。
絶対、そう訊かれるって確信がある。
何気なく見えるような素振りでキッチンまで移動する。
「清寿」
水を飲もうとしたら呼ばれて、ぎくっ、とする。
「何、食って来たんだ?」
どう答えよう。。。でも嘘はマズイな。
笑太君鋭いから、見抜かれる気がする。
「イタリアン」
まだ料理の香りが残っていそうで、鼻先をシャツの袖
にくっつけて、こっそり嗅いでみる。
微かなニンニクとオリーブオイルの香り以外は。。。
他の香りは移っていない。
「美味かった?」
あれ?。。。なんか笑太君感じがいつもと違う?
「うん。美味しかった」
コップに水を注いでごくごく飲んで、ついでに口を漱ぐ。
感触は残っていても、物的証拠は何も残っていない。
「清寿」
「何?」
「こっち来いよ」
やっぱり怒ってる。。。よね?
「。。。うん」
ベッドの所までゆっくりと歩いて行って、端に腰掛ける。
書類を持ったままの左手をぱたん、と窓の近くに下ろし、
右手を僕の背中に回してきた。
引き寄せられるのに応えるように、身体を屈めて、唇を
重ねる。
背中から肩を包むように握った手が、首から、髪を絡め
取るようにして後頭部を包むように動いていく。
弾む息が吹き込まれて、頬が火照る。
「ふ。。。っ、あ。。。笑太く。。。んっ」
笑太君の顔の輪郭を両手でなぞり上げて、柔らかくて
細い髪を掻き乱す。
「我慢、出来ない?して欲しい?」
意地悪く口角だけ上げて笑った口元に、甘く淡い吐息
を返す。
「ん。。。お願い」


「だったら妬かせんじゃねぇよ」


抗う間もなく身体を引っくり返され、組み敷かれていた。
「誰と飯食いに行ったかなんて訊かねぇよ」
首や鎖骨の上を食むように、唇が動いていく。
「お前、昨日誕生日だったんだし、あいつに祝って貰った
んだなって、どんなに鈍くたって分かるだろ」
一番感じるところに、唇が触れた。
「あ。。。や。。。っ」
びくっ、と身体が跳ねる。
「ここ、いいんだよな?」
「ふっ。。。う。。。あ。。。あっ。。。」
謝ろうとしても、頭が真っ白に飛びそうになっていて、
言葉が出てこない。
「お前のことは、俺が一番知ってんだよ」
笑太君の熱が、中に、入ってきた。
「。。。俺が一番、知ってたいんだよ。。。」
そんな風に僕のこと、想ってくれてるんだ。。。
「ご。。。めん。。。笑太君」
時間が無くて、急いで食事した以外。。。キス以外は
何もしてないんだよ、って。。。
そんな余分な事はどうでもいいよね。


―End―



後で「腹へった。。」とか
云い出しそう。。
08/10/19Sun.


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