28. 明日会えばきっと



「式部隊長、大丈夫でしたか?」
「ああ、多分。とりあえず寝かせてきた」

清寿が居ないと、なんか暗い。
俺も用事や話題が無ければ自分から振って
まで喋る方じゃないし、羽沙希は基本的に
無表情で無口だ。


朝、清寿が出勤して来なかった。

欠勤の連絡も無いというから几帳面な清寿
にしては絶対におかしいと思って目の部屋へ
行ってみたら、自室のベッドの横で蹲っている
姿が見えた。
戦闘の痕跡も、出血している様子も無い。
顔色も良くて、ただ眠っているだけに見える。
けど、この眠っているだけ、というのがおかしい。
不眠症の清寿がこんな時間まで起きれずに、
あんな所で眠りこけているなんて。
柏原に頼んで監視カメラに録画された映像
をチェックして貰うと、薬を飲んでいる姿が映
っていた。
薬はいつもの睡眠薬で、まず1回飲んで、
数時間後にもう1度飲んでいた。
「自殺って感じではないね」
さらっ、と、柏原が、嫌な可能性を否定する。
「眠れないのがツラくてまた飲んじゃった、って
とこかな?」
清寿とは昨日、喧嘩をした。
厳密には喧嘩では無い。
そこまで行ってない。
不機嫌にさせて、泣きそうな顔で走り去られた。
そのせい。。。かな。
現場に向かう前に頼み込んで、清寿の部屋
に寄らせてもらった。
本当は制服のまま一般人や隊員の住居に
立ち入るのは禁止だが、そんなこと云っては
いられない。
ベッドに寝かし付けて、氷を含ませてやって、
やっと俺も安心した。


「ただいま」

本日の任務を片付けて、清寿の部屋へ行く。
ずっと寝ていたようで、起きていた気配が無い。
枕元に腰掛けて、寝かせた時のままの姿勢で
居る清寿の頬を突付く。
「ん。。。」
眉間に皺を寄せて短く唸った後、うっすらと目
が開いた。

「笑太君。。。弱い僕は嫌い?」

云い終えて寂しげな微笑を浮かべて、再び目
を閉じ、微かに寝息を立てた。

「強いから好きになったんじゃねぇよ」

強いからこそ共に第一としていられるけれど、
むしろ脆いところがあるのが気になって、
自分の中にあるのと同質の弱さと辛さと憎しみ
が清寿の中にもあるのを知って、惹かれた。
俺達は本質的に似てる、と柏原や五十嵐に
云われる。
似てるから好きになったんじゃない。
外見が綺麗だから、でもない。
強いとか弱いとかは論外。
それだけじゃ、抱けない。

明日会えばきっと、
清寿は微笑むのだろう。
悩みや迷いを胸の内に押し込んで隠して。

「吐き出してみろよ。この中にあるもの全部」
静かに上下する胸の辺りに毛布の上から触れ、
もう片方の手で、自分の胸に触れる。
上手く言葉にならない想いや感情も、これで
お互い伝わり合うというなら楽なのに、と思う。

今日は眠れなさそうだ。
久しぶりにアロワナと語り明かすしかないか。


―つづく



愛されていることに
自信が持て無いのは、
幼少期に愛情が
欠落したせい。。
という設定。
08/10/13Mon.


Back