19. そう思ってくれていい


そう思ってくれていい。
お前がそう思っていたいなら。


「新人かぁ。。。」
なんとなく漏れた呟きに、俺の隣で膝を抱えて
座っていた清寿がすかさず反応する。
「嫌?」
くすくす、と、肩を軽く竦めて笑いながら云う。
「嫌じゃねぇけど。。。ウザってぇ」
「笑太君らしい」
法務省の中庭の芝生の上に寝転がって見上
げると、優しい笑みの向こうに、真っ青な空が
広がっていた。
「成績優秀でなんかスゲェ奴らしいんだけどさ」
空が眩しいフリをして、目を閉じる。
「へぇ!そうなんだ」
清寿の言葉の、語尾が踊っている。
入隊4年目にして初めて部下を持つことになる
から、楽しみなのかもしれない。
「まぁそうだよね。養成所卒業後直ぐに第一に
入隊なんて、大抜擢だもん」
俺だってお前だってそうだろ?
分かっていて云ってんだろうから、あえて口には
出さないでおく。
「どんなコだろうね」
目を瞑っていても、ゴキゲンでにこにこしている
表情(かお)が見えるような弾んだ声。
近いな、と思って瞼を開くと、真上に清寿の顔
があった。
「。。。髪、伸びたな。。。」
ドキッとしたのは見られてしまっただろうから、
何気に話題を逸らしてみる。
「うん。来月の総会終わったら切るけど」
手を伸ばし、顔の横の髪を指先に絡める。
清寿は俺を見下ろして、柔らかく笑った。
「切っちゃうのか」
「え。。。イヤ?」
小首を傾げて問われると、答えに詰まる。
「イヤってんじゃねぇけど。。。」
嬉しげに目を細めて、腰を浮かせて急に顔を
近付けてきた。
「な。。。っ!」
毛先が俺の顔に触れそうになる。
「わ、せ、せいじゅっ!?」
全身を使って逃れようとしたら、両肩の上を
手で押さえられて阻止された。
足も膝で押さえ付けて、身動きが取れない。
処刑の時だってこんなに動揺しない。

こんなに。。。ドキドキしない。。。

「ふふっ」
鼻の先に、息がかかった。
反射的に固く閉じてしまった瞼を、開けてみる。
「笑太君、スキ有りっ!」
得意気に笑っている顔を見て、力が抜けた。
「清寿ぅ〜お前さぁ。。。」
「油断してくれた時しか勝てないんだもん」

ああ。。。こいつはこういうヤツだった。
昨日久々に戦闘訓練をしに行って、俺に一度
も勝てなかったのが相当悔しかったんだな。。。

「部下なんか出来るとメンドクセーぞ」
「僕のことも最初はそう思ってたんでしょ?」
あはは!と笑って、さらっと云う。
「僕より扱い易いコだといいね!」
「確かにな。。。」
清寿の身体が俺の上から退いて、横に並んで
寝転がり、ぐーっと手足を伸ばす。
「ず〜っと2人でやっていくのかな?なんて思って
たんだけど、やっぱり違ったね」
清寿が独り言みたいに呟いた。
「嫌だった?」
上を見ていた瞳だけが、俺の方を見る。
「ううん。組んだのが笑太君で良かった」

ドキッ、と、した。

それを見透かしたように笑われても、何故かムカ
つかなかった。
「買いかぶんなよ」
「違うって。笑太君のこと、信頼してるんだよ」

空に向かって微笑んだ綺麗な横顔から、
しばらく目が離せなかった。


―つづく



ここら辺から
一気に進展。。

と、云いつつ、
とりあえずあと1話で
一区切り。。
08/09/20Sat.


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