11. 今、何考えてる?


今。。。
「何考えてる?」

珍しく固くなっているようだ。
顔色が良く無いのはそのせいか。
噛み締めるように強く閉じた唇が青白く見える。
「何って。。。」
云いかけて、コクッ、と軽くノドが鳴る。
ぎこちない微笑みも、唾を飲み込むと同時に消えてし
まった。
「最初の時より緊張するな、と思って」
整った顔立ちはこういう時ほど近寄り難く見せるけど、
本心はその逆だと、慣れてきたら解ってきた。
「ふぅん。そういうもんか?」
耳にかかったさらさらの髪を掻き上げて、唇を寄せる。
「深呼吸して、力抜いて」
「うん。分かってるよ笑太君。けど。。。」
俺の二の腕を軽く押して除けるようにした清寿の手の、
指が細かく震えていた。
「けど?」
「いい。云ってもきっと分かってもらえないから」
俺の顔を見ようとしない。
「らしくねぇなぁ」
顔を横に振って、視線を合わせようとしない。
「。。。そんなに僕の事分かってくれてないでしょ」

負けず嫌いで気が強い。
誰にでも愛想良く笑っている瞳の中に、
笑っていないお前が居る。

「そうでもないと思うケドな」

自分に関わって欲しくないから笑って他人を遠ざけて
いるクセに、ひとりは嫌だと云って泣いた式部清寿が、
ここに居る。

「僕だって緊張する時があるんだからね」
俺の腕を掴んでいた指先に、力が籠もる。
「初めてじゃないんだから、緊張なんかする必要ねぇよ」
反論しようとして大きく開いた口を、手で覆って黙らせる。
「次だ。出るぞ」
手のひらの中で開いていた唇が、ゆっくりと閉じた。

『部隊番号一 継続 隊長 御子柴 笑太』

呼ばれた瞬間、俺の腕を掴んでいた指から力が抜けて、
滑り降りるように離れていった。
今度は逆にこっちからその手を掴み、引っ張る様にして
前に出る。

『隊員 式部 清寿』

「大丈夫だろ?」
軽く振り返って肩越しに覗き見る。
「う、うん」
清寿はしっかりした足取りで後ろを着いてきていた。
「今年も第一なんだから自信持てって。俺の挨拶の後
が副隊長の任命式になるからな」
清寿は上目遣いに、俺の横顔を睨んだ。
「だから〜」
視線を前に戻し、はぁ、と深く息を吐いて肩を落とす。
「そのせいで緊張してるんだって」
俺はてっきり、他人にじろじろ見られながら歩かなきゃ
いけないのが嫌なのかと思ってた。。。
「僕なんかが副隊長になっていいのかって、そっちが
心配で」
大真面目な顔で云うから、可笑しくて仕方ない。
「笑太君。。。顔、歪んでるよ」
こんな俺でも一応は総隊長なんだから、年に一度の
特刑隊員選抜会のお披露目の席で大笑いするワケ
にはいかない。
「今更何云ってんだ、清寿」
清寿の笑みの形の唇の端が、きゅっと強張った。
他人から見たら分からない、微妙な変化。

「約束しただろ?」

視線が、やっと合った。
「ずっと傍に居てやるから」
大きく見開かれた瞳が、笑みを忘れて俺を凝視して
いる。
「お前は俺の傍に居ろ」
歩くのを忘れそうになった清寿の腰を軽く押し、前へ
と促す。
「清寿。。。泣くな」
「こんな皆が見てる前じゃ泣けない。。。泣かないよ」

俯いて帽子のツバで隠そうとしている半泣きの顔が、
真横に居る俺からだけは見えていた。


―つづく



清寿が副隊長に
なったのっていつ頃?
入隊2年目くらいには
なってたかな??
と、いう。。
捏造設定で
もどかしい恋のお題
2クール目の10題は
進めていこうかと
思ってます。。
08/08/17Sun.


Back