―Sympathize Day at Aug.17―


「あぢぃ」
「ホント暑いね〜」
「へぇ、お前でも暑いとか思うんだ?」
「だってこの暑さ変でしょ。ね、羽沙希君?」
「あ、はい」
「。。。本当にそう思ってんのかぁ?」
「絡まないの、笑太君!余計暑苦しいから」
「暑苦しい。。。」
「僕ちょっとバテてるみたいだから、今日はひとりで帰る」
「あぁ、はいはい。。。って、えっ?!」
それ、そんな風に微笑みながらいう台詞じゃないだろ。
危うく聞き流すところだった。
「お先に失礼します」
「待って羽沙希君!笑太君、また明日」
「待て清寿。。。!」

更衣室のドアが、ぱたん、と閉じて、静けさが落ちてきた。

お互いケガは多いけど、身体は丈夫で体力も有るから、
捜査や待機が長引くと状況によってはバテる時はあって
も、夏バテなんてしたことがない。と、思ってた。
「清寿でもバテんのか。。。」
任務中は相変わらず汗ひとつ掻いてないような涼しげな
顔をしていたし、昼飯だって普通の量を普通に食べてたし、
朝だっていつも通りに俺より先に起きてコーヒー淹れて朝食
も作ってくれて一緒に食べてた。
着替えを終えて外に出てもまた明るいくらい今日の任務は
早く片付いたし、バテてるようには見えなかった。
「あっつぅ。。。」
夕方だっていうのに陽射しが強くて皮膚が痛い。

――夏はキライじゃないよ。だって。。。

昨日眠りに落ちる直前に聞いた言葉の続きが思いだせない。
裸の胸の上にあった、清寿の体温と息遣いは覚えているのに。
あんな風にやんわりとでも、泊まりに来なくていい、と云われた
のが初めてで、ちょっとショックを受けてるのかもしれない。
「はぁぁ」
深呼吸の代わりにわざと大きく溜め息をついて、徐々に暗くな
ってきた路をとろとろと歩いて帰った。

寝付きも目覚めもサイアク。
今日もまた朝から猛暑だった。

「清寿、体調は?」
「体調?」
「バテてんだろ?」
「ああ!心配してくれてたんだ?」
「いや、だって、お前がバテてるなんて云うの聞いたの初めて
だったから、さ」
「そりゃあ毎晩だったらバテるよ」
「へ?」
「笑太君、これ以上云わせる気?」
「。。。申し訳ない」
羽沙希が出勤してきて、会話はそこで中断された。
にこにこしながら羽沙希に声を掛けている清寿は元気そうで、
顔色も悪くない。
けど、バテてると云うのなら、本当にバテているんだろう。
しかも俺のせいで。。。
「でも、笑太君、今夜は絶対に来てね」
「絶対に。。。かよ?」
「そう、絶対に。約束だから」
本日の任務の内容を聞きに部長室へ行く為に更衣室を
出ようとした時、すれ違い際に耳元で清寿に囁かれた。
そのまますたすたと羽沙希の腕を掴んで歩いて行ってしまった
ので、理由を質す暇も無かった。
「。。。ったく」
気まぐれはいつものこと。
他のヤツには愛想が良くてしっかり者に見せてんのに、俺や
羽沙希には遠慮が無い。

「笑太君、何?」
「ん?」
「今日一日、僕のことばかり見てなかった?何?」
「。。。別に。見てねぇし」
「ふぅん、そう?気のせいだったかな」
「バテてそうには見えないな、って」
「ははっ。やっぱり見てたんじゃない」
「報告の後三上さんとちょっと話があるから、先に帰ってて」
「。。。うん。了解」
法務省に戻ってきて、部長室で任務完了報告をした後、
俺だけが部長室に残った。
「なんだ、御子柴?」
「いいや。別になんでもない」
三上さんと話があるというのは口実で、清寿と別々に帰り
たかっただけだ。
五十嵐も交えてどうでもいい話をして場を濁して、数分後
に更衣室に行った時には、もう誰も居なかった。


「おかえりなさい。遅かったね」
「いい匂いがする」
「今日は笑太君の好きなものばかりだよ。お腹空いてるで
しょ?先にごはんでいいよね」
「その前に。。。」
頭を後ろから掴むように手を広げて当てて引き寄せると、
抗う素振りも無く身体が擦り寄ってきた。
何度も角度を変えて唇を重ねているうちに、清寿の息が
上がってきた。
「はぁっ。。。やだっ、笑太君。がっつかないで。。。」
「これ」
「。。。?何??」
清寿は目の前に差し出された袋を受け取って中を見て、
目を丸くした。
「苺!」
「あんま昼食べて無かったし、バテててもこれなら食えるかと
思って」
「こんな真夏に。。。高かったでしょ?」
「まぁな」
でも、清寿の笑顔が見れるなら高くない。
そう思ったけど、それはあえて口には出さないでおく。
「あれ?苺、好きだったよな?」
喜んでくれると思ったのに、瞳が潤んで泣き出しそうな顔
になっている。
頬を舐めて唇を求めると、ちゃんとくちづけが返ってきた。
「苺好きなのは自分でしょ」
腕からするっと擦り抜けて、キッチンに行ってしまった。
「清寿、どうした。。。」
ぱちん、と部屋の電気が消えた。
ゆらり、と柔らかい光が揺れながら、近付いてきた。

「一日早いけど。。。笑太君、お誕生日おめでとう」

苺が沢山乗ったケーキに灯されたロウソクの光の向こうで、
清寿が微笑んでいた。
「!。。。」

――夏はキライじゃないよ。だって笑太君の誕生日があるから。

今、思い出した。
一昨日の夜、清寿はそう云ったんだ。
もうすぐだからお祝いしなきゃね、と。

「また自分の誕生日忘れてたんでしょう?」
自分の事なんかどうでもいいと思ってるから。。。
「その様子じゃ去年、来年のお誕生日には苺のケーキがいいって
云ってたのも全然覚えてなかったみたいだね」
一年前そんな話をしていたことも全く覚えてない。
「そんなの。。。良く覚えてんな」
「覚えてるよ。笑太君とのことならどんなに細かい事でも」
両手で持ったケーキを見ながら、清寿は微笑んだ。
「笑太君のことだからフツーの苺のショートケーキがいい
かなってあちこち探したんだけどなかなか見付からなくて、
結局昨日作ったんだ。どう?美味しそうでしょ?」
「じゃあバテてるから来ないでって云うのは。。。」
「ごめん、ウソ。これ作らなきゃいけなかったから。。。」
テーブルの上にケーキを置いて、俺の顔を見上げて云う。
「ロウソク、吹き消して」
息を溜めて吐き出す前に、ケーキの一番真ん中に乗って
いた苺を一粒抓み上げる。
「清寿、口開けて」
不思議そうな表情(かお)で、清寿が大きく口を開けた。
「閉じて」
先がこちらに向くようにして、ヘタの部分を咥えさせる。
「?」
「まだ食うなよ」
ロウソクの炎を一気に吹き消して横に立っていた清寿の腰
を抱き寄せ、唇を寄せて咥えさせた苺に歯を立てる。
半分噛み千切って飲み下し、残った部分を押し入れるよう
にして清寿の口の中へ侵入し、蹂躙する。
ぐちゅっ、と熟れた苺が潰れて、粒々した種の感触が絡ませ
あった舌先に残る。
「。。。酸っぱいな」
「ホントだ。。。酸っぱい」
目を合わせて笑い、落ち着いたところでくちづけを交わした
後、顎から首筋に唇を滑らせる。

「プレゼントは今年もお前なんだろう?」
「それにケーキと苺!」
「苺は俺からお前にだから違うだろ?」
「あとで一緒に食べようよ。笑太君が買ってきてくれた方
が甘そうだから」

清寿が両手のひらで、俺の頬を挟むように持った。

「おめでとう笑太君。もっとずっと、一緒に居ようね」

この時貰った微笑みとくちづけが、一番嬉しい贈り物だった。


―The end―






P.S.
Happy Birthday to
御子柴笑太☆

11111Hit記念に
苺の話をっ!という
ススムさんのリクに
お応えして。。
遅くなってしまって
すみません。
こんな感じで。。
お許しをっ
m(_ _)m
08/08/10Sun.


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