[01] Monday 本日は晴天なり


「あ〜っ!濡れたっ」
僕の後ろから法務省の職員出入口に駆け込んできた
笑太君が、わんこみたいに頭をぶるぶる振った。
「わっ!」
差して来た傘を閉じて傘立てに立てようとしていた
ところだったから避ける間が無くて、飛んできた水飛沫
をまともにくらってしまった。
「あっ。。。と。悪ぃ」
片目を瞑って片手を顔の前に立てて笑ってみせて、
それで許してもらうつもりらしい。
「おはよ。びっちょびちょだね、笑太君」
まぁ、仕方ないかって。許しちゃうけど。
「はよ〜」
ニカッと笑った笑太君の前髪からぽたぽた垂れている
雫を、ハンカチを出して拭き取ってあげる。
「傘は?」
そう訊いた僕の手からハンカチを取り上げて、頭全体
を拭きながら大股で歩き出す。
「うちを出る時はあんま降ってなかったんだ」
どんどん行ってしまう後ろ姿を、早足で追い駆ける。
「“傘ちゃんと持ってって!”とか云われなかったの?」
突然立ち止った背中にまともに顔から突っ込みそう
になって、寸でのところの立ち止れた。
「清寿お前さぁ。。。どっかで聞いてたんじゃねぇの?」
ぎょっとしたような表情(かお)が肩越しに覗いた。
「あははっ!そんなに似てた?」
大きな溜め息をついてから、笑太君が口を尖らす。
「そっくりすぎて、心臓止まった」
笑ってみせたけど。。。嬉しくはないなぁ。
「今日一日雨だって」
話題を、逸らしてみる。
「帰りも?」
歩く速度を緩めてくれたから、追い付いて横に並ぶ。
「夜の方が強く降るって、天気予報で云ってたよ」
軽く顔を見上げて、頷きながら答える。
「もし止まなかったら置き傘あるから貸してあげるね」
笑太君はびしょびしょになってしまったハンカチで髪を
拭き続けながら、不思議そうに僕を見下ろした。
「いや、その必要は無ぇな」
その表情(かお)はどういう意味。。。?
「帰りはお前の傘に入ってくからいい」
当たり前の事のように云って、歩みを速めた。
「。。。それって途中まで?それともうちまで?」
目の前を行く大きな背中に、問い掛ける。
バクバクしている心臓を両手で押さえつけて、答えが
返ってくるまでの数秒の間に心の中で祈る。
お願いっ。
生憎の天気で憂鬱な気分が吹き飛んでしまうような
返事が貰えますように!
「お前んちまでに決まってんだろ」
振り返って微笑んだ、真っ青な瞳。

雨が降り続いていても、僕の青空はここに在る。

「笑太君と相合傘。。。っ!」
頬が火照って熱くて熱くて、手のひらでパタパタと扇ぐ。
「初めてじゃ無ぇし。改めて云うほどのコトかよ?」
苦笑する笑太君の、首から上も真っ赤になった。
「。。。帰りにまだ雨が降ってたら、な」
後ろに伸ばされてきた手に手を重ね、こっそりと指を
絡めて更衣室までの廊下を歩いた。


―End―



最初の一週間の始まりは
付き合ったばかりみたいな
照れ臭いような話から。。
09/05/31Sun.


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