04:太陽のオレンジ


真夏の外での処刑はキツい。
飛散した血や臓腑がすぐに腐臭を放ち出す。
処理班が来るまで現場を保持するのも処刑部隊の役目
で、日影が近くに無い場合、炎天下に曝され続けること
もある。

「暑〜い!」

太陽に手を翳して、式部が苦しそうに呟いた。
「へぇ。お前でも暑いなんて感じんの?」
いつもよりもだらしなくシャツの前をはだけさせた御子柴が
そう云うと、少し前を歩いていた式部は立ち止まって不満
気な表情(かお)で振り返った。
「何?その云い方。それじゃまるで僕が冷血人間みたい
じゃない」
ははっ、と笑った御子柴が、悪戯っぽい目付きで式部を
見た。
「違うのかよ?汗、全然掻いてねぇし」
汗だくの御子柴に対して、式部は汗をほとんど掻いてい
ないように見えた。
つ、と伸ばした指先が、式部の頬をさらりと撫でる。
「冷てぇな」
ひやりとした感触を楽しむように、御子柴は手のひらで
式部の頬を覆った。
「止めて。熱い」
軽く手で払われたが気にした様子も無く、式部の制服
の前もきちんと締めてシャツもネクタイもぴしっと着ている
姿を上から下までじろじろとに眺めて、御子柴は溜め息
をついた。
「ホントに暑くねぇの?」
式部はその言葉に、困ったように笑い返した。
「だから。。。暑いって云ってるでしょ?」
その笑みさえ涼しげで、御子柴は、今度は式部の顎に
手を添えるようにして触れた。
抵抗が無かったので顎を軽く持ち上げて、顔を上に向か
せる。
「やっぱ冷たい」
困惑したような笑みが、その顔に浮かんだ。
御子柴がこんな風に式部に触れるのは、初めてだった。
「。。。!?」
首筋を伝って下りてきた手が、襟と肌の隙間に滑りこむ。
咄嗟にその手首を掴んだ式部の指が、一瞬御子柴の皮膚
に食い込みそうになるほどキツく握られ、すぐに弛んだ。
下を向いて髪で顔は見えなくなったが、呼吸が浅く、吐息
のように変わる。
「ダメだよ」
サラサラだった肌が、しっとりと汗ばむ。
「暑くて、眩暈がする。。。気分悪い。。。」
腕にかかった息が灼けるように熱を帯びていて、御子柴は
はっ、として手を離した。
「すまない。。。」
式部は俯いたまま、両腕で自分の身体を抱き締めていた。
「あなたに触れられるとおかしくなりそうになる。だからお願い。
触らないで。。。」
オレンジ色の陽の光が、凍えたように細かく体を震わせてい
る式部と、それをどうしたらいいのか分からないという表情で
見下ろしている御子柴に、燦々と、降り注いでいた。


End.



真夏の話。。

清寿が入隊してまもない頃
シリーズです(笑
ツラい過去を持つ清寿が、
その後の成長過程で
他者を拒み、
他人に触れられる事に
慣れていない。。
という設定で。


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