01:雲の白


清寿が俺に隠し事をしている。

組んで3年。
能力的には申し分ない。
気まぐれで分かりづらい所も多々あるが、基本的
には俺を立ててくれるから、仕事の上ではやりやす
い相手ではある。
けれどどうも他人との距離を測るのが下手な様で、
そればかりはここ3年間変わっていない感じがする。
「清寿」
「な、なに?」
何でそんなに驚いてんだ?
お昼過ぎの社食はガラガラに空いていて、慌てて
食べる必要なんか全然無いのに、ヤケに焦ってん
のはなんでなんだよ。
「こぼしてんぞ、ホラ。何慌ててんだ?」
「う。。。うん。ちょっと行きたい所があって。。。」
制服の胸元についた米粒を指先で抓み取ってやる
と恥ずかしそうに頬を赤くして、その表情を隠そうと
するように俯いた。
「どこに?」
「。。。」
その上目遣いはどういう意味だ?
切り揃えた前髪の間から困惑したような瞳が、俺の
顔色を伺うように覗いている。
「えっとね。。。笑太君には関係ないとこ」
「ふぅん。。。」
それって何つーか、面白くない。
けどそれ以上問い質されるのがイヤだったみたいで、
俯いたまま口を真横に一直線に結んで、まだ食べ
かけだったのに箸を揃えて置いてしまって、イスが
倒れるんじゃないかぐらいに勢い良く立ち上がり、
「時間までには戻ってくるからっ!」
そう云い捨てて、食器が乗ったトレイを掴み、ぱた
ぱたぱたーっと駆けて行きやがった。
全く。。。ワケ分かんねぇ。
ここ数日、省内で休憩が取れる時はそわそわ落ち
着かなくて、気が付くと居なくなっている。
携帯で呼び出せばすぐに戻ってくるから、外には
出てないようだが。
一日外での任務の時は、戻りが遅くなってしまうと
急に黙り込んじまって、どこにも行かずに俺と一緒
に行動している。
どこにどんな秘密があるっていうんだ?
省内に何かあるのなら、こっちには奥の手がある。
「本人に直接訊けばいいのに〜」
メンドクサそうにそう云いながらも、柏原が入手して
くれた監視カメラの映像から、大体どこら辺に行って
いるかは割り出してある。
「。。。ったく」
溜め息を付きながら立ち上がり、数分遅れて清寿
の後を追う。
中庭の裏手のどこか。
そこが、清寿が最近毎日行っている所。
俺には関係無い、と云う、秘密の場所。
そんな風に隠すから、気になってしょうがないじゃ
ねぇか。。。

土と雑草を踏む足音に気付いて、植え込みの横
でしゃがみこんでいた清寿がびくっ、とこちらを見た。
「何してんだ清。。。?」
口の前に人差し指を立てて押し当てて、しっ!
。。。と云う声はしなかったがそんな感じで、両目
を固くつぶっている。
静かに!大きな声出さないでっ!
唇の動きがそう云っていたから、足音を殺すように
し横へ行って腰を屈め、清寿が指差す先を見る。
視界の斜め上。法務省の建物の軒先を。
「。。。ツバメ。。。か?」
「うん、この前雛が孵ったばかりなんだ」
にっこりと微笑みながら答えた清寿を、呆れた顔で
見返す。
「これがお前の秘密だったのか。。。もっと深刻なこと
だったらどうしようかと思って心配してたのに」
「っ?!。。。ごめんなさい」
思わず出してしまいそうになった大きな声を抑えて、
俺がここに来た意味を悟って清寿は項垂れた。
「だって。。。また“まだガキだよなぁ”って呆れられそう
な気がして。。。云えなかったんだ」
「バーカ。云わねぇってそんな事」
こういうとこ、組んだ時から全然変わってなさ過ぎる。
「隠し事すんなって、一体何回云わせる気なんだよ」

ぐしゃぐしゃっと、手で頭を掴むように撫でてやりながら
見上げた東都の空は晴れていて。。。
青い空に浮かんだ白い雲がやけに印象的だった。


End.



まだ第一が2人の頃の話。。

もともとは季節もののところに
UPしようと思っていたので。。
ショートショートじゃなくて
すみませんっm(_ _)m


Back