09:とまらない欲望


独占したい。束縛したい。
キレイ事なんか云っていられない
とまらない欲望。。。


ぼんやりと、窓の外を眺めていた。
この部屋で時々夜を過ごすようになって大分経つ
から室内の景色は見慣れたような気がするけれど、
ベッドが窓の真下にあるから窓の外の景色は見上
げて見ることが多くて、こうやって水槽の横に置いた
イスに座ってしみじみ眺めると新鮮な感じがした。
「八重桜。。。だったのか」
声に出して呟いてみる。
窓の横の方から張り出すように伸びてきている枝が
今まで何の木の枝かなんて、考えたこと無かった。
ずっしりと重量感がある、ピンク色の花で作った球
みたいな花が沢山咲いていて、それを見て初めて
その枝が八重桜の木であることを知った。
この部屋の住人――清寿はその事に気付いてい
るんだろうか?
俺が最初にここに招かれて来たのは、清寿が前の
住居で人形狩りに襲われた後引越してきてすぐ、
くらいの頃で、まだ咲く前だったとは思うがこの花を
見た記憶は無い。
ベッドの上の、穏やかな寝息に合わせて上下して
いる清寿の肩の線に視線を遣る。
窓の外には暗い夜の空が広がっていて、散り始めた
八重桜の濃い色の花びらが、眠る清寿の上に舞い
落ちているような、そんな幻覚を見る。

「。。。にしてもさぁ。。。」
呟きが、愚痴になる。

随分長い間、ここへは来れなかった。
清寿はその間ひとりだったハズで、大丈夫だよ、と
いつもの様に云ってはいたけど、目の下の隈が消え
ないのが気になっていた。
今朝、今日はお前んとこ行けるから、と告げた時、
久しぶりに本物の笑顔が見れた。
申し訳無さと安堵と、邪な期待。
一緒に帰ってきて飯作って貰って食べて、先に入っ
てていいよというから風呂に入ったけれどどうも落ち
着かなかったから、長風呂もせずに早めに上がって
きてみたら。。。
清寿は服を着たままベッドの上で眠っていた。
「。。。おーい。まだ寝るには早いだろ〜が」
顔を突付いても髪を撫でてもくちづけをしても何も
反応しないくらい熟睡していて、しょうがないので服
を脱がせてやった。
なされるがままになっている清寿に欲情を覚えなが
らも最後の一枚だけは理性で残して布団を掛けて
やりながら、
「俺って結構忍耐強いよな。。。」
と、自分を褒めながら水槽の横にイスを持ってきて、
距離を置いてクールダウン。

安心させてやりたい。優しくしてやりたい。
けど、傷付けてでも自分だけのものにしたい。

深い信頼感と、牡の本能的な欲求。
背中合わせの激しい葛藤。
“何をされても笑太君の事嫌いになんかならないよ”
愛し合っている途中でいつも囁いてくれるそんな言葉
と甘い息遣いが繰り返し幻聴みたいに聴こえてきて、
それと必死に闘いながら、外の八重桜の花に意識を
逃がす。

一服して、アロワナに餌をやって、深呼吸をひとつして
から、清寿と同じ布団の下に潜り込む。
腕の中に閉じ込めるように抱き寄せると頭が胸元に
擦り寄ってきて、身体の内に秘めた欲望がとろ火の
ように心を焦がす。
「ずっと眠れてなかったみたいだし。。。な」
深く吸った息を腹の底から吐き出して、溜まってしまっ
た熱を逃がす。
そして清寿の頭を抱え込むようにして、目を閉じた。

八重桜の花びらが淡く光りながら俺達の上に降り
積もっていくという、夢とも幻ともつかぬものを見続
けて、起こされたら、朝、だった。


―Hallucinosis―



“10:誰よりもあなたが”の話と
対になる話です。
こういうひとりでぐるぐるしてる
ヘタレな笑太君がツボ
なんですよ(笑

季節ものなんですが、
あっちにUPするには短くて、
ショートショートと呼ぶには
長い。。という、
中途半端な作品に
なっちゃいましたが
とりあえずこちらへ(汗


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