―SA・KU・RA・2


「清寿」

部長室から更衣室に戻ってくるなり、笑太君が僕の
名前を呼んだ。
着替えている途中だったから、なんだろう?と思って
振り返った途端に強く抱き寄せられた。
腋の下から丸まっている背中へと腕を回して、あやす
ように叩いてあげる。
「ホラ、あんなに強がるから。。。」
襟元から手を差し入れて左肩の古傷の上を優しく
撫でると、笑太君は僕の耳朶を甘く食んだ。
「どうしても泣かせる気かよ。。。」
竦めた首筋に、鼻が擦り寄せられる。
「泣いていいって」
咽喉元に噛み付いてきた唇が、鎖骨の上を強く吸う。
「っから。。。泣けねぇって」
外しかけていたネクタイを解かれ、シャツの胸元をはだ
けるように唇が落ちてきた。
「監視カメラに背中向けてれば泣き顔は僕にしか見え
ないから」
息が上がる。身体が火照る。
冷静に、冷静に、と、自分に云い聞かせても、どうして
も声が上擦ってしまう。
笑太君は前髪で表情を隠して、唇を重ねてきた。
角度を変えて重ねあう毎に深くなるくちづけに溺れさせ
られてしまう前に、云わされるのではなく、自分から云っ
てあげたい言葉がある。

「僕はどんな笑太君でも受け止めてあげられるよ」

舌を絡め取られ、甘い息を注ぎ込まれる。
赤茶色の柔らかい髪に指を梳き入れて掻き上げ、瞼
の間に浮かんできた涙を指で拭き取ってあげる。
背筋を辿って指が下りてきた時には既に僕の身体は
蕩けていて、雫を零していた前を探られ強く緩く弄られ
ると膝が崩れそうになった。
ぐらついた片脚を掬うように持ち上げられて、筋肉が
盛り上がる肩にしがみ付き、身を委ねる。
「。。。っ」
先端をあてがわれただけで、心まで灼けるように熱く
なった。
「あぁ。。。はぁっ。。。あ。。。」
呼吸と合わせるようにして進んできた滾る塊に奥まで
掻き回されて、堪えきれずに声を上げそうになったら、
唇を唇で塞がれた。
衝かれ揺すられ、唇が離れそうになる度に求め返され
て、先に僕が達して、笑太君が中で欲望を放った。

「笑太くんっ、愛してる。。。っ」

注ぎこまれるものの熱さにうなされるように、笑太君の
耳元で何度も同じ言葉を呟き続けていた。

抱き下ろされるような感じで、繋がったままずるずると
床に倒れこむ。
顔を覗き込むようにして横からくちづけてきた笑太君が、
治まらない熱の余韻を残して淡く染まっている僕の頬
を親指の腹でこすりながら、ふわっと笑った。

「桜の花びらの色だ」

綺麗って云ってるつもりかな?
恥ずかしくて、でも嬉しい。
頬に触れていた指を握り締めて、唇を擦り寄せる。
「お前が傍に居てくれるから、俺は泣かないで済む」
ええっ!?それって。。。それって!!
「我慢させちゃうってこと?」
笑太君は咽喉を鳴らして面白そうに笑いながら、ぐちゃ
ぐちゃと髪を掻き混ぜるみたいに僕の頭を撫で回した。
「違う違う。その逆」
意味が分からなくてきょとんとしていたら、何かに気付い
たように急に笑太君の表情が固くなった。
「ところで。。。羽沙希は?」
今更?と思うと可笑しくて、大笑いしてしまった。
「お見舞い行くからって。とっくに帰ったよ」
それを聞いて笑太君は、口元のホクロを持ち上げるよう
にして、にやっ、と笑った。
「じゃ、もう一回大丈夫?」
腰を持ち直され強く引き寄せられて、慌ててしがみつく。
「だめだめ!誰か来ちゃうっ」
「誰が来ても関係ねぇよ」
「やだ、やだっ、恥ずかしいってばっ」
「どうせ監視カメラに写っちゃってるし、恥ずかしいことなん
かもうねぇだろ?」
上を向かされるようにして、唇を塞がれた。
こういう時の笑太君は僕の云うことなんて聞いてくれない。
僕が絶対に折れる一言、を知っているから敵わない。

「愛してるよ、清寿」

早く桜の時期が過ぎることを願いながら、舌で胸を愛撫
し始めていた笑太君の頭を上から、ぎゅっ、と抱き締めた。


―The end―






P.S.
花月すばる様に捧ぐ。。

<SA・KU・RA・1>の続編。

ここのところず〜っと
桜の話ばかり書いて
おりまして。。
(こっちの話はそんなに
桜に関係なくなっちゃい
ましたが。。汗)
桜大好きなんで
非常に楽しいです。
ついでに5巻を何回
読み返したことか(笑
08/04/09wed


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