07:耳から麻酔を


腕の中では、子供みたいに身体を丸めて清寿が
眠っていた。
ゆるやかに上下する肩と、軽やかに続く寝息。
枕の代わりにされている腕を引き寄せるようにして
頬を摺り寄せる。
無意識に頬を擦り返されて、髪に鼻を埋める。
寝顔を見られるのは苦手だと云って、以前は身体
を離すとすぐに寝返りをうってこちらに背を向けてし
まった。
少し前から、果てて終わって眠ってしまった後に向き
を変えようとする身体を抱き止めて、無理矢理それ
を阻止していたら、この頃は向かい合ったままの格好
で眠ってくれるようになった。

こんな小さなことが、嬉しかったりする。

上になった腕を、腰に回す。
「んっ。。。」
発せられた短い唸り声と、微かな体動。
もっと温もりを求めるかのように擦り寄ってきた体温が
愛しくて、腕の中から逃さないように抱き留めると歯止
めが利かなくなった。
顔のパーツのひとつひとつを、輪郭の端から端までを、
首筋のすっと伸びたラインを、唇で啄む。
鎖骨を辿って中央の窪みにくちづけを落とし、胸元を
くすぐるように舌先で舐める。
「眠れないの、笑太君?」
ハッキリした口調で問われて、固まった。
「。。。お前、いつから起きてた?。。。」
眠っていたのを起こされた時の、ぼんやりと甘ったれた
喋り方じゃない。
「頭をぎゅ〜ってされたとこから」
「そんな前からかよ?!」
頭を腕で抱きかかえられてしまったので見上げることが
出来ないけれど、真っ赤に紅潮した顔を見られたくな
いからその方がいい。
「起きないとでも思ってたの?」
そっちの方がびっくりだよ、と、声を上げて笑いながら、
掌で頬を包み込むように持たれて上を向かされた。
「笑太君、大好き」
俺がしたのと全く同じ順番で顔の全部に触れ終わった
後の唇が、耳元に甘い囁きを注ぐ。

たったこれだけの短い言葉。
それが俺に麻酔をかける。

「。。。」
「いいよ、我慢しなくても」
これだけ密着していれば、正直に反応し始めた身体を
隠そうという方が無理だろう。
「笑太君が眠れるまで付き合ってあげる」
大胆な言葉とはうらはらに頬を染めた照れ臭そうな笑顔
がまた、俺を痺れさせる。

理性を失ったように朝まで求め続けてしまったのは、絶対
に俺だけのせいじゃないって。。。

腰が怠くて起き上がれないという清寿を抱き起こしてやり
ながら、心の中で云い訳をした。


―justification―



清寿にめろめろな
笑太をどうぞ(笑


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