―06:廻


絶対に失くしてはいけないものを、失くしてしまった。。。

笑太君が出勤してくるより前に出勤して、自分のロッカー、
昨日着ていた制服、更衣室、他にも思い当たるところを
探したけれど見付からなくて、しかも昨日打ち合わせして
いた集合時間に少し遅れてしまって、ドアをちょっとだけ開
けておずおずと諜報課1班の部屋を覗き込んだら。。。
笑太君の姿だけ見え無かった。
何してんの?と柏原班長に訊かれたから、笑太君は?って
訊き返したら、わざわざ声音を真似て教えてくれた。
「また、“笑ちゃんは今日休みます!”だって」
時間になっても出勤してこない笑太君の携帯に羽沙希君
が電話を掛けたら、蓮井警視が出てそう云って切ってしまっ
たという。
ありがとう、タマちゃん!
心の中で感謝する。あくまで“今日限定の”感謝だけどね。
「式部隊長、僕は昨日の打ち合わせ通り捜査に出ます」
羽沙希君が出て行った後、部屋の中を挙動不審気味に
うろうろする。
「副隊長。。。何してるんですか?」
部屋に居る全員が僕の行動に注目していたことに、声を掛
けられるまで全く気付かなかった。
そのくらい集中して探してたのにここにも無さそう。
「落し物しちゃって。。。」
与えられた猶予は今日1日。
どうしても見付けなくちゃいけない探し物。
どんなもの?と訊かれて、詳細を説明する。
どこら辺で落としたの?には、全く覚えていないと答える。
情報収集のプロ達に協力してもらっても、昨日現場の床に
落ちてたのを処理班の人が拾って、その人が別の人に渡し
て、その人が誰かに渡して。。。って、結局最後に受け取っ
たのは誰か?までは追跡出来ず。
どうしよう。もう謝るしかないのかな。。。

「式部隊長、お探しの物のことですが。。。」
全く眠れずに一夜を過ごして翌朝出勤した僕の顔を見た
途端に、羽沙希君が云い出した。
「どこにあるか知ってるの?!」
「はい。多分」
即答した羽沙希君の肩を、がしっ、と掴む。
「それ、なんで昨日教えてくれなかったの!?」
「その話をされた時、僕、捜査に出てませんでしたか?」
ああ。。。そうだったかも。
「で?どこにあるの?」
羽沙希君が口を開きかけた時、彼の背後にあった更衣室の
ドアが開いた。
「はよ〜。昨日はすまなかったな」
これって間が悪過ぎるよ。。。
「笑太君っ、ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!」
「。。。なんだ?いきなり謝られたってワケ分かんねぇって」
「あのっ、僕ね。。。」
「それよりさ、清寿、ほれ」
笑太君はポケットから取り出した何かを、僕に向かって投げて
寄越した。
両方の手のひらで挟むように受け止めてから開いて見て、一瞬
頭の中が真っ白になる。
「現場に落ちてたっていうのを預かってたんだよ」
そう、これ!昨日からずっと探していた。。。
笑太君から初めて貰った大事な大事なもの。
「あは。。。貰い直しちゃった」
「笑うとこじゃないだろ。もう落とすなよ」
廻り廻って笑太君から僕のところに戻ってくるなんて。。。
これって縁があるってこと、だよね?


End.



“笑太君に初めて貰ったもの”は
<Seasonal Stories>の
『Everything You』という話を
ご参照ください。。

この話は、
本日(3/16)イベントの
お手伝いをしてくださった
うさこ様に捧げます。。


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