―Pale Pink Confetti 2/2―


「ねぇ総隊長、素朴な疑問なんだけどさぁ。。。」
コイツがこういう表情(かお)をして、こんな感じで切り出し
てきた時は要注意だ。
何を云い出すか予測が出来ない。
「総隊長は副隊長に何かあげんの?」
「はぁ?」
予想通り、ワケの分からない事を云い出した。
「何かって何だよ?」
柏原は外人みたいに両手を身体の横に広げて上げて、
わざとらしい溜め息をついた。
「その感じじゃ〜何にも考えてなさそうだね」
「意味分かんねぇよ」
くるくるっと目を大きく開いて、あ〜あこれだから!という
表情をした。
「ホワイトディ。バレンタインにチョコ、貰ったんでしょ?」
「あ〜。。。」
「毎年貰ってんじゃないの?もしかしてお返しとかした
ことないの?」
「う〜ん。。。したことないなぁ」
「もしかして誰にもお返ししたことないの?!」
「いや。いつも清寿が準備してくれて、自分のと一緒に
配って歩いてくれてるから。。。」
握った拳で口元を隠すようにして、柏原は忍び笑いを
漏らした。
「最低なオトコだね、アンタ」
「。。。悪かったな」
ぷ〜っ!と柏原が盛大に吹き出して笑った。
「そういうの苦手なんだって」
笑い過ぎて滲んできた涙を手の甲で拭いながら、柏原
が云う。
「アンタが苦手でも、副隊長は毎年待ってんじゃない?」
「。。。あいつはそういうこと云わないからな。。。」
「絶対に待ってたって!」
そんなもんかぁ?
「で?今年はどうすんの?」
どうにかしないとだめなもんなのかな。。。
清寿の欲しいものなんて思い付かない。
多分何をやっても喜ぶんだろうと思う。
「それ、甘えすぎじゃないの?そんなんじゃそのうち愛想
つかされるよ」
そんなの分かってる。お前に云われるまでも無い。
考えても埒が開かなかったんで、柏原の居ないところで
直接清寿に訊いてみた。
「今本当にして欲しいことって何?」
それに対して清寿から出された課題は3つ。
ひとつめは、次の非番の日に一緒に居て欲しい。
ふたつめは、出来ればその前夜から一緒だと嬉しい。
みっつめは。。。
「簡単なことだよ」
清寿は目を細めてくすくす笑いながら、そう付け加えた。
「次の非番の日って。。。?」
しょうがないなぁって表情(かお)をしても、それでも清寿
は笑っていた。
「15日」
「う〜ん。。。」
「ホワイトディの次の日、だよ!」
念を押すようにそう云って、楽しそうな笑みを浮かべて
いた。

「試されてんのかなぁ。。。俺」

形の良い肩甲骨が浮き出た背中に向かって呟く。
こんな朝早く、急に目が覚めてしまった。
気になっていることがあって、最近熟睡出来ない。
少し近付いて毛布を引き上げてやりながら、首筋に、
流れる髪を唇で掻き分ける。
そこから肩甲骨のラインまで唇でなぞり、手を腰から
腹側へ滑らせる。
「ん。。。」
もう片方の腕を身体の下から回し、臍の上で組むよう
にして背中をぎゅっと抱き締める。
清寿は短く唸って身じろぎしただけで、起きる気配は
無い。
こうなって最初の頃は、寝ていると思っても近付いた
だけですぐに跳ね起きた。
緊張感と殺意を全身に漲らせてすぐにも飛びかかれ
そうな体勢を取って睨んでから、なぁんだ、という表情
をして見せて、気を失うように腕の中に落ちてきた。
何度それで驚かされたことか。
そして次の日、全く覚えてないのにも驚いた。
他人に触れられるのに慣れていない獣みたいだった
清寿は、今ではすっかり俺に心も身体も許してくれて
いるように見えるけれど。。。
それがひとりよがりではないかと時々心配になる。
求めても求めても、どんな要求をしても応えようとし
てくれる清寿は、俺にはあまり求めてこない。
もっと求めてこいよ。
そう云ってやる度に、くたくたに疲れ切るまで抱かれ
ればぐっすり眠れるからそれだけでいいんだ、と、訊い
たこっちの方が照れるような笑顔が返ってくる。
何をしても嬉しそうで、何もしてやらなくても一緒に
居てくれるだけで嬉しい、と笑う。
一番にして欲しいことは叶わないと知っているから、
口には出さない。
他のことはどうでもいいことばかりだから。。。と云う。
わがままを云うことに慣れていないこういうタイプは
今まで周りにいなかったから、却って扱いが難しい。
耳朶を唇で挟むように甘く噛む。
清寿は頬を摺り寄せてくるような動きを数回した後、
身体を伏せるようにして背中を丸めた。
舌先を尖らせて、耳の中を舐る。
「んっ、やだ。くすぐったい」
枕に顔を擦り付けるようにして、もっとうつ伏せた格好
になった。
「こっち向けよ」
「ん。。。」
寝返りをうってこちらを向いた数十秒後、規則正しい
寝息が再開した。
今日は3月14日。
タイムリミットが来たっていうのに、清寿から課せられた
課題が解けない。
任務中は忘れていても、ふとした時、清寿が視界に
入ると思い出してしまう。
ずっとずっと考えてきたけれど、答えを見付けることが
出来なかった。
「“僕がして欲しいと思ってることを当てて”ってのは、
そもそも答えになってねぇじゃねぇか」
清寿のみっつめの課題はそれ。
ちゃんと自分で考えて!と云われてるって分かってる。
こんなに考えても分からないってことは、お前のことが
分かってないから。。。なんだろうか。
唇に軽くキスをする。
何回も繰り返しているうちに緩んできた口元から、舌を
忍びこませる。
その舌を誘(いざな)うように、清寿の唇が動く。
ちゅっ、ちゅっ、と吸うのは反射的なもののようで、清寿
は子供みたいな顔をしている。
「起きねぇのかよ」
「ん〜。。。眠い。。。」
すぅっ。
寝息が立つ。また眠っちまったようだ。
まぁいいか。。。
どうせ明日は一日一緒に居る約束だったしな。
肩に乗っている清寿の頭を片手で抱いて、互いの鼻の
先がくっ付くくらいに近付いて、目を閉じる。

して欲しいことは思い付かなくても、愛して欲しいという
気持ちを満たしてやることは多分出来る。
それじゃダメか?

間近にあった唇にもう一度キスをしたら、甘い吐息が返
ってきた。


               ―The end―






正解。。
清寿にとってそれは
有って無きが如きもの。
笑太君が居てくれればいいの♪
あたり?
寝ている清寿を見ながら
悶々としてる笑太
という設定が
何気にお気に入り(笑
08/03/14


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