―04:光


「目、開く?」

両頬を手のひらで挟むように持たれて、両方の目
の端を指先で、とんとん、と叩かれた。
「ん。。。うっ、う゛〜っ」
「痛いか?」
「痛いっていうか。。。滲みるっていうか。。。開ける
と涙がぶわ〜っと出てきて、開けてらんない」
はぁぁ。。。
大きな溜め息が聞こえて、顔に息が掛かった。
「あ〜あ、白眼んとこ真っ赤っかじゃねぇか。。。」
「あなたはいつも言葉が足りないんだ。。。」
一生懸命目を開けていようとすればする程、涙
が出てくる。
「言葉が足りないも何も、説明してる余裕なんて
無かっただろうが」
先刻からしきりに目の下を擦ってくれているのは、
流れた涙を拭き取ってくれているんだろうな。。。
「来るなって云ってんのに突っ込んで来やがって」
危ないっ!って思ったら勝手に身体が動いてて、
来るなっ!と叫ばれた時にはもう引けない状態
だったんだもん。そんな風に云わなくたって。。。
心の中だけでブツブツ言い返していたら、段々
落ち込んできた。
「清寿、見えてんのか?」
処刑からあまり時間が経っていないとするならば
まだ昼間で、明るく見えなくちゃおかしいのに。
「見えてない。。。真っ暗」
吐息が掛かるほど近くにあるハズの顔も、全く見
えない。
「困ったな。。。」
聞き落としてしまいそうになったくらい、小さな声。
「お前の目がこのまま見えなくなっちゃったらどうし
よう。。。こんなでっかい瞳(め)なのに。。。」
僕に触れている指先が、微かに震えているのに
気付いた。
死刑囚が撒いたのが単なる催涙ガスなら、失明
する可能性は低い。
ただ他の毒ガスである場合、何とも云えない。
もし、目が見えなくなったら。。。
大嫌いな無限の夜の中で晴らすことの出来ない
憎しみを抱いたまま、生きていかなくてはならない
んだろうか。。。
「ふぇ。。。」
「バカ、泣くなよ。俺まで悲しくなる」
頬に御子柴隊長の頬が触れた途端、無性に悲
しくなって、首にしがみついて思いっきり泣いた。

「あ、見える!見えるようになった!!」

溢れ出して止まらない涙で歪んでいる視界の中
に、瞳の、青い色が見えた。
「かなり泣いたからな。目の表面に残ってたモンが
流れたんだろ」
乱反射して眩しい光の中に、冷静な口調とはうら
はらに優しく微笑んでいる顔が見えてきて、嬉しくて、
また涙が出てきた。


End.



清寿がまだ
「笑太君」と呼ぶのを
躊躇していた頃。。
笑太20歳、清寿19歳
くらい、という設定。
まだ青い2人の話
ってことで(笑


Back