―02:髪


「。。。!式部隊長っ」
藤堂にしては珍しく動揺したような声に、現場を後に
してバンに向かって歩いていた面々は振り返った。
「焦げてます」
「え?」
「ん?。。。わっ!!」
「あ〜あ。。。」
藤堂が指を伸ばして触れた先。。。式部の背中に長
く垂らした髪の先が、横幅数cmに渡って焦げていた。
その毛先を示されて、絶句したのは式部で、横から見
て驚きの声を上げたのは御子柴で、やっちゃたねぇ〜!
という表情(かお)をしたのは柏原だった。
「ホントだぁ」
茶色く縮れたようになった髪を扱くように弄って、式部
が溜め息混じりに云う。
「あんな至近距離で撃つから。。。」
「あ〜悪かったな!けどあん時撃ってなかったら、清寿、
お前ヤバかったんだぞ」
ヤケクソ気味に云い捨てて、御子柴は再び歩き出す。
「うん、分かってるよ。ありがと、笑太君」
後を追って歩きながらも、式部の表情は沈んでいた。
「でもさ副隊長、最近髪、伸ばしてたんでしょ?」
柏原が、式部の顔色を見ながら口を挟む。
「まぁ。。。そうなんだけど」
ちらっと背後を伺った御子柴の、前髪の間から覗いた
申し訳無さそうな表情も、柏原は見逃さない。
「どうすんの?」
わざと煽るように云って、横目で御子柴を観察する。
「仕方ないよね。後で切り揃えてもらいに行く」
「悪かったな!」
素直に謝らないのが可笑しくて、柏原は背中を丸めて
式部の影に隠れ、くすくすと笑った。
「ねぇ笑太君。悪かったと思うなら僕のお願い聞いて」
自分に向けられた予想外の綺麗な笑みにたじろいだ
御子柴に式部がした依頼は、予想の域を越えていた。
「えぇ?!」

「うわぁ。。。」
「。。。ガタガタですね」
藤堂と柏原は呆然と、その光景を見守っていた。
「っさい!だから無理だって云っただろ?」
バンの床に広げられた紙の上に、短く切られた髪の毛
が散っていく。
「こいつの髪、つるつる滑って切りづらいんだぞっ!」
焦げたところだけでいいから髪切って!と、いう式部の
願いは、そこだけでは済まずに大変な事になっていた。
「いいの。揃えて貰いに行くにしたってこのままじゃ怪し
まれちゃうでしょ?」
「確かにこの焼け方は普通ないとは思うけどさ。。。」
柏原が聞こえよがしに大きな溜め息をつく。
「いいんだって。僕には見えないんだから」
苦りきった表情で躊躇いがちに鋏を使う御子柴とは
対照的に、式部だけが満足気に笑っていた。


End.



素直じゃない笑太を翻弄する
素直すぎる清寿の話?(笑


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