―Pale Pink Confetti 2/1


「なぁ、清寿――」
「え?」

笑太君の質問は唐突で、つい笑ってしまった。
「笑うとこじゃないって。本気で答えろよ」
真剣な顔で云ってるから、多分大真面目なんだろうけど。
「本気で、って云われてもさ」
ベッドの上に仰向けで寝転がり、反るようにして顔だけ
こちらに向けていた笑太君の横に座る。
夕飯を食べ終わって僕が後片付けをしている間、ベッド
で待っている時は、一緒にお風呂に入りたい時。
考え事をしていたり、したかったりする時は、さっさと先に
入ってゆっくり浸かっている。
今夜は僕に訊きたいことがあったようで、ごろごろしながら
話しているうちに、待っていたような感じになった。
「お風呂入る?」
僕の言葉に、笑太君は反動を付けて上半身を起こして、
片手で僕の頭を抱き寄せた。
「な、真面目に考えて」
何度も角度を変えて結び合ううちにくちづけがどんどん
深くなり、舌を吸い絡ませあって息が上がる。
「真面目にって云われたって。。。」
熱い余韻を残して離れていく唇を追うようにして、唇の横
のホクロにくちづけを返す。
「難しいことでもいいの?」
そのお返しのように、笑太君の舌がぺろっ、と、飲み込み
きれなかった唾液で濡れていた僕の頬を舐めた。
「いつも結構溜めてんじゃねぇの?」
お返しのお返しに、ぎゅっと頚に抱きついて、肩に額を押し
当てる。
「う〜ん」
「無いってことはねぇだろ?」
「う、う〜〜ん。。。」
神経質な指が、髪を梳く様に撫でている。
頬を擦り寄せてくちづけをねだると、すぐに気付いて笑みを
見せた。
「ほら、そうやって、さ」
強く長く唇を吸われて、呼吸が出来ずにぼ〜っとしてきた。
「絶対にあるハズだから。考えとけよ」
それって宿題?
訊き返す余裕も無く、求められるままに抱かれてくたくたに
なって、その夜は笑太君の腕の中で眠ってしまった。


それから毎日、笑太君は同じ事を訊いてくる。

その度に答えに窮する僕を見て、少しだけ困ったような顔
をした。
「お前さ、俺に遠慮してんのか?」
瞬間、息が止まる。
「してない。本当に思い付かないだけだもん」
眩暈がする程強く、頭を左右に振り切る。
「たまにはわがまま云っていいって」
くらくらしてしまった僕の身体を支えてくれて、背中を一回
すっと撫で下ろしながら、笑太君は軽く笑った。
「ん〜。。。わがままかぁ。。。」
普段から結構云ってる気がするけれど、まだ足りないって
ことなのかな。。。
「僕、いつも自分勝手してるでしょ?」
呆れたような表情で僕の顔を見て、今度は本気で笑い
出した。
「して無いだろ」
「そうかなぁ。。。」
「お前のはマイペースって云うか、天然?」
「そ、そう??」
天然って云われたのは初めてだ。これでもしっかりしてる方
だと思っていたのに。
「そこが俺と正反対で、だからこうやって長く組んでやって
いけてるんだと思う」
多分、笑太君的には精一杯褒めてくれているんだと思うけ
ど。。。ちょっと複雑。
「お前が答えてくれないと俺が困るんだよ。返事、明日まで
に考えといて」
頭の中がぐるぐるで、目を丸くしたまま立ち竦んでしまった僕
に、笑太君はクックック、と忍び笑いを漏らしながらそう云って、
柏原班長の居る方へ行ってしまった。
「う〜ん、う〜ん。。。」
「どうしたんですか?式部隊長」
羽沙希君に無邪気な顔で覗き込まれても、相談出来ること
じゃない。
「笑太君にね、課題もらってんの」
「課題?」
「うん。良く分からないんだけどね、宿題」
眉間に縦ジワを寄せた顔のままでそう答えたら、羽沙希君の
眉間にも縦ジワが寄った。
「ホラ、そこの2人!何見詰め合って唸ってんの?」
2人で向かい合って、腕を前に組んでうんうん唸っていたら
柏原班長から声が掛かり、現場に着いたと告げられて、その
話題はそこで一旦途切れた。


笑太君の質問は、簡単なことだろ、と云うけれど、僕にとっては
簡単じゃない。

そういうところが無神経だって思う。
夜、抱かれていてもそのことばかり考えていて、行為に集中出来
ずにいた。
「笑太君、ズルい」
「はぁ?」
笑太君は律動を止めて、僕の前髪を掻きあげた。
している時僕の目は潤んでいて、笑太君がそれに弱いと知って
いるから。
「何だよ?」
目尻から流れた涙を指で拭き取って、不安そうな表情をした。
「“今して欲しいことって何?”だなんて意地が悪い」
ああ、と短く呟いて、唇が降りてきた。
僕が一番して欲しいことは、笑太君が僕だけのものになってくれる
こと。
でもそれが無理だっていうことは、笑太君だって知っている。
顔を横に向けて、頬にくちづけを受ける。
「何で急にそんなこと云い出したのか、ワケ分かんないよ」
汗ばんだ首筋に、湿った舌と尖った歯の感触が遊ぶ。
「で、思い付いた?」
「あのさ〜笑太君、僕の話、聞いてる?」
聞いてる聞いてる、なんて云いながら、鎖骨に沿って唇を滑らせて
いる。
「も〜っ、笑太君。。。」
「だってお前さ、欲しいものは無いって云うし、あげれば何でも喜ぶし、
俺がすること大概許してくれちゃうし。どうされたら一番嬉しいんだろ
う?って思ってさ」
真面目な顔で答えられて、余計訳が分からなくなった。

「。。。何の話?」
「ホワイトディの話」

笑い出しそうになりながら下から指を伸ばして、笑太君の頬から左肩
までを撫でた。
「なぁんだ」
今度はちゃんと、唇で唇を受け止める。
「何で、なぁんだ、なんだよ」
笑太君は口を尖らせて僕の顔を両手で押えると、額と額をこつん、と
当ててきた。
「もっと深刻に考えちゃった」
あはは、と笑いながら、不思議そうな表情の唇を掬い上げるようにして
くちづけた。

「笑太君、僕のして欲しいことはね――」
「。。。ぇえ?」


「なんか今日、総隊長大人しくない?」
翌日、こっそりと柏原班長が耳打ちしてきた。
「そう?いつもと変わらないと思うけど」
肩を竦めて、可笑しそうに笑いながら返す。
眉を顰めて真剣な表情で笑太君が考えているのは僕からの課題。
「どうしたんですか?御子柴隊長?」
そう尋ねた羽沙希君も一緒になって唸り出したけれど、答えは笑太君
にしか見付けられない。

ホワイトディまであと数日。

どんな答えが返ってくるのか楽しみで、勝手に笑みが零れてしまう。
「なんか嬉しそうだね?」
柏原班長が知りたそうにしているけれど、それはその日までの僕にも
分からないから教えてあげられないんだ。


                 ―To be continued―






P.S.
たまには清寿にもわがままを
云わせてあげようかな。。
と、思って書いた話。
ホワイトディですしね。
当サイト1周年記念日の
作品です♪
そして後編に続きます。。

タイトルの“Confetti”は
金平糖のイメージで。
(こんぺいとうの語源は
ポルトガル語です)
08/03/06


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