―an Especial Day Oct.29―


思い掛けないこと、というのは、この人達と組んでから
もう数え切れないほどあって、これ以上驚くことは無い、
と、いつもいつも思うのだけれど。。。

「お疲れさん」
ぽんぽんっ。
「お疲れ様!羽沙希君」
ぽんっ。
上司2人はすぐに僕の頭を叩きたがる。
“叩く”といっても、軽く“はたく”、という感じなんだけど。
新人だから年齢的にも一番若いし、実力も一番下で、
背も一番低いから仕方ない、と、諦めてはいるけれど、
それでも時々悔しいな、と思う時だってある。
愛情を感じない訳ではない。
何かあると御子柴隊長はすぐに頭をぐりぐりしたがるし、
式部隊長は微笑みながら優しく撫でてくれる。
仕事が仕事だから人間らしい触れ合いが大切なんだ
よ、と、2人して笑うから、まぁいいか、と思ってしまうけ
れど。。。いつまで子供扱いされるのかな?
今日だからこそ、そんな風に考えてしまった。
ぽんっ!
「ど〜した、羽沙希?口、尖ってんぞ?」
「ホントだ!どうしたの?何かあった??」
頭の上に乗っかったままの大きな手の平を退けようとし
てもがく僕の顔を、間近から式部隊長が覗き込む。
顎に両手を当てて、にっこりと微笑みながら。
「えっ。。。!いいえ。。。別に」
「別に、って顔じゃないだろ?何考えてた?」
頭をがっちり掴まれて、身動き出来なくされてしまった。
「笑太君!それじゃあ可哀想だよ。。。羽沙希君の口、
“バッテン”になっちゃってるってば」
自分の口の前で指をバツ印に組んで見せ、式部隊長
が御子柴隊長を上目遣いに見上げて責めているけれ
ど、どう見ても目が笑ってる。。。
「でもさ、これで身柄確保は無事成功だろ?」
御子柴隊長の得意気な顔を横目で見て、はぁぁ、と、
いつもみたいに式部隊長が溜め息をつく。
「ってことにしてあげよう。僕は基本的に実力行使ってい
うのはキライなんだけどね」
。。。?
「ねぇ、羽沙希君、今晩何か予定入ってる?」
僕の視線と同じ高さに視線を合わせ、もう一度にっこり
と、極上の微笑みが投げかけられる。
そもそも大した予定なんて無い。
例え予定が入っていたとしても、この笑顔には抗えない。
御子柴隊長だって未だに無理だって云うんだから、僕に
なんて到底無理だ。
「え。。。っ、いいえ。弟のところにお見舞いに行く以外は
特にありません。。。けど」
「あ、そっか。じゃ僕達も一緒にお見舞いに行っていい?」
云われた事の真意を量りかねていたら、ふっ、と、頭を押
さえ込んでいた力が抜けた。
「そうか。そうだな。花でも買って。。。」
「うん。行く途中で花屋さん、あるよね?」
えええっ!?
「本気で来る気なんですか?!」
動揺する僕の顔を見返して、2人して大真面目な顔で
同時に頷いたので驚いた。
けど、本当に驚いたのは次に2人が云った言葉、だった。
「だってさ、羽沙希君、今日お誕生日だよ」
「おめでとう!やっと大人だな」
「羽沙希君、双子なんでしょ?なら弟さんにもおめでとう、
しなきゃ」
「もう頭ぐりぐりも気軽にゃ出来ないなぁ〜!」
優しく笑っている式部隊長の顔も、照れてしまっている
御子柴隊長の顔も、なんだか急に歪んで見えて。。。
「わっ!羽沙希、何泣いてんだよ?」
「やだなぁ。。。ごめんね。びっくりしちゃった?」
2つの手が、僕の頭を撫でる。
「でもね、一度はちゃんとご挨拶しとこうね、って笑太君
とも話してたんだ。羽沙希君の命は僕達が責任持って
守りますから、って。でもなんか云い出す機会が無くて」
本当は泣きたくなんてないのに。。。泣き顔なんて見せ
たくないのに、2人の手が温かすぎて。。。
「迷惑だったら止めとくけど。。。嫌か?」
思いっきり頭を左右に振ると、ふわり、と軽くなった。
そして片方の肩に御子柴隊長の手が、反対側の頬に
式部隊長の手が、そっと触れてきた。
「じゃ行こう。でね、その後呑みに行こ。今日は笑太君
の奢りだって!」
え〜?!と不満そうな声を上げた御子柴隊長の顔が、
笑っている。
「酔っ払っちゃったら僕のうちに泊まればいいし」
僕の頬を撫で続けている式部隊長の顔も、笑っている。
「弟さんの分まで乾杯しようね」
一回深く頷いて、涙を拭いて顔を上げて笑ってみる。
安心したような笑みが返ってきて、またぐりぐりと頭を撫
で回された。
「よ〜し、今日は羽沙希君を潰しちゃうぞ〜!」
両手を上げて、ぐーっと伸び上がりながら冗談めかして
云った式部隊長を、ギクッとした顔で御子柴隊長が見
上げる。
「ヤバい。こいつマジで強いからな」
焦った口調でこそこそと僕の耳元で囁いていた御子柴
隊長の耳朶を引っ張って引き離し、式部隊長は悠然
と微笑んだ。
「イテテッ」
「なぁに?笑太君。何か云った?」
何も云ってねぇよ。。。と答えて、天下の総隊長は大き
な溜め息をついて、僕に向かってこっそり片目を瞑って
見せた。
第一で、いや、特刑で最強なのは副隊長だから、と、
五十嵐課長も柏原班長も諜報課1班のみんなも云う
けれど、それはきっと真実(ほんとう)で。。。
多分僕の誕生日を覚えていて今日のことを提案したの
は式部隊長で。。。そしてそれを見守ってくれているのが
御子柴隊長で。。。
2人して僕のこと、こんなに思ってくれている。

第一に配属になって本当に良かった。。。

今日初めて、心からそう実感した。
これからも驚かされることなんてまだまだいっぱいあるんだ
ろうけれど。。。
でも頑張って付いて行かなくちゃ。

そう思いながら、先に立って歩いていく2人の後を追い掛
けた。


―The end―






P.S.
Happy Birthday to 藤堂羽沙希♪

本編では最初から
羽沙希君にはツラい展開になると
予感させるネームが多くて。。
奏澄君の話なんかはありましたが、
まだ第一がほわほわしているうちに
優しい話を書いてあげたいな。。
と、思っていたら、
こんな話になりました。。
なんとかお誕生日に間に合ったかな?(汗


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