―Night likes the end of the World―


月の無い、静かな夜だった。
暗い空に星が散らばって輝いているのを、ぼんやりと見ていた。
眠れない夜。。。
式部はもう何度も寝返りを打っていた。
――― 笑太君が近くに居てくれるだけで眠れるのに。。。
少し前まではこれが普通だったのに、今日は寂しくて仕方なかった。
自分の身体を抱きしめて、出来るだけ小さくなってみる。
水槽の中を弾ける水泡の音だけが聞こえる中、目を閉じてみた。
そうしたら、なんとなく切ないような、悲しいような、そんな綺麗な夢を見た。。


「ねぇ笑ちゃん、この頃どこに外泊してくんの?」
唐突に発せられた蓮井の質問に、御子柴は一口啜ったばかりのコーヒーを吹き出しかけた。
「え?なんですか?」
御子柴の顔をじーっと凝視して、蓮井はふふふ!と、イジワルっぽく笑った。
「ばっくれようとしてもダメだよ〜!もうバレてるんだからね」
話すまで逃がさないよ〜という顔になって、蓮井は御子柴を問い詰めた。
「ねぇねぇ、カノジョ?カノジョ??カノジョ出来たの?」
好奇心で目をキラキラさせて返事を待つ蓮井に返す言葉が無くて、御子柴は黙り込んだ。
「ねぇねぇねぇねぇ!笑ちゃんってばぁ!なんで〜?なんでナイショなの??」
しつこく食い下がってくる蓮井に、御子柴は質問で返す。
「一体何の話ですか?」
ふふん!という感じで笑って、蓮井は得意そうに答えた。
「警視庁捜査一課の蓮井警視を舐めるなよ〜!」
それからぺろっと舌を出して、
「な〜んてね(笑)ホントは夜に時々着替えとか取りに来ることがあってさ、その時笑ちゃんが
居ない時が何回かあったから。。。」
そう云って、へへへ、と笑いながら頭を掻いた。
その笑顔につられて御子柴も笑ってしまった。
「だから、ね?笑ちゃん」
そのスキに蓮井は食いついた。
「どんなヒト?」
にこにこっ。
邪気の無い微笑みに、御子柴は後ろめたくなった。
――― 本当の事を云ったらどういうリアクションをするだろう?
一瞬そう思ったが、絶対に後で面倒臭いことになるという確信があったので、真実は告げないこと
にした。
「残念ながら彼女じゃありません。同僚です」
「法務省の?でも女性でしょ?」
「違います。男性です」
ウソではないし、と思いながら、御子柴はわざと無愛想に答えた。
「ええ〜っ!?なんでそんなウソ付くのさ?!」
「ウソって。。?」
蓮井の言葉に反応して、焦ったのが表情(かお)に出てしまった。
「だって笑ちゃん、お泊りの後いいニオイするもんっ!ねぇねぇ何で隠すの〜?」
――― そんなとこまで気付いてるとは侮れないな。一番の秘密がバレないように気をつけないと。。。
しつこく自分の腕を掴んで揺すり続ける子供の様な蓮井を見下ろしながら、御子柴は彼をちょっと
見直していた。
「もう寝ます」
申し訳ないな。。。と思いながら、御子柴はリビングのソファから立ち上がった。。
「えええ〜っ?!なんでなんで〜??」
腕にぶら下がる蓮井を振り切って、自分の部屋のドアを閉め、無理矢理開けることが出来ないよう
に背中で押さえた。
「ね〜なんで?怒っちゃったの笑ちゃん?恥ずかしいのは分かるケド」
ドア越しにどたどたしていた蓮井も諦めたようで、数分後には大人しくなった。
ぐすぐすと洟をすすりながら、向こうの部屋に入ってゆく足音を確認する。
ふぅ。。。
御子柴は深く溜息をついて、ベッドに身を投げ出した。
その振動でベッドに漣が起こり、広がって消えていった。
その後は静寂。静かな夜。。。
――― 清寿はちゃんと眠れてるかな?
式部の髪のニオイと肌の感触を思い出し、身体の中心が熱くなった。
その熱を冷ますように、もう一度深く溜息をついた。

好き、でもなく、愛してる、でもなく。
このままで居たいんだよ。。。それじゃダメかな?

この前の夜、式部に云われた言葉が蘇ってきた。
いつもの少し寂しげな微笑みで。すがるような、それでいてそれ以上踏み込まれるのを拒絶する
ような意思を感じさせる口調で。
その時訊くことの出来なかったその言葉の真意を考えながら、御子柴は目を閉じた。


夢を見た。
第一部隊の3人で、どこかに横たわって居るだけの夢だった。
水面のような、氷の上のような、寒色系の色彩。
そこに溶け込んでしまうように、白の制服を着た自分達が居て。。。
眠っているだけか、死んでいるのかは解らない。
ただひたすらに静謐な夢だった。


「その夢、僕も見たかも。。。」
制服に着替えながら式部が云った。
「不思議だね〜!何か意味あるのかな?」
くるんと瞳を動かして、式部は上目遣いに御子柴を見た。
考えているフリをして、御子柴は黙々と着替え続けた。
それは自分の心象風景で、もしかしたら自分が壊れ始めたのを象徴している夢のかもしれ
ない。。と御子柴は恐れていたが、式部も見たと云うのなら違うのだろう。
それとも共に壊れてきたのか?
合法的とは云え、自分達のしていることは殺人に違いない。
だからいつか何かのキッカケでコワレ始めてもオカシクは無い。。。
「まるで“世界最後の日”みたいな夢だったよね」
腕章の位置を直しながら、ぼそっと式部が呟くように云った。
その言葉は御子柴の背筋をゾクッとさせ、全身に鳥肌が立つのを感じた。
――― まるで“最期の日”のような?
確かにいつ何があってもおかしくない仕事だし。。。
もしも今日が最期の日だとしたら、その前に御子柴には確かめておきたいことがあった。
「清寿、あのさ、この前のあの言葉の意味なんだけど。。。」
何の?という感じで式部が目線を御子柴に遣った時、藤堂が出勤してきた。
話が途切れ、形にならなかった言葉が浮遊する。
「まぁいいや。後で」
そう誤魔化した御子柴は、2人と共に本日の任務の説明を聞く為に部長室へと向かった。


                   ― The end ―






P.S.
友人からリクのあった笑+タマ話込みのストーリィ物。
私が書くとこのくらいが限界(泣
この話の続き-Signs of Inevitable Conclusion-は
<Affair of Dolls>に置いてあります。
年齢制限引っ掛からない方は、
そちらも覗きに来てくださいませm(_ _)m


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