―07台所で


「夕飯、作っといて」
それが、先に帰って待っていて、という合図。

任務の関係で嫌なことがあってイライラしたり
怒ったりして帰ってきた日はすぐ分かる。
「おかえりなさい」
合鍵を持っているのにケータイを掛けてきて、
ドアが開くのを待っている。
「ただいま」
ちゅっ、と、唇で受け取った啄ばむようなキス
に驚いたように頚を竦めるといつも笑われる。
何かあった日は、この笑みが見られない。
「早かったね。もっと遅くなるかと思ってた」
総隊長の事務業務というのは、普通の隊長
クラスの者よりもずっと多くて、残務になること
も多い。
今日も、三上さんと話があるから、と、先に
帰された。
僕に出来るのは美味しいものを作って待って
いることだけ。
なのにまだ夕飯が出来上がってない。
「大した用件じゃなかったから割りとすぐ片付
いたんだけど面倒臭くってさ。疲れたよ」
いつもはベッドの上に背中からダイヴするみた
いに勢い良く横になるのに、今日はソファの方
へ、どさっ、と座った。
これは相当イヤな事があった日だけする仕草。
多分笑太君自身は自覚していない癖。
「ご飯食べられるまでもう少し時間かかりそう
なんだけど。待てる?何かつまむ?」
伸びをしながら大あくびをして涙ぐんだ青い目
が笑った。
「ん。いいよ。待てる」
うちのキッチンは対面式じゃなくて、調理中
はソファセットに居る人に背を向けてしまう。
「お腹空いてるよね?ごめん!」
キッチンでぱたぱたしている僕の後ろ姿を、
笑太君の視線が追っている。
最初はイラっとした感じが伝わってくるくらいに
尖っていた視線が、そのうちに和らいでくる。
その頃、振り返って微笑みかける。
目を細めた、優しい微笑みが返ってくる。
「キッチンに誰か居るって、落ち着くのな」
後ろから抱きついてきて、耳にキスしながら、
そんな生活したこと無い筈なのに、と、云う。
そこには踏み込んではいけない領域が在って、
触れることも癒してあげることも出来ない。
「台所に立つお母さんの記憶って、DNAに
刻まれて皆の中にあるんじゃない?」
頬に唇を寄せてきたり、鼻を鳴らして匂いを
嗅いだり。。。
「だから落ち着くんだよ、きっと」
甘えたいのは分かるけど危ないから、料理の
仕上げをするのにジャマな腕をどかす。
「清寿がおかんキャラだから落ち着くのかな?」
ふふ、と、笑って返す。
「ごはん出来たけど。要らないならいいや」
ごめんごめん!と謝る口元にキスを返して、
帰ってきた時に見られなかった分の笑みを
貰う。

僕だけが君を甘やかしてあげられる存在だった
らいいのに。。。


―光―



職場結婚で
料理上手の嫁をもらった
新婚3ヶ月くらい。。
っぽい話?(爆
それとも
料理上手の愛人宅に
入り浸ってる。。
っぽい話?(汗
タイトルは宇多田ヒカルの楽曲の
PVのイメージから。。


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