―As a Natural Consequence―
                     after "Symptomatic Therapy"


「寝ちゃったね」
「ああ。寝ちまったな」

ベッドの上では羽沙希君が眠っていて。
規則正しい寝息の他には、水槽の中で弾ける泡の音しか
聴こえない静かな夜。
僕は床に膝を立ててベッドの端に肘をついて、両手で顎を
支えるようにして羽沙希君の寝顔を見ていて。
「笑太君」
小さな声で呼びかけると、僕のすぐ横でベッドの端に寄りか
かるように床に座っていたひとが、ゆっくりとこっちを見た。
「今日はありがと」
そう云った僕を、優しい眼差しが包む。
「どういたしまして」
左の唇の下にあるホクロが、少しだけ持ち上がった。
なんとなく見詰めたままでいたら、ふわっと微笑まれた。
焦って、羽沙希君の顔を見るフリをして目を逸らす。

今日、僕は失敗をしてしまった。
任務中ではなくて、任務以外の時間に。
羽沙希君が落ち込んでいるみたいに見えたので声を掛けた
ら、軽くだけど拒絶されてしまった。
お節介だったかな?反省。
1人で待機室にいたら、三上部長のところへ任務完了報告
をしに行った笑太君が戻ってきて、
「何落ち込んでんの?」
と、いきなり云った。
なんで分かったんだろう?
いつも通りの笑顔で迎えたハズなのに。。。
何も答えなかったら何も云わずに出て行って、しばらくしたら
戻ってきて、「帰んぞ」と手を引っ張られて更衣室に連れてい
かれた。
羽沙希君と顔合わせるの気まずいな。。。と思っていたのに、
話の弾みで笑太君と一緒に羽沙希君もうちで夕飯を食べる
ことになった。
笑太君にまんまと乗せられたような気がする。。。
なんだか癪に触るけど、羽沙希君と自然に仲直り出来たのは
嬉しい。
いつもより張り切って夕飯を作り、それを皆で食べて終わっての
んびりお喋りしていたら、羽沙希君がうとうとしだした。
慌てて着ていたものを脱がせて僕のTシャツとショートパンツに
着替えさせ、笑太君が抱えるようにベッドの上に運んだら、まも
なくすやすやと寝入ってしまった。

「羨ましいなぁ。ホントにどこでも寝ちゃうんだもん」
独り言みたいに呟いてみたら、耳の後ろにふわっと息がかかり、
耳朶にちゅっ、と、キスされた。
顎を持たれて斜め後ろを向かされて、頬の上を笑太君の唇が、
なぞるように這う。
「止めて。羽沙希君が居るのに」
わざと音を立てるように激しく唇を吸われ、舌が絡められる。
湿った音が、やけに響いて聞こえるような気がして。
「ヤダって云ってるのに。恥ずかしいよ」
本当は嫌じゃない。でも恥ずかしいのは事実(ほんとう)。
顔が真っ赤になっているのが自分で分かる。
「なんかさ、俺とケンカした時だってあんなに落ち込まないのに。
。。なんか妬ける」
「意外。そんな風に見てたなんて」
真実(ほんとう)なんだか嘘なんだか。
さらりとそんな事を云われたけれど、目が笑っているから説得力
が無い。
「羽沙希には嫌われたくないから、だろ?」
真直ぐに僕を見ている空色の瞳から、視線を外す。
次の瞬間肩を持たれて、床の上に仰向けに押し倒された。
「止めてって。羽沙希君が起きちゃうよ。」
小さな声で抗議したけれど、聞こえてないかのように無視されて、
シャツのボタンが上から1つずつ外されてゆく。
「じゃあ声、出すなよ」
優しい口調。でも意地悪。
シャツの前を合わせるように押さえて抵抗すると、薄く笑いなが
ら僕を見下ろして云う。
「起きたら起きたで、本当の自分っての?見せちゃえば?そした
ら恥ずかしくなくなるだろ?」
笑太君の指が僕の中心を探り、勃ち上がりだしていた昂りを捉
えて先端を捏ねるよう弄る。
「。。。っ」
「いつもより興奮してない?身体は悦んでるみたいだけど?」
扇情的な言葉が囁かれ、茎が激しく扱かれる。
漏れ出しそうになる喘ぎ声を、両手を口に当てて必死に封じて
いたら、涙が滲み出してきた。
いつもはもっと優しいのに。わざと激しくしているみたい。。。
「ばかだなぁ笑太君。あ、バカじゃないか。心配性?苦労性?」
「ぁん?」
「何されたって笑太君の事嫌いにならないし、嫌われたくないっ
て思うような時期はもうとっくに過ぎちゃってるのに」
「っるさいな。ちょっと悔しかっただけだよ」
口元が綻んでしまった。
「喜ぶなって」
子供みたいに唇が尖った。その顔を見て笑ってしまう。
身体が、熱い。僕も、笑太君も。
触れ合っている所から蕩けてしまいそうなくらいになっている。
なのに笑太君の身体が僕から離れそうになった。
「止めないで、お願い」
引き止めるように手を伸ばす。
僕の指が肩に触れると、びくっ、と逞しい背中が揺れた。
「ずっとキスしてて。羽沙希君を起こさないように、僕の息も声も
飲み込んで。全部、笑太君だけのものにして」
頚に腕を絡めて、全身で縋りつくように抱きつく。
「本当の僕なんて、笑太君だけが知っててくれればいいんだよ」
「清寿」
溜息みたいな声で名を呼ばれると、ぞくっと身震いしてしまった。
唇を合わせると強く抱き締め返されて、融け合うようにひとつに
なった。。。

「おはようございます」
今日も晴れ。眩しい朝日が部屋に降り注ぐ。
「おはよ。はい、コーヒー。ミルクと砂糖、どうぞ」
自力で起きてきたけれど、羽沙希君はまだ寝惚け顔で。
キッチンと向かい合った位置にあるソファに腰掛けて、勧められる
ままにコーヒーを1口啜った。
「すみません。。。眠ってしまったんですね?」
「あんまり良く寝てたんで起こさなかったんだ。ごめん」
羽沙希君が頭を左右に振った。
「いいえ。こちらこそご迷惑おかけしました」
「迷惑じゃないよ。良く眠れた?」
答えが、躊躇ったように一瞬遅れた。
あれ?なんだろう、この不自然な間。
羽沙希君は真直ぐ僕を見詰め直してから、口を開いた。
「あの。。。式部隊長うなされてませんでしたか?」
どくん、と、鼓動が跳ねて、ノドの奥が急速に乾いてゆく。
「えっと。。。そんなことなかったと思うけど」
ひたすら誤魔化すしか方法はない。
「そうですが。。。夜中に式部隊長のうなされてる様な声が聞こ
えていたような気がしたんですが。。。さっき目が覚めたら隣に居
たのは御子柴隊長でしたし。気のせいかもしれないんですけど」
いくらうちのベッドは広いとはいえ、デカい男3人が並んで眠るに
はキツい。だから寝起きの悪い笑太君はベッドで、朝早く起きる
僕はソファで眠った。
「う〜ん。。。多分夢じゃない?そ、それよりシャワー使う?昨日
お風呂入ってないんだから。ね!」
納得いかないように小首を傾げている羽沙希君を急かすように
バスルームに押し込んで、ふぅ、と溜息をつく。
ふと見ると、ベッドの上の膨らみが小刻みに震えていた。
「。。。笑太君。起きてるの?」
近付いて覗き込んだら、笑太君は大きな身体を丸めて、声を殺し
て笑っていた。
「あれはうなされてる声じゃなくて、よがってる時の声だって教えて
やれば?」
笑いすぎ。それに冗談にしてもサイアク。
しかめっ面になってしまう。
と、突然下から片腕が伸びてきて僕の手首を捕らえた。
咄嗟にかわそうとしたけど間に合わなくて、引き寄せられて、ベッド
の上、笑太君の横に倒れこむ。
「朝から怒んなよ」
子供にするみたいに僕の髪を撫でている満足気な表情を見てい
たら、怒る気なんてなくなった。
呆れて笑ってしまったから、また僕の負け。
いつもこの男(ひと)には敵わない。
「笑太君、まだ寝惚けてるでしょ?」
キスひとつで許してしまうなんて、甘すぎるかな?とは思うけれど。


―The end―






P.S.
甘いですね。甘すぎるっ(笑
夏イベントに来ていただいた方の
「笑太の気持ちになって清寿を脱がせてみたいっ☆」
という話を聞いててinspireされてみました。
すんなり、より、萌えるかと(^.^;;
一応、“Symptomatic Therapy”
という話の続きになってます。。


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