09. 「泣いてんのか笑ってんのか、ハッキリしろ」


いい天気だなー。。。

目が覚めたら僕の横に笑太君は居なくて。
ベッドに寄り掛かって座っている後ろ姿を見付けて、
髪を一束抓んで引っ張ってみた。
「おはよ」
頭が半分だけ振り返って、素っ気無く云う。
「起きたか」
横顔でフッと笑うと前を向いてしまう。
この明るさから云うと、もう昼に近いかな?
「起きれる?」
うつ伏せから仰向けになろうとしたら、腰が怠かった。
「僕もコーヒー飲みたい」
勘の良い笑太君は僕が質問に答えない訳を察して
くれて、しつこく訊いたりしようとしない。
「笑太君が飲んでるそれでいい」
立ち上がろうとしたのを制して両手を伸ばしてねだる
とたった今一口啜ったカップを持ち上げて見せて、
これでいいのか?という表情(かお)をした。
「うん。咽喉渇いてるから」
頷くと、上半身を捻るようにして僕の手に用心深く
マグカップを持たせようとして、動きが止まった。
「そのままだと飲みづらいだろ。飲ませてやろうか?」
「?」
意味が分からなくて小首を傾げたら、にこにこしな
がら自分の口元を人差し指で突付いてみせた。
口移しで、ってこと?
「えっ!いい、いい。大丈夫。自分で飲める」
焦って奪うようにカップを取った僕を見て、笑太君が
吹き出して大笑いする。
「昨夜(ゆうべ)はいつに無く大胆だったのに」
ホラ!そういう事を云う。
僕達は今日非番でも他の人達は仕事中で、昼間
だから目の部屋への出入りも多くて誰かに聞かれて
いるかもしれない。
「夜と昼間は違うよ。。。」
全裸で布団にくるまっているこの格好が、監視カメラ
に撮られて映されていると思うだけでも恥ずかしい。
「そうか?」
ぬるくなっていたコーヒーを一気に飲み干して、差し出
されてきた手にカップだけ返す。
それを受け取りながら笑太君は立ち上がって、背を屈
めて僕の顔を覗き込んできた。
「やっぱ目、腫れたな」
瞼に触れられるのが嫌で枕に顔を伏せると、大きな手
のひらが髪に触れてきた。
「声も嗄れてる」
甘やかすように頭を撫でてくれながら優しく呟いて、
僕の横に腰を下ろす。
「すまない」
枕を両腕でしっかり抱えて顔を隠したまま、首を左右
に振った。
「笑太君が謝ること無い」
先刻目覚めた時、部屋には陽の光が溢れていて、
笑太君の髪がキラキラ光っていて。
眩しくて綺麗で、悲しくなった。
普通の恋人同士だったらこんなに天気のいい日には
外でデートして、手を繋いで歩いたり出来るのに。
「僕こそ。。。ごめん」
それ以前に起き上がれないとか、申し訳なくて。
「。。。ちょっ、何してんの?」
抱き締めている枕の下と腰の上に腕が回された、と
思った次の瞬間に、くるんと身体が半回転した。
「。。。っ!」
眩むような青空を背景にして、にやにやと笑っている
笑太君の顔が目の前にあった。
「や〜っと顔が見えた」
僕の頬を撫でながら、嬉しそうに云う。
「もーひとを子供みたいに。。。恥ずかしいなぁ」
じゃれつくようなくちづけに、目を閉じて応える。
「いいだろ別に好きなんだから。俺はいつ誰に見られ
ても恥ずかしくなんかないけどな」

そんな不意打ちみたいに。。。

「泣いてんのか笑ってんのか、ハッキリしろ」
分かっていて、そんな風に云う。
「お日様が眩しくて涙が出てくるだけだよ」
強がって横を向くと、顎を掴んで上を向かされた。
「待ってろ。今コーヒー淹れてきてやるから」
笑太君の後ろ姿がキッチンに消えたのを確かめて、
監視カメラに映らないように枕で顔を覆ってちょっと
だけ泣いた。


―End―



書き出した日は快晴。
UPした日は荒天。。

笑太はインドア派らしいので
清寿の“ごめんなさい”は
杞憂かも。
09/04/25Sat.


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