Come to Light The inside story 


触れ合っている僅かな部分と、繋がっている部分だけが
熱かった。
肉と粘膜が擦れ会う湿った音と、荒々しい呼吸音だけ
が空間に満ちていた。
「んっ。。。んんっ、ふ。。。う。。。」
唇を噛み締めて喘ぐ声を飲み込んでいる、苦しそうな
息遣いにそそられて細い腰に掛けた手を引き寄せると、
白い背中が弾かれたように大きく震えた。
「はぁ。。。ぁ」
真直ぐに伸びた艶のある髪が大きく揺れて、重力に引
かれて肌の上をさらさらと滑り落ちてゆく。
その、美しい髪にくちづけながら背後から前に手を回し、
身体の中心で屹立しているものを掴もうとすると、すっと
一瞬腰が引かれて拒まれた。
その分結合が深くなり、吐息にも似た唸り声が漏れる。
「だめ。。。っ。触られたらすぐにイッちゃいそうだから。。。」
背中から包みこむようにして抱き起こし、今度はしっかりと
茎を捕らえる。
「やっ。。。やだ」
囁くような声量で拒絶の言葉を吐きながらも背が押し当
てられてきて、熱い身体を強く抱き締める格好になった。
形の良い肩甲骨のラインに沿って、唇を這わせる。
湿り気を帯び、吸い付くような質感になってきた肌を甘く
噛む。
「。。。あああっ!」
腕の中の身体が細かく震え、手のひらが濡らされた。
久しぶりに抱く身体は、更に感度をあげたようだ。
脱力して砕けそうになる腰を支えて、灼けるように熱くな
っている器官の一番奥へ、三上は欲望を叩きつけた。


はぁ。。。と、声にならない息を吐いて、断続的に震えて
いた身体を鎮め、式部はゆっくりと目を開けた。
体重を預けるように寄りかかっているソファの背が軋む。
目の前のテーブルの上には鬼灯の鉢植え。
それは式部が柚原から受け取った日に預けられたまま、
そこに置きっ放しになっていた。
「ねぇ、三上さん」
背後から式部の身体を抱き締めて、肩に流れる髪に顔
を埋めている三上に声を掛けた。
「これ、実だけ貰ってっていい?」
「お前のだから、好きにすればいい」
素っ気ない答えに優しい笑みを浮かべながら、式部は胸
の前に回されていた腕に指を絡めた。
「実だけ。。。どうするんだ?」
ふふふ、と、式部の肩が揺れた。
「笑太君にあげるんだ」
悪趣味だな。。。と独り言のように呟いて、三上は白い首
筋を唇で辿る。
式部はくすぐったそうに肩を竦めながら軽く笑い、面白くて
仕方が無いというような口調で聞き返す。
「鬼灯ってどんな意味があるか、知ってる?」
言葉では答えず、視線を上げて式部の肩越しに鬼灯を
見て、三上は意味有り気に薄く笑ってみせた。
「もしかして調べた?」
「ああ。調べた。獅洞大臣からの伝言が気になって」
鬼灯と共に柚原が持参した"大臣からの伝言"が著しく
式部の機嫌を損ね、故にこの鉢植えはここに置いてい
かれてしまったのだ。
式部に、人前であれほど露骨に嫌そうな顔をさせる言葉
が何だったのか、気にならないと言えば嘘になる。
「あの時、何云われたんだ?」
三上が身体から離れる気配がして、式部は軽く身震い
した。
「僕の口からは云いたくないから教えない」
その硬い口調とはうらはらに、後ろから着せ掛けた制服を
胸の前で合わせながら、式部は振り返り際に作り物めいた
綺麗な微笑みを返してきた。
これ以上聞いても答える気は無いのだろう。
こういう、感情が込められていない微笑みを見せるのは、
自分を閉ざしてしまった時だ。
今までの経験上そう知っている三上は、着衣を整えなが
ら溜息をひとつついた。
「たまに面倒をみに来るから、この鉢はここに置いといて
もらってもいい?」
三上の唇に啄ばむようなくちづけをして、式部は本物の
微笑みを浮かべてみせた。

「笑太君。はい、これあげる」
御子柴の手に、ぽとん、と、鬼灯の実が落とされた。
「どうしたんだ、これ?」
「貰ったんだ」
軽やかに式部が返す。
今日はやけに機嫌がいい、と、御子柴は思った。
「へぇ。。。誰に?」
御子柴の問いに、屈託の無い笑みが返される。
「獅洞大臣に」
式部の表情とは対照的に、御子柴の表情が曇った。
「直接貰ったのか?」
「まさか!柚原さんから鉢植えを受け取って、しばらく他の
ところに預けておいたんだけど、葉が枯れてきたから実だけ
貰ってきたんだよ」
式部は御子柴から視線を逸らすようにしながら答えた。
「ふ〜ん。。。」
奥歯に何か挟まっているかのような微かな不快感があるの
にその原因が分からなくて、御子柴はどうでもいいような返
事を返した。
「これ。。。どこかで見たような気がするんだけど、どこでだっ
けな?」
指先で抓みあげて、目の前で鬼灯を観察するように凝視
している御子柴に、式部が微笑みかける。
「ね、笑太君。鬼灯ってどんな意味があるか知ってる?」
空色の瞳が見開かれ、式部を見下ろした。
「意味って、どういう意味?そんなのあんの?」
紫色の瞳が面白そうに揺れた。
「“悪い虫を封じる”って意味があるんだよ」
「俺って悪い虫?!」
あはは!と声を上げて、式部が笑った。
「違うって!でも。。。そうなの?」
「なんだよそれ??意味分かんねぇよ」
「笑太君に悪い虫が付きませんように、ってコトだったんだ
けど」
御子柴も笑いながら、式部の腰を抱き寄せた。
「大臣からね、鬼灯と一緒にお土産も貰ったんだ」
「何?」
「メープルシロップ。いかにも大臣が選びそうな濃厚で激甘
そうなヤツ」
「じゃあ。。。今度ホットケーキ?作ってもらわなきゃな」
「笑太君ってばお子ちゃま〜!」
「仕方ないだろ。それしか思い付かなかったんだから」
悔しそうな表情の御子柴の唇に、式部はそっとくちづけた。
「今度何か美味しいモノ作ってあげるね」
くちづけを返してきた御子柴に柔らかく微笑んで、式部
は身を委ねるように目を閉じた。


               ―The end―







P.S.
“Come to Light -The right side-”
という話の後編です。
ホオズキの英名はChinese lantern plant。
“鬼灯”も中国語で小さい提灯という意味。
見た目も可愛い。
でも花言葉は“偽り”だったり、
堕胎等の隠語になっていたり。。
ちょっと淫靡な印象あったんで
“焼けぼっくいに火がついた”
みたいな話になっちゃいました(汗



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