―05人込みの中で


頬を軽く膨らませて、唇をちょっと尖らせて、
やや俯き加減に後ろを歩いてくる。
「ほら」
自然な仕草で振り返り、御子柴は背後に
手を伸ばした。
困ったような上目遣い。戸惑ったような間。
「ほら、って!」
歩調を緩めて、式部の手を取ろうとした。
「大丈夫だよ」
式部は両手を自分の体の後ろに回して、
掴まれる寸前で御子柴の手を避けた。
「笑太君、過保護」
失笑した御子柴を、式部は軽く睨み返す。
「普段はお前の方が過保護なクセに。
それよか、人多い所苦手だろ?ホラッ」
差し伸べた手は取られることが無く、2人
の間で空しく揺れた。
午後5時を回って賑わう夜の街。
大勢の人々が行き交う交差点の真ん中
では立ち止まることも出来ない。

人が多い所が得意じゃない式部をここまで
連れ出したのは御子柴で、理由も内容も
内緒にしてある。
拗ねているのはそのせいだとは解っているが、
サプライズの仕掛けも結末も最後まで秘密。
弾けるような笑顔を見る為に必須なのは
忍耐力だと思って耐える。

「恥かかせんのか?」
きゅっ、と、口を真横に引き締めた式部が
おずおずと伸ばしてきた指が、御子柴の手
のひらに触れた。
指を掴んで引き寄せて、並んで歩く。
「ここまでしなくたって大丈夫なのに。。。」
俯いて、髪で顔を隠したまま呟く。
「俺が心配なだけだよ」
御子柴は繋いだ指に力を込めた。
「居なくなっちゃうんじゃないかと思って」
驚いた表情(かお)の後には、ふわり、と、
嬉しさが伝わってくるような微笑。
「あ、そうか。笑太君は過保護じゃなくて
心配性だったね」
紫の瞳が潤んで、街の光を反射している。
「清寿、顔上げて。ちゃんと前見て歩いて」
「うん。。。」
人を避けるように左右に揺れながら歩く
御子柴の指を、式部は強く握り締める。
「危なっかしくて目が離せないんだよな」
「なんかビミョ〜に子供扱いじゃない?」

記念日というワケじゃない。
ただ喜ばせたいだけなんだ。
最近元気が無くて。。。
沈んでいるみたいだから心配で。

御子柴は式部の指をもう一度握り返して、
人込みの中を目的地へ向かって急いだ。


―Oh!Yeah!―



さて。。
笑太が仕組んだサプライズとは?
果たして清寿の笑顔は見れたのか?
それは皆様のご想像に
お任せします(^-^*
BGMは
小田和正の“Oh!Yeah!”
でした。。


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