―04バス停で


「わ。珍し。。。」
自分の吐いた息が真っ白に見える真冬の朝。
思わず漏らしてしまった呟きを誤魔化すように、
マフラーを上げて口元を隠してみる。
まだ気付かれてないようだから、あっちの道を
通って回避する、っていうのもアリか。
けどそこまでする時間的余裕も無いし、理由
も無いかな。
ただ、好奇心が疼いちゃって仕方無いだけで。
ま、これは職業病みたいなもんだから。
しかしバス停でバス待ってるのが似合わない人
だよなぁ。。。

「おはようございます」
メガネの下で視線だけが動き、俺を捉えた。
「おはよう」
「寒いっすね」
「寒いな」
その視線が上を向き正面に戻って。。。沈黙。
会話なんか続きやしない。
課長は、あの人はああ見えても結構喋るんだぞ、
って云ってたけれど。
「三上部長、昨日は帰れたんですね?」
「ああ、久しぶりにな」
「今日は車じゃないんですか?」
「置いてきた」
さらっ、と答えた口の回りが、白く煙る。
「君も、いつもは車通勤だったんじゃないか?」
そんなすぐに切り返されたんじゃ、何故ですか?
と口を挟む隙も無い。
「ええ。でもたまにバスを使うんです」
「そうか」
。。。って!?それだけっ??
このヒト、興味の無いことにはこうなんだよね。
これじゃ切り出すことすら出来ないよ。
“昨日帰る時、誰か車に乗せてませんでした?”
なんて。
特刑関係者が何人も目撃してて。。。
中にはハッキリ見たっていう話もあって。。。
昨日の夜中ず〜っと、諜報課はその話で盛り
上がりっぱなしだったって云うのに。
あ〜うずうずする。
本人を目の前に情報を訊き出せないなんて、
諜報課第一斑班長の肩書きが泣くな。。。
なんてさ、ただ知りたいだけなんだけど。
「柏原君」
俺の顔を横目で見て、穏やかなのに挑発的
な口調で云う。
「どうした?何か訊きたいことでもあるのか?」
「いっ!やっ。。。!そんな。。。」
瞬間、にゃっ!と背筋が縮んだ。
「本部に泊まっている分にはあまり感じなかった
が。。。冬になってたんだな」
三上部長につられて、頭上を見上げる。
そこには今にも雪が降り出しそうな曇り空。
「うちは寒かったよ。独りだと、寒いな」
ふっ、と、口元に漂う薄い笑み。
表情が緩むと優しそうに見えなくもない。
「あー。。。そうっすね」
下世話な好奇心を封じる、無言の圧力。
だめだ。突っ込めない。笑ってるけどヤバい。
この人を三上さん呼ばわり出来る総隊長や
微笑み返せる副隊長って、結構大物なん
だな。。。
いや、怖いモノ知らずなだけか。
俺、繊細だから全然無理。
沈黙が気まずい。胃がキリキリしてきた。
早くバス、来てくんないかな。。。


―LEVEL4―



あの若さで立ち上げから10年も
特刑部長をやっているとなると。。
三上さんって相当“タヌキ”なのでは?
と、いう話(笑
08車の中で―に、続くかも。


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