―To Tell The Truth―
                    a sequel to“Imitation Lust”


――― 本当は最初から、愛はあったんだよ。。。


"最初の日"は晴れていた。
貴方の肩越しに、夕焼けの赤から紫がかり、やがて濃紺へと変わってゆく
空の色をずっと見ていたから、覚えている。
"2回目の日"は雨だった。
壁一面のガラスに激しく雨粒が叩きつけられている様を、ずっと見ていた。
その次も、その次も、こうやって会う時はいつも、雨の日だった。。。


「また髪の長さが変わったな」
自分の身体の上でねだるように腰を揺らしている式部の耳元に鼻を寄せ
るようにして、三上はその髪の匂いを嗅いだ。
一度雨に濡れた髪からは、いつもよりも強く、甘く官能的な香りがした。
「エクステを取ったんだよ。自分の髪が伸びたから」
式部は三上の首に腕を回して抱きついたような姿勢のまま、顔も見せず
にそう答えた。
首の後ろに息がかかり、三上は思わず肩を竦めた。
ぞくぞくと、背筋に沿って欲望が這い登ってくる。
「この方がいいな。触った時の感触がいい」
式部の後頭部に手のひらを当て、すうっ、と、撫で下ろす。
その手が裸の背中を滑り下りて、式部の背筋がびくっ、と、揺れた。
少しの刺激でも感じてしまうくらい、感情が昂っているのだろう。
はぁ。。。と熱い息を吐いて、式部は三上の上から下りた。
そして膝頭を手で掴んで開かせて、その間に跪くように座った。
股間のチャックを引き下ろし、そこに閉じ込められていた三上の欲望を
取り出すと、式部は躊躇することなく口に含んだ。
「んっ。。。」
いつでも冷静で、あまり表情が変わらない三上の顔が歪んだ。
それを見上げて、式部の目が細められた。
先端の割れ目をこじ開けるように舌先を押し当てると、少し苦い味の
する汁が滲み出してきた。
それを吸うようにして、嬲る。
びくっびくっ、と、三上の身体が小さく痙攣し、背が軽く反って、腰がイス
に強く押し当てられた。
その反応に満足そうに目を伏せて、式部は更に三上を攻め続ける。
「やっぱり変わってるな、お前は」
太腿の間で揺れている式部の頭を撫でながら、荒くなってしまう呼吸を
抑えて三上は云った。
「こうなると分かっていて、何でいつもここに来るんだ?」
それには答えようとせず、式部は執拗に三上の棒を舌で弄んでいた。

任務で何があったかは知らないが、今日は攻めたい気分らしい。。。

三上はそう判断し、しばらくは式部のしたいようにさせてやった。


こうやって式部と愛し合うのは、もう何度目かになる。
でも三上は、"最初の日"の事を明瞭に覚えていた。
あんなに嫌がって、最後にはあんなに強い憎しみをぶつけてきたのに、
式部は三上を責めようとはしなかった。
「清寿に何したんだっ?!」
帰りが遅くなった式部を心配して部長室までやってきて怒鳴り散らした
御子柴に向かって、式部は少し困ったような笑みを浮かべてこう云った
のだ。
「笑太君、何もされてないよ!ただ部長の仕事を手伝っていたら急に
気分が悪くなって。。。少し休ませて貰ってただけだってば」
暗い部屋の中で、窓の外のネオンサインの光にうっすら照らし出された
式部の横顔を、三上は、美しいな、と思った。
御子柴はバツが悪そうに謝ってから、式部の身体を支えるようにして
帰って行き、三上はそんな2人の後姿を、何も云えずに見送ることだけ
しか出来なかった。

あの日から、この関係は断続的に続いている。


「。。。!だめだっ。。。離せっ」
硬く大きく育てられてしまった昂りを、式部の口に更に押し込むように
すると、むせこみと共に外に吐き出された。
式部に飲ませる訳にはいかない。三上は咄嗟にそう思った。
この綺麗な顔を、声を、自分のモノで汚したくない、と、思ったのだ。
軽く咳き込んでいる式部の身体を抱き上げて、デスクに向かって手を
付かせる。前傾姿勢を取らせ、背後から花芯を指で掻き回す。
そこはもう既にとろとろに濡れていて、粘膜が充血して艶かしい色を
帯びていた。
「大丈夫だな。。。挿れるぞ。力を抜いて」
式部の唾液で濡れていた三上のペニスは、最初だけ戸惑ったように
滑ったが、一度芯に飲み込まれると奥まで一気に進んでいった。
嗚咽をあげそうになって、式部は自分の指を噛んで耐える。
大きく反り返ろうとする式部の肩が、後ろから手で押さえつけられて、
喘ぎ声が抗議の声音に変わる。
「もう少し。。。もっと深く入りたい。。。」
三上は式部の背中に自分の身体を密着させるようにして、式部の中
をもっと奥まで探ろうとした。
「ああっ。。。!やだ。。。重いよっ」
三上の上半身の重みが全てかかってきて、式部がもがく。
「でもっイイ。。。イイから。。。離れない。。。で。。。離れないでっ!」
その体動とは全く逆に、デスクの上に横向きに押し付けられた式部の
顔には、恍惚に近い表情が浮かんでいた。
「式部。。。お前、なんでここに来る?」
頭の後ろから耳元に向かって、囁くように、もう一度同じことを尋ねて
みる。
それに応えるかのように、式部の目が、ふーっ、と開かれた。
「最初の日にね、終わってから気が付いたんだ。あんな状況だったのに、
貴方はずっと優しかった。。。ね?本当は愛があったんでしょ?」
泣いているように涙を湛えた紫色の瞳に、美しい微笑みが浮かぶ。
「そんな三上さんが、不器用すぎて、とても愛しい。。。」

――― 愛も無いくせに!そんな事しないでっ。。。
"最初の日"。。。式部はそう叫んで三上の唇を拒絶した。
呪詛の言葉を吐き出して絶頂を迎え、意識を失ってしまった式部の
耳元に向かって、三上はある言葉を呟いた。
「ちゃんと"愛"は、あったのに」
それが聞こえていたとは思わないけれど。。。

「あんっ!イク。。。」
式部のその言葉を引き金に、2人同時に達してしまった。
胸の中に満たされた切なさを注ぎ込むように三上は式部の中に放ち、
波打つように揺れているその背中を強く抱き締めた。


本当に欲しかったひとはもう存在しない。
御子柴には愛着はあっても、愛情までは抱いていない。
でも同じ心の痛みを持っているであろう式部には、同情にも近い
愛情を感じる事が時々あった。


半分夢の中を歩いているような足取りの式部を、ソファの所まで誘導し、
横にする。
中腰で式部の顔を覗きこむような姿勢になっていた三上は、首に回され
てきた腕に抱き寄せられ、見つめ合うような格好になった。
自然に唇を合わせ、舌を絡めあう。
叫ばれて拒絶された時以来触れていなかった式部の唇に優しく受け入れ
られて、三上は赦されたような気分になった。

こんなキズを嘗め合うような関係でも、自分には必要な時がある。
お互いにとって、お互いが"一番好きなひと"で無いと分かっていながらも、
人間らしい感情を保つ為に。

意識を失いつつある式部の髪を撫でながら、三上はそっと耳元で囁いた。
「だからどんな形であれ、最初から愛はあったんだよ。。。」


雨降りの日は、東都全体が夜に包まれる前から、壁面のガラスに自分達
の姿が映って見える。
そこに映る貴方の後姿に、僕の身体を支える腕に、愛情を感じてしまうだ
なんて云ったらオカシイかな?
でも、だから雨の日を待ってしまう。
この秘められた関係を続ける為に。。。


―The end―






P.S.
清惠嬢に“不倫カップルっぽい”話と評された
Imitation Lust”という作品の続編です。
前作では、
三上には愛があるんですが若い式部には伝わらない、
そんな展開にしたので、今回はベタな感じに(笑
そしたら更に不倫カップル度が増したような気が。。(涙


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