―Imitation Lust―


壁一面がガラス張りの窓になっているこの部屋からは、東都の景色
が一望出来る。
うっすらとスモッグで霞んだ、埃っぽい空が広がっているのが見える。
夕方から夜へと移ろう時刻。。。
残照が、2人を朱色に染めていた。


いつものように、三上は自分のデスクの前にあるイスに座っていた。
いつもと違うのは、そこに式部が居ることくらいだった。
その腰の上に跨るようにして、式部は三上の欲望を受け入れていた。
三上はスーツ姿で、前だけはだけさせて。
式部は制服を、淫らに乱れさせて。
「んっ。。。んんっ。。。あんっ。。。」
三上の首にしがみつくようにして上半身を預けている式部の荒々しい
呼吸が、更に激しくなってきた。
その甘い息が耳にかかり、三上の欲情は駆り立てられる。
肩に押し当てられていた式部の頭を両手で捕らえて、少し苦しそうに
眉を顰めているその顔を、自分の顔の正面に持ってくる。
その手から逃れようとすればするほど、式部の長い髪が三上の指に
絡まって、余計に逃げられなくなってしまった。
「やだ。。。見ないで。。。っ」
嫌がって、式部が身体を捻る度、三上の陰茎は強く締め付けられて、
熱く、融けてしまいそうになる。
唇を、唇で無理矢理捉えて、式部が噛み殺している喘ぎ声を口移し
で飲み込んでやる。
「や。。。っ、やめてってばっ!」
口中に差し込まれてきた舌を、舌で拒絶して、式部が鋭く叫んだ。
「愛も無いくせに。。。!そんな事しないで。。。っ」
いつもと同じ冷静な顔の三上を、式部は潤んだ目で睨みつけた。
三上は、ふっ、と、口の端をほんの少し持ち上げて笑ってみせただけで、
否定はしなかった。

「貴方が本当に欲しいのは桜澤時生、で、御子柴笑太、でしょ?
なのになんで、僕を抱くの?」

そう非難しながらも快感を求めて動き続ける式部の腰に手を当てて、
律動を激しくする。
式部の咽喉が大きく反らされて、短い悲鳴のような声を上げた。
次の刹那、細かい痙攣が式部の背中を走り、三上の掌の上に白い露
が迸った。
はぁ。。。っ、と、長い息を吐き出して、全身が脱力する。
床に滑り落ちないように、三上は式部の身体を抱き留めた。

「そんなに嫌われるのが、怖い?」

三上の耳元で、式部が掠れた声で囁く。
その言葉はまるで呪いのように、三上の心を剥き出しにした。
「そう。嫌われたくないんだ」
自分でも驚く程に硬質な声が出てしまって、三上はその先を云い淀んだ。
「僕になら嫌われてもいいの?」
身体を硬くした三上の耳に唇を押し付けるようにして、式部は更に問い
詰めてゆく。
「お前なら、この空しさを解ってくれると思って。。。」
予想もしていなかった答えに、式部が怯む。
「一緒に居たい時に一緒に居られない、この寂しさが解るだろう?」
ごくっ、と式部が唾を飲み込んだ音が、やけに響いて聞こえた。
「いくら職場で一緒に居ても、もっと近く感じたい時に一緒に居られない
もどかしい感情が、お前になら解るだろう?」
御子柴には蓮井が居て、式部はいつも一緒に居られる訳では無い。
切なさが、まだ中に深く挿し入れられたままだった三上の楔の存在を、
その形を、式部にはっきりと自覚させた。
「でも誰にも解らない。自分の正義を守る為に"あいつ"を殺してもらわ
なければならなかった、この気持ちは」
三上が式部の腰を掴み直し、激しく上下に揺らす。
むせび泣くように、式部は喘ぎ声を上げた。

「例え貴方のその気持ちが解るとしても、僕は貴方を赦さない」
絶頂を迎える直前に、式部は三上に向かってそう云い放った。
「絶対に笑太君を渡しはしないから。。。っ!」
その憎しみが御子柴と式部の絆に変わるなら、それならそれでいいと、
三上は思った。
御子柴を欲しい訳では無く、喪いたくないだけなのだから。

御子柴の携帯に電話を掛けると、ワンコールですぐ出た。
『三上さん、式部はまだそこに居るんだな!?』
この呼び方は、桜澤の口調をまねているうちに、御子柴の癖になって
しまったもの。
そう呼ばれる度に、心が疼く。
「ああ、居る。もうすぐ帰す。心配するな」
電話口で怒鳴るような口調で何か云っている御子柴を無視して、それ
だけ云って、切る。
多分御子柴は、式部を迎えにここまで来るだろう。。。


夜が、東都に落ちていた。
眠りを知らない街は、イミテーションの宝石の様にきらきらした光で満たさ
れていた。
部屋の明かりは点けず窓越しの灯りだけで、三上は、部長室のソファの上
に横たえた式部の制服を整えてやった。


―The end―






P.S.
何故か突発的に降りてきてしまった
三上さんシリーズ第2弾(笑
今回のBGMはTHE BOOMの『月さえも眠る夜』。
純愛の歌で、この話とは全く違う世界なんですが。。
曲とVo.の色っぽさがイメージだったんです。
う〜ん。。やっぱりTHE BOOMは良いっ!


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