―Exchange Many Kisses―


標本にする為に昆虫の、柔らかい腹にピンを刺すように、
俺はお前を刺し止める。
シーツの上に広がった、光が当たると青く見える髪の毛が、
まるで蝶の羽のよう。
快感の手前で喘ぐ、その苦しそうな息遣いは、
まるで断末魔のようでもある。
止めを刺すか?共に果てるか?
指と指を絡め合う。
唇と唇を合わせ、求め合う。
粘膜が触れ合い擦れ合う、その湿った音が更なる興奮を呼び、
お互いの名前を呼び合いながら、
結局いつも共倒れになる。
だからって対等、って云うワケでは無い。
特刑では実力ナンバー1と云われ総隊長までやらされているけれど、
お前の前では優柔不断だ。
標本にしてガラスケースにしまっておきたいくらいいとおしい。
だけど自由に羽ばたかせてやりたい。
相反する想いに、結局いつもどっち付かずの態度を取ってしまう。


寝そびれてしまった俺は、
眠ってしまった清寿の横から抜け出してバスルームに向かった。
まだ身体には行為の余韻と清寿の甘い香りが残っていて、
気持ちが昂っていて寝付けそうにない。
そんな自分に喝を入れるように、熱いシャワーを浴びた。

ぴた。
突然背中にくっついてきた人肌の感触に、飛び上がるほど驚いた。
「清寿!?気配殺して近付くなよっ」
「笑太君、油断しすぎ!」
俺の口元のほくろを、清寿の人差し指がびしっ!と指す。
上目遣いの悪戯っぽい笑顔に、怒る気も失せる。
「僕もシャワー浴びたい!髪洗ってあげるから一緒に入ろ」
なんだそりゃ?
呆気に取られている俺の返事も待たずに、
目の前に立った清寿はシャンプーを泡立てて、
俺の髪の毛を洗い出した。
しなやかな指が柔らかく、俺の髪の毛の間を動く。
どさくさに紛れて、耳朶や耳の後ろに清寿の唇が遊ぶ。
「ね、座って。じゃないと手が疲れちゃうよ。僕より背高いんだから」
やれやれ、と溜息をつきながらイスに腰掛ける。
そもそも髪洗ってくれなんて頼んでないし。
でも清寿には敵わない。
その、有無を云わせぬ笑顔には。
嬉々として俺の頭を洗っている、清寿の腰を抱き寄せる。
「あ。。。」
シャワーで温まったせいか、それとも熱い予感のせいか、
身体が淡い桃色に染まっている。
その中心にある、清寿自身を口に含む。
「。。。っ!だめだよ、笑太君っ。ちゃんと髪、洗ってからじゃないと。。。っ」
指から力が抜けて、俺の頭に添えられているだけになる。
「ちゃんと洗って」
感じてしまっている顔を見上げながら、挑発する。
「先刻驚かされたお返しだよ」
少し潤んだ紫色の瞳が、俺を軽く睨む。
「意外と根に持つタイプ?。。。あんっ!」
言葉を封じるように、清寿自身の先端を軽く吸い、舌先で弄ぶ。
腰が砕けそうになって、清寿は俺の頭にしがみついてきた。
「ねぇ、ちゃんと髪、洗って?」
「笑太君のイジワルっ」
清寿の濡れた髪から雫が垂れて、
シャンプーの泡塗れの身体を流れ落ちてくる。
「はぁっ。。。はぁっ。。。あ。。。ああ。。。」
耳のすぐ近くで発せられる甘ったるい喘ぎ声が、
俺を余計に興奮させる。
触れるだけで弾けてしまいそうなほどになっていた俺自身に、
清寿の身体から掬い取った泡を塗りつける。
「挿れていい?」
しがみつかれているので表情(かお)は見えなかったが、
俺の肩に掛かけられた顎が、こくん、と頷いたのは分かった。
「んっ!。。。」
刺し貫かれた清寿の身体は一瞬緊張し、
次の瞬間には脱力した。
「あれ?もうイッちゃった?」
俺の腹の上に白い飛沫が放たれていた。
身体を伝い落ちるシャワーの湯が、それを洗い流してゆく。
俺の口の中で達する寸前まで育てられてしまっていた清寿自身が、
挿入の刺激で暴発してしまったようだ。
「。。。いつもそんなに意地悪じゃないのに」
清寿は顔を上げようともせずに云った。
「なんで今日はそんななの?」
その拗ねたような口調に、思わず笑ってしまう。
「たまにはお前を繋ぎ止めたくて、さ」
「そんなことしなくても。。。」
つぶやきの語尾が曖昧になり、
清寿は俺の左肩に埋めていた顔を、更に強く押し当ててきた。

「ねぇ、僕が笑太君のモノだって認めてよ」

それは束縛の言葉。
だから今まで云わないようにしてきたんだけど。。。
言葉になんかしなくても分かってくれてると思い込んでいた。
「俺のモノだって云ってもいいの?」
シャワーの水音がやけに大きく聞こえていた。
髪の毛の泡はとっくに流されて、透明な飛沫が俺達を濡らしている。
こんなに周りには水分があるのに、咽喉だけがカラカラに渇いていた。
「うん。ちゃんと云って。そしたらずっと傍に居てあげられるから。。。」
耳元で、清寿が囁く。
首筋に良い香りがする息がかかる度、繋がったままの部分が疼く。
「大好きだよ、清寿。お前とずっと一緒に居たい。。。」
それに答えるように、俺の身体に回された清寿の腕に力が籠もる。
それと同時に、清寿の"芯"がぎゅーっと締まった。
「ああっっ!」
頭の先まで突き抜けるような、強烈な快感。
反射的に腰が動いてしまう。
息だけで喘ぎながら身体を反らした清寿が、
満ち足りた笑顔を見せる。
唇で、唇を求める。
舌先が、清寿の口の中を探る。
「一緒にっ。。。一緒にイキた。。。い。。。」
「いいよ。。。一緒にいこう。。。」
お互いを強く抱き合ったまま、俺達は同時に果てた。。。


「一緒に風呂入る?お前んとこ、バスタブ広いから入れんじゃねぇ?」
シャワーでお互いの身体を洗い合った後湯船に浸かりながら、
今度は自分の髪を洗っている清寿を眺めていた。
「うん、いい。先に出てる」
清寿はちょっと困ったような笑みを浮かべた。
「いくら広いって云ったって、大の男が2人で入る程は広くないんじゃない?」
確かに。足を伸ばして入れる広さだけど、もう1人入るとキビシイかな。
「外で待ってるから。。。あまり長湯しないでね」
しっかりとトリートメントを洗い流した髪をタオルで包みながら、
鮮やかな笑顔を残して清寿はバスルームを出て行った。
俺はふぅ。。。と溜息をつく。
いつも冷静なお前の、ホントの姿を知っているのは俺だけかな?
照れ笑いを隠す為、口元までお湯に浸かってみた。


                   ―The end―






P.S.
獅洞×清寿のかなりイタい話を書いてる間に、
反動で書いた話の全面改訂版。
笑太と清寿が可愛くいちゃいちゃしているだけ、
そんな話が書きたくて。。
“笑太君のモノだって認めてよ”という台詞の伏線は
このサイトのあっちこっちの作品に
散りばめてあります。
まとまった形に出来て、ちょっとスッキリ(^.^;
でも実は、ちゃんと“俺のモノ”とは云ってないんですねぇ。。
どこまでもヘタレな笑太でありました(笑


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