―Lies and Deals―


御子柴は"目の部屋"の壁にもたれながらぼんやりと、首筋から下りてゆく
五十嵐の舌の感触を感じていた。
ネクタイが外されシャツのボタンが外され、露わにされた胸筋に、乾いた唇
と髭の感触がざりざりと蠢く。
その手が更に下へ這い、制服のベルトを外して御子柴の中心に触れた。
「んっ。。。」
五十嵐は顔を上げて、色っぽい声を漏らした御子柴の顔を見た。
その面白そうな、からかうような表情に、御子柴はまた傷付いた。

この状況だけでも充分自尊心が傷付けられているというのに。
抵抗が出来ない状況が歯痒い。と云うか、ムカつく。
だけどこれは"取引"なのだからしょうがない。

そう自分に言い聞かせて、感情を殺す。

向かいの壁面に設置されたモニターの一部に映っているのは式部の部屋。
ベッドの上で膝を抱えて蹲り、空ろな表情で水槽を見詰めていた式部の
口元が御子柴の名の形に動いたのを見て、身体中の血が熱く滾る。
あぁ。。。
諦めにも似た喘ぎを、声にはせずに吐き出した。
局部をまさぐっていた手を止めて、キスをしようと唇を寄せてきた五十嵐を、
御子柴は顔を背けて拒んだ。

他は汚れてしまったとしても、唇だけは許さない。
これだけは自分が壊れない為の最後の砦だから。

ククッ。
頑なにキスを拒み続ける御子柴の様子を見て、五十嵐のノドが嘲笑うように
短く鳴った。
「唇だけは副隊長の為に守る、ってか?」

好きなように云えばいい。。。

御子柴は一度五十嵐を睨みつけてから、顎を少し上に上げて目を閉じた。
五十嵐の舌がつーっと御子柴の身体を滑り降り、局所を口に含んだ。
「。。。!」
片手が後ろに回り、御子柴の芯を指で弄る。
快感が後頭部まで突き抜ける。
腰の力が抜けそうになるのを必死で堪えながら、御子柴は眼下に揺れてい
る頭に手を添えてみた。

同じような黒髪だけど、全く違う。
清寿の髪の方がしなやかだしイイ香りがする。。。

無理矢理それを式部の頭だと自分に思い込ませ、身体と精神(こころ)を
必死に繋ごうとする。

でも舌の感触が違う。込められた感情が違う。
何もかにもが違いすぎる。。。

執拗に攻める五十嵐の口の中で、御子柴は一度果ててしまった。

五十嵐は、脱力し座りこんでしまった御子柴をモニターに手を付かせて立たせ、
充分に濡れているその芯に自分を捻じ込んだ。
「う、んっ。。。!」
思わず出てしまった喘ぎ声を押し殺す。
「感じてるクセに、何で我慢する?」
五十嵐の揶揄するような言葉が背後から降ってくる。
クククッ。
そしてまたあの憐れむような嘲笑。
「義理堅いね、総隊長殿は」
キレてしまいそうな程の屈辱感。
けどそれ以上の快感に、怒りの感情が追いつかない。
はぁっ。。。はぁっ。。。
言い返したくても、もう喘ぐような呼吸(いき)しか発せない。
薄く目を開けると目の前のモニターに式部の部屋が映っていた。
腕の力を抜いて、その画面に顔を寄せる。
式部はベッドの上に座ったまま身体のすぐ横に携帯を置いて、静かに目を
閉じていた。

俺からの連絡を待っているのか?
今晩行くと云ったのに、その約束は果たせないかもしれない。
俺はもう、お前に触れることさえ許されないのかもしれないのだから。。。

御子柴は瞳を伏せて、式部の姿を視界から消した。
その様子を観察していた五十嵐は、痛々しいものを見るような視線で
御子柴を見遣ってから、腰の動きを早くした。
その激しい攻めに、御子柴は喘ぎ声を飲み込んだまま、先に達してしまった。


「ここの入室パスワードは変えたからな」
煙草を燻らせながら云う五十嵐の方を見ようともせずに、御子柴は“目の
部屋”を後にした。
これが今回の取引内容。
自分を、と云うより、式部を守る為の契約。
「惚れた側は弱いねぇ。。。」
五十嵐の、人を見透かしたような台詞とニヤついた顔を思い出したら無性に
腹が立ってきて、廊下の壁に拳をなぐりつけたが気持ちは落ち着かなかった。

汚されてしまった身体をシャワーでがしがし洗い、出てきた所でケータイに
着信があった。
「あ、笑太君?良かった〜!やっと電話に出てくれたね」
御子柴の目に、涙がじわりと滲んできた。
悔しさと後ろめたさと切なさで、自分の感情がコントロール出来ない。
「今どこに居るの?まだ本部?何かあったの?」
電話の向こうの明るい声に、短い返事しか返せない。
「夕飯つくってあるんだよ。お腹すいたでしょ?」
どんな顔をしておまえに会えばいいのかわからない。。。
「ね、笑太君」
黙り込んでしまった御子柴に、式部は事も無げに云った。

「何があったとしても僕は笑太君の事分かってあげられると思うよ。
癒せると思ってはいないけど、一緒に苦しんだり悩んだりする事は出来るから」

御子柴はきつく瞳を閉じて、1回深く息を吐いてから答えた。
「今から行くよ」
うん、待ってるね!と、電話は切れた。


今なら「何も無かった」とウソがつけそうだ。
例えそれがウソだと分かっても、清寿はきっと俺を攻めないだろう。
そして俺を許してくれるだろう。
今夜行かなければもう二度と行けなくなってしまう気がするから。。。

御子柴は手早く着替え、式部の待つ部屋へと向かった。


                 ― The end ―






P.S.
五十嵐×笑太のカップリングはきよ様から拝借。
(BBS参考にしております。どうもありがと〜!)
S系の台詞が恥ずかしくって、結局純愛モノになっちゃったなぁ。。(汗
もしかして“目の部屋”の入室は網膜認証かな?とは思ったんですが、
とりあえず入室パスワードが必要って設定にしちゃいましたし(大汗
BGMはラルクの『Lies and Truth』(PV付き)。
この頃のHYDEはめっちゃ綺麗で眼福ですね♪


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