―Confession in a Starless Night―
                  before “Similar But Different…”

「おい、このくらいでバテるなって」
「保井さんはこんな時も体育会系だよね」
「あはは!そうか?まぁスポーツみたいなもんだからな」
くすくす笑う式部の身体に後ろから覆い被さり、中を
掻き回しながら、保井は苦笑した。
「"あいつ"は違うのかよ?」
保井の律動に合わせて腰を揺らし、上がる息を押し
殺しながら、式部が答える。
「笑太君はね、優しくしてくれるよ。時々意地悪だけ
ど、でも本当は優しい。。。」
「はいはい。ご馳走さま。けどな、なら、泣くな」
「。。。泣いてなんか、いない。。。」
深く突かれて式部の腕から力が抜け、腰だけが高く
持ち上げられた体勢になる。
「ぃや。。。こんな格好。。。やぁ。。。あぁっ。。。っ」
しなやかに、長い髪がベッドの上に広がる。
「もっと筋肉使って締め付けてみろ」
「う。。。」
枕に押し付けられた頭が、左右に振られる。
「保井さんの、おっきいから無理。。。」
「まだへばるなよ。体力無いなぁ」
何度目かの絶頂に達して、脱力しそうになる身体
を持ち上げるようにして、保井が鼻を鳴らして笑う。
「や。。。そこ、触らないで。。。っ」
左の脇腹の、ケロイド状に引き攣れた古い傷跡の
上に手が触れるのを拒んで身体を捻ると、中に収
められている保井の形を明瞭に感じてしまい、式部
は大きく喘いだ。
「そこは。。。いや」
特刑に入隊して最初に負った大きな怪我の痕に、
初めての時から御子柴は躊躇うことなくくちづけてくれ
た。今でも、この傷痕だって綺麗だ、と云ってくれて、
優しく撫でてくれる。
「ああ、"笑太君以外には触られたくない"んだったな」
細い腰から手を離し、身体を密着させるように上体
を前傾させながら、式部の耳元で保井が囁く。
「。。。っ!」
「何度も聞いてるのにな。いつも忘れる」
枕の端を、関節の色が変わるまで強く握り締めている
式部の手の上に自分の手を重ねて置き、上から更に
奥を求めるように穿つ。
「あ。。。あっ。。。はぁ。。。あ。。。また、イキそう。。。」
「イク顔が見たいな」
片足を持ち上げられて、繋がった部分を基点に軽々
と上を向かされてしまい、式部は掴んでいた枕で顔を
覆い隠した。
「バカ。そんな風にしてたら窒息するぞ」
力一杯抱き締めていた枕を事も無げに取り上げられた
式部は、涙でぐちゃぐちゃになった顔を見られたくなくて、
両手で瞳の上を覆って隠す。
「見ないで。。。!」
保井は口元を緩めて、式部をそっと抱き締めた。
「そんな顔で泣きやがって。。。ずっと一緒に居てくれっ
て、笑太に云やぁいいだけだろ」
顔の上から離された手が保井の背にまわされて、縋り
つくように抱きついた。
肩甲骨の上で握られた手が細かく震えていて、声を立
てずに泣いているのが、顔なんて見なくても分かった。
「そろそろイクからな。我慢しないで悦い声出せよ」
甘い香りのする髪に頬摺りすると、保井は滅茶苦茶に
突き上げた。
「あっ。。。あああっ」
押さえ切れずに、甘い声が放たれる。
「んっ!」
保井が息を詰めた刹那、式部の最奥に熱い飛沫が
叩きつけられた。
「ん。。。ふ。。。ぅ」
同時に達した式部の腕から力が抜けて、保井の背中
から滑り落ちる。
断続的に震え続ける身体をもう一度強く抱き締めて、
保井は式部の汗ばんだ首筋に唇を寄せた。

「ホント、バカだよな。。。我慢してばかりで」

保井はベッドの上に上半身を起こし、横に居る式部の
剥き出しの身体に毛布をふわりと掛けてやった。
「我慢。。。してるように見える?」
乱れたシーツの上にうつ伏せになって、顔だけ横に向け
てぼんやりと云った式部を、保井は静かに見守った。
「見えるな。我慢も遠慮もしてるだろ?」
保井の問いかけに、答えは無かった。
「じゃなかったらお前、俺のとこなんか、来ないだろ?」
端整な顔は、無表情になると何を考えているのか分か
らなくなる。
以前はこんな表情を人前ですることは無かった。
微笑みではぐらかされることはあっても、こんなに自分を
見せるヤツでは無かったように思う。
保井は軽く笑ってしまった。
「。。。ちょっと話を聞いて欲しかっただけだよ」
眉を顰めて保井を見て、顔を上に戻して静かに目を閉
た式部が、息を吐き出しながら独り言の様に呟く。
保井はもう一度笑みを漏らしてしまった。
養成所時代から知ってはいるが、任務の時以外でこう
いう表情を見せる事も無かったよな、と思いながら。
「また笑う。。。なんか保井さん、今日感じ悪いよ?」
紫の瞳が大きく見開かれて、保井を捉えた。
「や、すまんすまん。いや、な、お前変わったなぁって思っ
てさ。笑太と上手くいってるんだなって思ったんだけどな」
「そうだったらいいんだけど。。。」
枕に顔を埋めてしまった式部の頭を、保井は大きな手
で撫で回した
「そうやってまた子ども扱いするぅ。。。」
あはは、と声を出して笑いながら、保井は式部の頭を
撫で続けていた。
「若いっていいなぁ、って思うよ。お前達を見てると」
「全然良くないよ。。。」
余計に枕に顔が押し付けられて、くぐもった声で式部が
抗議する。
「でも、笑太は優しいんだろ?」
「少なくとも保井さんよりは」
式部は頭に乗せられた手を振り払うように寝返りを打って
上を向き、悲しそうな目で笑った。
「俺だって優しいぞぉ。バレたら笑太に睨まれるの覚悟で
こうやって話を聞いてやってるじゃないか」
保井は声を上げて笑いながら冗談めかしてそう云って、
はみ出してしまった式部の足元を覆うように毛布を掛け
直してやった。
「うん。。。そうだった」
式部は目を閉じてひとつ深く息を吐き、告白でもするか
のように、穏やかな口調で話し出した。
「今でもね、笑太君に触れられる時はどきどきするんだ。
嬉しくて恥ずかしくて。。。肌や唇の感触も、癖も、どうさ
れるのが好きなのか分かっていても、いつも初めての時み
たいにどきどきする。。。保井さんとの時はしないのにね」
その顔に浮かぶ柔らかい微笑みを見て、保井は笑ってし
まう。
「それ、本人に聞かせてやりてぇな」
「え。。。?」
「そん時あいつがどんな顔するか覗き見したいくらいだ」
式部の頭を掴むようにして、保井はもう一度ぐりぐりと
撫でた。
「式部、お前考えすぎなんだよ。俺から見りゃあいつまで
もラブラブでいいじゃないか!って感じなんだけどな」
笑い続ける保井の手を抑えて撫でるのを止めさせて、
式部が目を伏せる。
「そう。。。なのかな。。。」
「ま、今日はもう寝ろ。抱っこしててやるから」
保井が腕を伸ばしてきた気配を察して、式部は身体を
引いてするりと逃れた。
「また子供扱い?」
上目遣いで保井を見上げて、式部が不満そうに云う。
「そんな顔してるともう一回しちゃうぞ」
保井は悪戯っぽく笑いながらそう云って、式部の腕を捕
らえて力ずくでその身体を引き寄せた。
「や、それ無理。許して」
「体力落ちたな。トレーニング足りないじゃないか?」
「保井さんが体力有りすぎなんだよ」
顔を見合わせて、思いっきり笑い合う。
「もう大丈夫、ちゃんと眠れそう。保井さん、いつもありが
とう。それに。。。いつもごめんなさい」
保井の胸に頭を摺り寄せて、式部が呟くように云う。
その頭を抱き寄せて、保井は静かに目を閉じた。


                     ―The end―






P.S.
先日UPした
“Similar But Different…”
という作品の少し前の夜のこと。。
という設定の話です。
保井さん、好きなんですけど
いつもこんな役回りに。。(汗

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