―Anybody Knows, Nobody Knows―
after"We Wish Your Merry Christmas"


「柏原班長さえ良かったら泊まっていけば?」

総隊長の買い物に付き合って(しかも買ったのは副隊長
へのクリスマスプレゼントだった!)、副隊長のうちで夕食
をご馳走になったら食べ過ぎて(手料理はどれもめちゃ
めちゃ美味しかった)、そして呑み過ぎて(2人共強いんだ
もんなぁ。。。)、思いがけなく長居してしまった。
食事の間中、総隊長にだけじゃなくて俺にまで細やかに
気を配ってくれる副隊長を見て、なんか温かくていいなぁ。。。
なんて、思っていたら帰る時期をすっかり逸してしまった。
帰るのダルいなぁ。。。と思い始めた頃、泊まっていけば?
と副隊長に微笑み付きで誘われた。
心の中では「じゃ、遠慮なく!」と即答だった。
正直疲れていたし。
けど。
「いいよ!俺、ハッキリおジャマじゃない」
「だからぁ邪魔じゃないって!ね?笑太君」
一応頷いてみせてはいるけれど、総隊長の顔には
“お前ジャマだよ”
って書いてある気がするし。
なんだかんだと理由をつけて拒否ってみたけれど、結局
副隊長の押しに負けて、泊まることになった。

広い部屋にデカいベッドがひとつ。ソファがひとつ。

誰がどこで寝るで少し揉めて(総隊長と一緒にベッドで、
という副隊長の提案に対しては全力で拒否。ソファでいい
と云ったら、それじゃ身体が休まらないよ!と、今度は
副隊長が全力で拒絶。こんなことで揉めるのも平和でいい
なぁ、とニヤついてしまったら総隊長に笑い事じゃないと
呆れられた。。。)、水槽の横の床に布団を敷いてもらって
そこで寝る、ということで落ち着いた。

ここが意外と寝心地が良くて。。。

こぽこぽという、水の泡が弾ける音がいい感じで、あっと
言う間に眠りに落ちた。

「んっ。。。う。。。うっ。。。ふっ。。。ふ。。。ん。。。」

断続的に続く唸り声で目が覚めた。
副隊長の声、みたいだ。
も〜。。。他人(ひと)が泊まっている時くらいえっちすん
のガマンしろよ!と、咄嗟にそう思った。
ったく。。。2人がデキてるなんて特刑上層部はみんな
知っているけれど。。。時々目の部屋で監視中に不可
抗力で覗いてしまうこともあるけれど。。。
身体がじわりと火照ってきた。マズい。。。
寝返りをするフリをして布団に包まり直そうとして、ふと
ある事に気付いた。
静まり返った部屋の中にはその声と、水槽の音だけが
低く響いて聞こえるだけで、布が擦れる音もしていない
し、ベッドの上で絡み合ってるような気配が全くない??
神経を耳に集中させる。
良く聴くとその声は喘ぎ声じゃなくて、すすり泣いてい
る声、みたいだ。
そして、その声の合間に、ぼそぼそと何か呟いているよ
うな声も聞こえる。
これは総隊長の声みたいだけど。。。
薄目を開けて、様子を伺う。
大きな窓から入ってくる光が部屋全体を淡く照らして
いて、窓の真下に置かれたベッドの上もはっきり見えた。
自分から見て手前には副隊長が居て、こちらに向いて
いる背中が微かに揺れている。
「う。。。ううっ。。。ふ。。。」
枕に顔を埋めるようにして、やっぱり泣いているようだ。
その震える耳朶に、肩肘を立てて身体を少し起こしている
総隊長が、髪を撫でながら時々何かを囁いてやっている。
囁かれる度に泣き声がちょっとだけ止んで、頭が頷くよう
に少しだけ前に動く。
しばらくするとまたすすり泣きが始まって、総隊長が何か
を囁いてやると止む。
最初、副隊長が起きているのかな?と思ったが、どうやら
寝っているようだ。
夢?を見て泣く男と、それを柔らかい表情で見守る男。
どちらも男なんだけど、その光景は優しくて綺麗で。。。
男の俺が見ても背筋がぞくぞくっとした。
大分長い間それが繰り返された後、下から伸ばされた腕
が上から覗きこんでいた総隊長の首にするっと絡みつい
た。
「・・・」
副隊長の呟きは声が小さすぎて聞き取れなかったけれど、
それに応えるようにホクロのある口元が微笑んだ。
「清寿、大丈夫だから。愛してるよ」
しなやかな髪ごと身体を強く抱きとめて、その髪に、頬に、
目尻に、そして唇に、キスを降らせている。
ふわり、と副隊長が微笑んで、すぅ、と深い寝息がひとつ聞
こえた。
総隊長はふぅ。。。と鼻から息を吐いて、頬にひとつキスし
てから、力が抜けた腕を首から外してベッドの上に下ろして
やっている
総隊長、そんな顔も出来るんだ。。。
今まで一度も見せたことのない、蕩けそうなほどに甘く優しい
表情(かお)。
見てはいけないものを見てしまったような気がして急に後ろ
めたくなり、慌てて寝たフリをしてしまった。
ホント、マズいよ。"俺"、興奮してるし。。。
こっそり深呼吸したり、出来るだけ萎えそうなことを考えたり
して落ち着かせようとじたばたしているうちに、眠ってしまった
らしい。

次に目覚めるキッカケになったのは、コーヒーの香りだった。

「柏原、お前、昨夜見てただろ?」
無理矢理起こされてのっそり起き出してきてソファに陣取った
総隊長が、いきなりシャキッ!として俺を睨んで云う。
昨日お風呂に入り損ねたからシャワー浴びてくるね、と、副隊
長がバスルームに消えた途端に、だ。
「あは、やっぱバレてた?。。。見る気は無かったんだケド」
バレてたならしょうがない。笑いながら頭を掻く。
「あれ、さ、清寿にはナイショにしといてくれよ」
「へ?」
その表情は真剣で、いつも見せている顔と全然違った。
「あれはさ、あいつの記憶に刻まれてる傷なんだよ。
だから触れんなよ」
これも初めて見せる顔。
余裕有りそうに見せようとしているけれど、結構必死。
そんな表情(かお)。
「やっぱ子供の頃の事、夢で見てんの?」
副隊長の抱える闇の全てを知っている訳ではないけれど、
その原因となった過去の出来事は知っている。
総隊長はマグカップを両手で包むように持って、わざと音を
立てるようにしてコーヒーを啜った。
それが肯定の返事の代わりみたいに見えた。
こっちもコーヒーを啜る。
向かい合って座って無言でコーヒーを飲んでいるうちに、
なんか可笑しくなってきて、ふっ、と笑ってしまった。
「なんだよ!?」
「や、可愛いなぁって思ってさ」
「なんだよそれ?」
「うん。恋するオトコの顔だよなぁ、って」
「だっ。。。!」
カチャ。
バスルームのドアが開く音と同時に、会話が途切れる。
「あ〜笑太君!トースト焼いといてって云ったのにぃ」
「あ。。。すまん」
「すまん、じゃないよ。みんなで遅刻になっちゃう!」
髪にタオルを巻き付けたままキッチンに向かう後ろ姿を盗み
見るようにして、総隊長がぼそっ、と呟いた。
「あいつ、朝は“おかん”なんだよなぁ。。。」
腹を抱えて爆笑してしまった。
「あ〜もぅ!柏原班長も笑ってるヒマないでしょ?朝食食べる
んなら手伝って」
「あ、俺、シャワー」
「ええっ?!じゃ笑太君、朝抜きでいいんだね?」
「トースト、焼いといて」
「も〜!」
頬を膨らませてぶつぶつ云っている、副隊長のこんな顔を
見るのも初めてのような気がする。
横顔を見詰めていたら目が合ったので、笑って返す
「。。。?」
不思議そうながらも、綺麗な微笑みが返ってきた。
「や、なんでもない。先食べてていい?」
「あ、どうぞ。もうすぐトースト焼きあがるからスープでも飲ん
でて」

なんかいいなぁ。。。
正直、ちょっと羨ましいような気もした。


―The end―






P.S.
“We Wish Your Merry Christmas”
という話のつづき、です。
柏原のファンって意外と多いようで、
(ま、私もなんですが。笑)
度々、柏原×式部なんていう
リクエストをいただきますが。。
う〜む。。難しい!
どうしても色っぽい話にならず。。
こんな話になってしまいました。
柏原ファンの方々ごめんなさいっ(汗


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